ambr™全自動マイクロバイオリアクターシステムを用いた
CHO細胞バッチ培養の定常状態および動的コントロールの評価
Sin Yee Yau PhD, Kenneth Lee PhD, Barney Zoro EngD
はじめに
バイオプロセス開発分野における全自動ハイスループットシステムの利用は、非常に価値のあるアプローチです。効率的な、マルチパラレルなマイクロスケールバイオリアクターシステムは、細胞株スクリーニング、培地開発、フィードとプロセスの最適化、QbDのDoE研究などの各種のバイプロセスアプリケーションの開発ボトルネックを解決します。
目的
- ambr™培養のレプリケートにおける再現性の評価
- さまざまな実験条件変化に対するCHO細胞培養のレスポンスの調査(シグナル/ノイズ比)
- ambr™システムでのプロセス制御パフォーマンスのデモンストレーション
- 標準培養操作における定常状態コントロール
- パラメータを変化させたアプリケーションでの動的コントロール
CHO細胞培養
- 1回で24リアクターの実験が同時に行えます
- 標準条件:pH 7.1 ±0.1、 DO 40%、3×105 cell/ml
- 標準条件では6レプリケート、テスト条件では3レプリケートの培養を実施
- CHO-K1S細胞、Sigma ExCell ACF培地、最大培養液量15ml
- Sigma Antifoam C(消泡剤)20µlを0日、 4日、7日目に添加しました
- 37℃、850 RPM、インペラーチップスピードは0.5 m/s

Seeded cell density (Vi-Cell counts)
- 3×105 cells/mlと8×105 cells/mlの条件に明らかな違いがありました
- 播種した細胞密度で観察されたわずかなバラツキは、細胞播種における元々のバラツキに基づきます。これは、細胞数のカウント、サンプリングやピペッティング、そして最終細胞カウントの細かいエラーが蓄積されたためだと考えられます。
細胞培養結果

Viable Cell Count Profiles (Vi-Cell)
- ambr™システムでは条件が一貫していますので、各レプリケートは近い結果となりました
- pH 6.9±0.05では細胞増殖は鈍化しました
- 高い播種細胞密度(sVCD)は培養10日目に低いVCDをもたらしました
- DOテスト(20、60%)は標準条件の場合に非常に近い結果でした(データ未掲載)
- レプリケート間に見られるわずかなバラツキは、細胞カウントの誤差に起因する可能性があります

Glucose Profiles (Accu-Chek Aviva)
- 条件の近いレプリケートグループでは、培養における優れた再現性を示しています
- 3つのpH条件において、明確な違いがありました
- 高いsVCDでは早い段階でのグルコースの枯渇がありました(6日目)
- DOテスト(20、60%)は標準条件に非常に近い結果でした(データ未掲載)

% Viability Profiles (Vi-Cell)
- 高い生存率およびレプリケート間でバラツキが低く抑えられました
- グルコース枯渇後の生存率低下の結果、高い播種細胞濃度およびpH 7.1の条件で生存率は低下しました
- DOテスト(20、60%)は標準条件に非常に近い結果でした(データ未掲載)
細胞培養・結論
- ambr™システムはCHO細胞培養に非常に適しています
- CHO細胞培養のテスト条件間で高い感度で相違が見られます(高いシグナル/ノイズ比)
- ambr™システムを用いたCHO細胞培養の高い再現性は、良好なプロセス・コントロールの実施を示しています
- 液体ハンドリングの自動化はラボでの業務を大きく軽減します
種々の条件の結果は、以下の結果を示します。
- sVCDは培養のプロファイルに大きく影響します
- pH条件の変動は可能です;pHはキーパラメータです
- この研究ではDOは重要プロセスパラメータではありませんでした
厳しいプロセス制御、レプリケート間の低いバラツキ、テスト間の高い感度は、幅広い細胞培養のアプリケーションにおいて、ambr™マイクロ・バイオリアクターシステムが有効であることを示しています。
References
- Lewis G, Lugg R, Lee K, Wales R. Novel Automated Micro-Scale Bioreactor Technology: A Qualitative and Quantitative Mimic for Early Process Development. Bioprocessing, 2010, 9(1), 22-25
個別パラメータ詳細
pHコントロール
pHコントロールセットアップ
目的:定常期におけるpH値と範囲の変動のテスト
pH 7.1 ± 0.1 (×6 bioreactors)
pH 7.0 ± 0.2(×3 bioreactors)
pH 6.9 ± 0.05 (×3 bioreactors)
pHコントロール結果
- 広範囲および決められたポイントでの安定したpH制御
- 個々の容器でのpHコントロール:CO2ガスおよびアルカリの溶液添加
- 必要時の自動アルカリ溶液添加(例えば夜間)
- アルカリセッティングはフレキシブル;例えばターゲットpH、アルカリ濃度
pHコントロールテスト結果:7.1 ± 0.1(×6 bioreactors)

