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探索段階におけるin vitro毒性・動態評価試験の現状および蛍光物質を使った毒性スクリーニング試験(in vitro HTS-Phospholipidosis assay)の紹介

富士フイルム株式会社 環境・品質マネジメント部 素材試験センター
笠原 利彦

動物実験の代替は、30年以上前からヨーロッパを中心に強く叫ばれてきた。しかしながら、毒性に精通している人であれば、動物実験を完全にin vitroに置き換えることができるとは思わないだろう。但し、この「代替」という考えから生まれた3R(Replacement, Reduction, Refinement)の考え方は、我々が今日、実施している毒性試験にも浸透してきており、現在では「in vitro toxicology」という新しい分野も生まれている。

一方、創薬の領域では、合成技術及び薬効スクリーニング法が著しく進歩し、一度にたくさんの化合物の評価をすることができるようになった。しかしながら、開発の後期になって、動態や毒性が原因でドロップする候補薬が後を絶たなくなってきたことから、動態や毒性学的スクリーニングを開発の早いうちに実施し、ドロップの危険性が高いものは早めに除去しようとする考えが一般的になった。現在、マイクロプレート上で無細胞系のアッセイや細胞を用い、検出にはマイクロプレートリーダー(以下、MPRと略称)を使用したアッセイがさかんに実施されている。

物性ではMPRを用いた溶解度試験(検出:OD MPR)、Caco2を用いた透過性(検出:LC/MS)、動態ではCYP発現ミクロソームおよび蛍光/発光基質を使用した酵素阻害試験(検出:蛍光/発光MPR)、ヒト肝細胞および蛍光/発光基質を用いた酵素誘導試験(検出:蛍光/発光MPR)、毒性では、発色、蛍光および発光基質を用いた細胞毒性試験(検出:吸光/蛍光/発光MPR)がさかんに実施されている。

我々は、薬物とリン脂質が結合し細胞内に蓄積することによって、細胞死を起こす薬物誘導性リン脂質症のHTS(ハイスループット)検出系を確立した。このアッセイ法は、蛍光物質であるNBDを標識したリン脂質と被験物質を96 wellで培養した細胞に添加し、24時間培養後、ウエル中のNBDの蛍光を測定するものである。リン脂質が蓄積すればするほどNBDの蛍光強度が高くなるという原理である。さらに、別の波長で励起される蛍光色素で核を染色することにより細胞数の指標も出すことができる。実際に、20以上の化合物をこのアッセイで評価し、さらに電子顕微鏡で病理学的にスコアをつけたところ、アッセイの値と病理スコアとの間には、高い相関が見られた。また、このアッセイは細胞の形態を残したまま測定することができるので、蛍光顕微鏡での観察も可能であり、実際のリン脂質の取り込みの程度を観察することができる。但し、この測定系には、下記の弱点があることが分かっている。

  1. 通常の蛍光MPRでは検出力が低い
  2. 核染色色素による細胞数の測定精度があまり高くない

Cytiva社が販売しているIN Cell Analyzerは、1個ずつの細胞中に含まれる蛍光強度を精度・感度よく測定することが可能なことから、今後、HTS-リン脂質症検出アッセイに応用することができると考えている。


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