組換えタンパク質精製:Poly(His)タグタンパク質の精製
バイオダイレクトメール Technical Tips vol.50
タンパク質を大量精製する際にどのような手法を用いられているでしょうか。大量サンプルから精製するぞー!!と熱い意気込みをもって精製する体育会系の人もいるかと思います。熱いのはあまり得意じゃない方は組換えタンパク質を使ってクールに決めてみるのも一手です。組換えタンパク質といえばGSTタグを利用したGST融合タンパク質の精製と並んでおなじみ、Niとの親和性を利用して精製するヒスチジンタグ(Hisタグ、His-tag)つきタンパク質。目的のタンパク質に6~11個のヒスチジン残基からなる短いタグを付加するだけでよいことから、タンパク質の構造にあまり影響を与えないというお手軽さが人気を呼んでいます。
Hisタグタンパク質の精製原理
Hisタグをつけたタンパク質を大腸菌などで発現させ、Niがついているアフィニティー担体を用いて精製します。各社からHisタグタンパク質性精製用の担体が出ていますが、弊社には初めての方にも使いやすいキットや玄人の領域に達している方にも使い回していただける担体などさまざまな製品があるのでおすすめです(後ほど紹介します)。まずはどうやってヒスチジンタグつきタンパク質をNiつき担体で精製できるのか説明します。
アミノ酸の中にはNi2+、Zn2+、Cu2+、Ca2+、Co2+、Fe2+などの二価の金属と親和性の高いものがあります。ヒスチジンやシステインがそれで、中性(pH6~8)の領域でキレート状態の金属と複合体を形成します。主にヒスチジンのほうが複合体を形成しやすいことが知られています。そのためヒスチヂンタグを導入したタンパク質が用いられるのです。また、金属イオンの中では親和性、溶出のしやすさなどから考慮してNiが用いられています。
担体とキレートの状態でトラップされているNiの中にHisタグのついたタンパク質を入れると複合体を形成するため担体にトラップされます。さらにヒスチジンよりも金属との親和性の高いイミダゾールを加えると金属はイミダゾールと複合体を形成するため、タンパク質と金属の複合体がはずれます。
構造が似ているヒスチジンとイミダゾール
Hisタグタンパク質の精製原理
担体中のNi(水色)と結合するHisタグつきタンパク質(ピンク)。そのほかのタンパク質(オレンジ)はそのままカラムの中をスルーします。
イミダゾール(i)を含むバッファーを添加するとHisタグつきタンパク質が担体から外れます。
金属との親和性は中性~アルカリ性で高まるため、複合体を形成させるときはリン酸ナトリウム(20~50 mM)などのバッファーを使用することがポイントです。また、溶出する際にイミダゾールの濃度勾配(グラジェント)をつけるとHisタグつきタンパク質以外で担体と結合していたタンパク質を取り除けることがあります。うまく精製するためには目的のタンパク質にあわせた条件が必要になりますのでいろいろ試してみてください。
お客さまの便利!を考えたらこんなに製品が誕生しました
His-tagタンパク質精製用担体・カラム:
初めてなので・・・いろいろ揃っていたほうが安心な方に
●特別な機器がなくても大丈夫、自然落下仕様のプレパックカラムタイプ