「あっ、カラムに空気が!」 ・・・なんて経験はありませんか?
絶対に空気を入れない! カラムの取扱い方法のポイント
なぜ、カラムに空気が入ってはいけないの?
クロマトグラフィーで使用するカラムの取扱いを人から教わったり、皆さんが後輩に教えたりするとき、『カラムに空気を入れないように注意してね』という注意事項が登場することと思います。その通り、カラムに空気が入ることはご法度!なのです(参考:カラムに空気が入っているかの確認方法)。
では、カラムに空気が入ってしまうと何が悪いのでしょうか?カラムに空気が入ると、カラムの中では以下のような現象が起こることがあります。
- 空気が存在する部分を避けて溶液が通るため、均一に溶液が通ることができない。
- 空気が触れることで、リガンドの性質が変わってしまう。 (特にアフィニティークロマトグラフィーでは影響大)
- 大量の空気が入ることで、ゲルに亀裂が入ってしまう。(特にゲルろ過クロマトグラフィーでは、その部分ではまったく分離ができなくなってしまう)
このような現象がもとで、「これまで分離できていたサンプルを分離できなくなる/分離パターンが変わってしまう」、「サンプルの結合量や回収量、精製純度が下がってしまう」というような、分離結果への悪影響につながってしまうのです。
このように、カラムに空気が入ってしまうと、こんなにも恐ろしい現象が起こってしまうことがおわかりいただけたかと思います。
では、カラムに空気を入れないためには、どのような点に気をつければ良いのでしょうか??? 今回は、HiTrap™カラムを例に、空気を入れないようにするためのポイントについてご紹介します。
カラムに空気を入れないための注意点
カラムに空気を入れないために、操作上では以下のようなポイントに注意しましょう。
- ●カラムの上下両方の蓋を同時に開けない: 重力でカラム内の液が抜けてしまい、空気が入る原因となります。
- ●Drop to Drop コネクション: 接続は、カラムおよびコネクターの接続部分が、共に溶液で満たされている状態で行います。
- ●長期間の保存には専用パーツを使う: トランスポートシリンジ(販売終了)や、Storage/Shipping device(写真)といったカラム専用の乾燥防止パーツがあります。バネの力でカラム内に弱い圧力をかけ、気泡の混入を防ぎます。
カラムとコネクターの接続 ~空気を入れないためのポイント~
カラムに空気が入ってしまうリスクが最も高い操作は、カラムの出入り口とコネクターの接続時です。この操作でのポイントは、カラムの出入り口が常に溶液で満たされている状態にしておくことです。HiTrap™カラムの使用パターン別に、接続手順を示しますのでご参考になさってください。
※ポイントとなる操作部分を赤字で示しています。
※操作手順の中に出てくる「トップストッパー」、「ツイストオフエンド」は以下の部分を指します。
A. シリンジと接続して使用する場合
HiTrap™カラムは、クロマトグラフィー用システムや送液ポンプがなくても、シリンジを使ったマニュアル操作でバッファーやサンプルを送液することができます。
必要なコネクター
必要なコネクター製品 |
コード番号 |
写真 |
備考 |
1/16”male/Luer female
(ルアコネクター) |
18111251 |
|
HiTrap™製品を購入すると、1個付属しています。
※黒色のタイプもあります。動画中では、黒色のタイプが使われています。 |
接続手順(HiTrap™ シリンジ接続時) ★赤字で示した箇所がポイント
- HiTrap™カラムのトップストッパーを外します。
- 超純水で満たしたシリンジにルアコネクターを取り付けます。
- シリンジを少し押し、ルアコネクター先端から水滴が出た状態にして気泡を押し出します。
- HiTrap™カラムの入口部分(トップストッパーを外した側)に、シリンジのルアコネクター先端部から超純水を何滴か滴下します。入口が溶液で満たされた状態になったら、ルアコネクターとHiTrap™を接続します。
- カラム下部のツイストオフエンドを折ります。 ※ねじり切らないように注意してください。
- シリンジ送液を開始します。(この時、シリンジは下向きに)
B. ペリスタルティックポンプと接続して使用する場合
まず、ペリスタルティックポンプ接続時に必要なコネクターです。
必要なコネクター
接続手順(HiTrap™ ペリスタルティックポンプ接続時)
- トップストッパーを取り外し、カラム入口に超純水を数滴滴下しておきます。
- コネクター3をHiTrap™カラムに取り付けます。
- 取り付けたコネクター3にも超純水を満たした後、コネクター2をコネクター3に接続します。
- コネクター2のキャップを緩め、ぺリスタルティックポンプから低流速(0.5 ml/min以下)で送液しながら(*)、チュービングをコネクタ2の奥まで差し込み、キャップを閉めて固定します。
- カラム下部のツイストオフエンドを折ります。 ※ねじり切らないように注意してください。
- カラム下部にコネクター4、5、6の順で接続します。
* 送液速度が速すぎると空気が入りやすくなります。
C. ÄKTA™などのクロマトグラフィーシステムと接続して使用する場合
HiTrap™カラムは下部(ツイストオフエンド側)が1/16インチ規格のオスネジになっており、クロマトグラフィーシステムのバルブ、UVフローセルなどに直接接続することができます。HiTrap™カラム購入時には接続用のコネクターは付属していませんので、必要な場合には次のコネクターをご購入ください。
必要なコネクター
接続手順(HiTrap™ クロマトグラフィーシステム接続時)
- カラム下部のツイストオフエンドを折り、クロマトグラフィー装置のカラム接続箇所(バルブやUVフローセル)に接続します。
- トップストッパーを取り外します。
- システムポンプから0.5ml/min以下で送液を開始し、カラム上部に超純水を満たします。気泡を取り除いた後、コネクターを接続します(このとき超純水があふれますのでふき取ってください)。
次回予告: カラムに空気が入ってしまったときの対処法
HiTrap™カラムを例に注意点をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?文章ではわかりにくい箇所も多いと思いますので、動画をご覧ください。
他のカラムでも注意すべき点は同じです。本内容を参考に、空気が入らないような操作を心がけ、カラムを末永くご活用ください。
次回は、「注意して操作をしていたのだけど、カラムに空気が入ってしまった」という皆さまのために、カラムに空気が入った際の対処法をご紹介する予定です。カラムに空気が入った状態を見た目で判断する方法を写真付きで紹介するほか、カラムから空気を抜くための最大限の努力方法についてご紹介します。お楽しみに!
関連製品
HiTrap™カラム 製品ラインナップ
イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび脱塩・バッファー交換など、幅広いゲル担体にてHiTrap™カラムをご利用いただくことができます。サンプル量にあわせて、1 mlおよび5 mlの2種類からお選びください(一部のHiTrap™製品では、容量が限られているものがあります)。
HiTrap™カラム 製品ラインナップ/ご注文情報
その他の製品 Q&A
その他、クロマトグラフィーでお困りの点がございましたら、製品Q&Aページをご参照ください。よくお問合せいただくご質問についてまとめてありますので、ぜひご活用ください。
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