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Capto™ adhereはプロテインA精製後の抗体精製用に開発されたマルチモーダル・イオン交換担体です。このクロマトグラフィー担体はMAb精製プロセスにおける、特に凝集体凝集体量の減少に効果があります。Cobra Biologics社とCytivaの共同研究では、MAb精製のプロセスにおける凝集体除去に対するCapto™ adhereステップの最適条件を決定しました。

Capto™ adhereによる凝集体の効率的な除去

Cobra Biologics社は経験豊富なCMO(contract manufacturing organization)で、抗体、リコンビナント・プロテイン、DNA、ウイルスや細胞由来の生産物を臨床試験用や工業生産を通して、グローバルなライフサイエンス企業をサポートしています。Cobra Biologics社とCytivaの共同研究によって、MAb精製プロセスにおけるCapto™ adhereの評価を行いました。

動物細胞における抗体の力価の上昇は、凝集体のレベルの増加と関連性があり、凝集体の除去はたいへん重要です。また、凝集体は免疫原性もあるため、抗体製造において凝集体の除去はこの点でも重要な作業です。

Capto™ adhereはマルティモーダル機能を持つ強陰イオン交換担体で、たいへん速い流速特性を持っています。この担体は、MabSelect SuRe™を用いた2段階精製用にデザインされ、1ステップの精製後の主要な不純物であるDNA、宿主由来タンパク質(HCP)、遊離プロテインA、凝集体およびウイルスを除去できます。プロセスの経済性と生産性が改善され、その結果として製品化までの時間を減少するので、2段階MAb精製プロセスは優れた選択肢と言えます。

Cobra Biologics社とCytivaの共同研究では、Capto™ SとCapto™ Qの2段階ステップ・ポリッシングをCapto™ adhereの1段階ポリッシングに変更し、 MabSelect SuRe™とCapto™ adhereの2段階精製で評価しました。同様に、MabSelect SuRe™、Capto™ S、Capto™ adhereの3段階精製とも比較しました。最適条件の検討には、PreDictor™ 96ウェルプレートを用いたハイスループット・プロセス開発(HPTD)のアプローチを行いました。元来Cobra Biologics社で開発された3ステップ精製プロセスは図1に示しました。

図1 Cobra Biologics社で開発された元々のMabSelect SuRe™、Capto™ S、Capto™ Sの3ステップ精製プロセス。
図1 Cobra Biologics社で開発された元々のMabSelect SuRe™、Capto™ S、Capto™ Sの3ステップ精製プロセス。

PreDictor™プレートを使用したハイスループット・プロセス開発

MabSelect SuRe™を使用して精製したCobra Biologics社のMAb溶液を出発材料に用いて、Capto™ adhereを用いた素通りステップを開発しました。クロマトグラフィーの条件の初期検討は、Capto™ adhere 6 μlがウェルに入ったPreDictor™プレートで行いました。96個までの実験が同時に行う事ができ、プロセス開発に有する時間を削減でき、また、サンプル消費量も節約できます。最初の実験では、サンプルの消費量は200 μlのみでした。プロテインAカラムで精製した後の出発材料は、7.3 mg/mlのMAb濃度で、凝集体のレベルはおよそ2%でした。

PreDictor™プレートのスクリーニングは、2つのパートに分かれます:最初はウェル内でMabと担体が完全に結合するまでのインキュベーション時間を決めることです。凝集体は最もゆっくりと結合し、60分後に完全に吸着しました。このインキュベーション時間は、PreDictor™プレートを用いた更なる最適化検討に使用しました。2つめのスクリーニングは、素通りステップにおけるpHと塩濃度の最適化条件の決定です。このスクリーニングでは、高いpH(pH 6.5-6.9)と低い塩濃度を組み合わせることで、最適な条件が得られました。

PreDictor™プレートの実験では、凝集体の分析はゲルろ過(GF、分子ふるいクロマト)で、宿主由来タンパク質(HCP)はCygnus Technologies社のCHO-HCP ELISA試薬を使用したELISA法で分析しました。

ポリッシングステップのカラムの最適化

PreDictor™プレートを使用したスクリーニングの結果から、MAbサンプルpHとロード量についてカラム条件を最適化しました。数回の検討で、最適条件の幅を迅速に決め、高い回収率と低い凝集レベルの両方を満たすクロマトグラフィーの条件をみつけることができました。カラムの検証(Verification)はpH 6.5から7.0でNaClを添加しない条件で行いました。これにはTriconカラム5/50にCapto™ adhereをパッキングしたものを使用しました。

最適化されたCapto™ adhereステップにおいて、MabSelect SuRe™の溶出液中の凝集体のレベルは、pH 7.0およびMAbのロード量が100 mg/mlの条件を使用した場合、ゲルろ過での分析では凝集体レベルが0.5%まで減少し、モノマーの回収率は92%でした。図2に示すように、いずれのpHにおいても素通り画分には本質的に凝集体は含まれず、一方、pHを下げた洗浄画分(Strip画分)には、かなりの量の凝集体が含まれていました。pH 7では、凝集体のレベルは規格値の0.8%以下でした。HCPレベルは当初のおよそ1/10の37 ppm、遊離したプロテインAのレベルは2.4 ppm以下でした。

表1 Capto™ adhereをパッキングしたTricorn™ 5/50(ベッド高2.8 cm)カラムの検証
表1 Capto™ adhereをパッキングしたTricorn™ 5/50(ベッド高2.8 cm)カラムの検証

図2 MabSelect SuRe™精製後サンプルを用いたCapto™ adhere(A:pH 6.5, (B) pH 7.0)による精製のゲルろ過クロマトグラフィーによる分析
図2 MabSelect SuRe™精製後サンプルを用いたCapto™ adhere(A:pH 6.5, (B) pH 7.0)による精製のゲルろ過クロマトグラフィーによる分析

3ステップ精製プロトコール

2ステップ精製スキームの代わりに、Capto™ Sを含む3ステップ精製プロトコールの評価も行いました。Capto™ SはHCPと低分子不純物を効率的に除去しました。このステップの条件はCobra Biologics社で開発されました。Capto™ SとCapto™ adhereを用いた2ステップのポリッシングでは、全体のモノマーの回収率は88%で、ゲルろ過分析による凝集体の量は0.4%で(図3)、HCPレベルは10 ppm、遊離プロテインA量は2.4 ppm以下でした。

3ステップの精製でさらに低いHCPレベルが得られたので、Cobra Biologics社では後の検討には3ステッププロトコールを使用しました。

図3 Capto™ SとCapto™ adhereをポリッシング工程に使用した場合に出発原料と最終精製物のゲルろ過クロマトグラフィーのクロマトグラム。クロマトグラフィーの条件は図2に示しました。
図3 Capto™ SとCapto™ adhereをポリッシング工程に使用した場合に出発原料と最終精製物のゲルろ過クロマトグラフィーのクロマトグラム。クロマトグラフィーの条件は図2に示しました。

まとめ

Cobra Biologics社とCytivaの共同研究でCapto™ adhereを用いたポリッシング工程の迅速な最適化条件検討を行い、凝集体の効率的な除去が示されました。MabSelect SuRe™とCapto™ adhereによる2段階精製方法で、HCPは有意に減少しました。

Capto™ SとCapto™ adhereを組み合わせることによって、回収率の低下なく、不純物のレベルはMAbの規格値よりも低くなりました。プロテインA後の2ステップのポリッシングプロセスによって、モノマーの回収率は88%、凝集体のレベルは0.4%でした。素通り画分のHCPのレベルは10 ppm、遊離のプロテインA量は2.4 ppm以下でした。


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