バイオダイレクトメール vol.11 Technical Tips
<mRNAの精製方法>
RNAを使用する実験といえばノーザンブロッティングやcDNAの合成、マイクロアレイなどがあげられます。これらの実験はtotal RNAを用いることも可能ですが、mRNAを用いることでより正確に行うことができます。mRNAは3'側にPoly(A)が付加されているため、Poly(T)が結合したビーズやカラムに結合させることで精製することができます。
mRNAの精製にはtotal RNAを抽出してからmRNAを精製する方法と、細胞や組織から直接mRNAを抽出する方法があります。いずれの場合もRNaseによる分解を防ぐ必要があります。細胞や組織から抽出する場合、細胞内に存在するRNase特に注意を払う必要があります。通常、変性剤(フェノール、LiCl、SDS等)やRNaseの阻害剤(ヘパリン、iodoacetate、polyvinyl sulfate、aurin tricarboxylic acid等)を加えて精製します。変性剤・阻害剤として最も適しているのはグアニジン塩で、一般的にはグアニジンチオシアネートが用いられます。ただし、グアニジン塩はOligo(dT)とmRNAの結合力を低下させるため、RNaseの活性を阻害しかつOligo(dT)との結合能を阻害しない適切なグアニジン濃度を検討する必要があります。次に紹介するキットのプロトコールでは細胞を溶解する際には4-5 Mのグアニジン塩に溶解し、Oligo(dT)と反応させる前にグアニジン塩濃度を1.5 Mに希釈することを推奨しています。
Cytivaではtotal RNAからmRNAを精製するキットとしてmRNA Purification Kit、細胞・組織からmRNAを精製するキットとして QuickPrep Micro mRNA Purification Kitをご用意しています。遠心機を利用する簡便なOligo(dT)カラムを用いており、わずか30分ほどでtotal RNAや細胞・組織からmRNAを精製できます。
mRNAを精製したあとには電気泳動を行い、リボゾームRNAのバンドや、分解されたmRNAのバンドがないことを確認することをおすすめします。mRNAは通常スメアなバンドとして検出されます。