- (1)CO2ガスの添加により、pHを許容上限で制御
- (1b)CO2ガスフローの例
- (2)アルカリ溶液を添加し、pHを許容下限で制御
- (2b)アルカリ溶液を添加したことによるpHの鋸状のライン
pHコントロールテスト結果:7.0 ± 0.2(×3 bioreactors)

- (1)CO2ガスの添加により、pHを許容上限で制御
- (1b)CO2ガスフローの例
- 一般に、特定の範囲内でpHは変動します
- アルカリの添加のみが必要です
pHコントロールテスト結果:6.9 ± 0.05(×3 bioreactors)

- CO2ガスを始終添加するすることで、pHをセットポイントに制御
- 図を分かりやすくするため、CO2フローを省略
- pHを細かく調節することによって、pHの変動を抑えました
DOコントロール
DOコントロールセットアップテスト
目的:安定領域におけるDO値の変動のテスト
DO 20%(×3 bioreactors)
DO 40%(×6 bioreactors)
DO 60%(×3 bioreactors)
DOコントロール結果
- セットポイントにおける溶存酸素の良好な定常状態コントロール
- キャップ取り外し時におけるガス交換による小さな変動
- 効率的な平衡への迅速なレスポンス
- 個々の容器でのDOコントロール;N2/空気の安定したフローとO2添加
DOコントロール・テスト結果(×12 bioreactors)

- セットポイントでの良好なDOコントロール
- セットポイント間での高いレスポンス
- バイオリアクターのキャップの開け閉めによる小さな変動

- (1)キャップ除去なしで良好な定常状態 DOコントロール
- (2)細胞の増殖に伴うO2添加割合の増加
- この研究では、トータル・ガスの流速はおよそ0.02 vvm

- (1)キャップ取り外しによる、小さなスパイク
- ガスは上部の空間と薄板のフロー・フードの間で交換
- O2ガス流速の調節によるambr™コントロール・システム
動的コントロール
動的コントロールテストのセットアップ
目的:パラメータを変動させた場合の動的コントロールテスト(×3 bioreactors)
Temperature 37℃ → 33℃
pH 7.2 → 7.0
DO 60% → 40%
動的コントロール結果
- 変動はスムーズに起こり、オーバーシュートすることなくコントロールが可能でした
- CHO細胞の培養に比較して、迅速な動的コントロール
- 通常の製造プロセスアプリケーションにおいて、変動が可能
温度変動テスト

- 温度変動37℃→33℃
- 温度時間変動 ~0.5h
- 時間は培養プロファイルに影響しませんでした
pH変動テスト(×3 bioreactors)

- pH変動 7.2→7.0
- pH時間変動 ~2h
- pHは培養プロファイルに影響しました(たとえば、代謝)
DO変動テスト(×3 bioreactors)

- DO変動 60→40%
- DO時間変動 ~1h
- 時間はO2の取り込み率に影響しました
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