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IN Cell Analyzer 1000 を用いた神経上皮細胞分化のポピュレーション解析

はじめに

IN Cell Analyzer 1000は生細胞、固定細胞を迅速かつ簡便に多色蛍光イメージングし、取得イメージから得られる生化学的情報を迅速に数値化する High Content Analysis を目的に開発されたシステムです。近年では解析ソフトウェアの機能向上により、従来ではフローサイトメーターで行われているポピュレーション解析にもHigh Content Analysisの手法が用いられています。蛍光顕微鏡をベースとした測定であるため、接着細胞であってもマイクロタイタープレートから剥離する必要がなく、限られた細胞数で迅速に解析することができます。

今回は、High Content Analysisの手法を用いたポピュレーション解析例として、マウス胎児由来の神経上皮細胞を用いたLIF(Leukemia Inhibitory Factor)およびChemical Xの添加による分化誘導の評価を行いました。

実験内容

使用した製品

  • IN Cell Analyzer 1000
  • IN Cell Investigator Software
  • 画像数値化:Developer toolbox
  • 数値グラフ化:Spotofire DecisionSite™

サンプルおよび試薬

  • マウス胎生14.5日胎仔終脳由来神経上皮細胞
  • DMEM/F-12(Sigma社、D2906)+ N2 supplement + bFGF, EGF(各10 ng/ml)
  • Hoechst™ 33258( invitrogen社、H1398)
  • Monoclonal Anti-MAP2 antibody produced in mouse(Sigma社、M4403)
  • Fluorescein(FITC) AffiniPure Donkey Anti Mouse IgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、715-095-151)
  • Polyclonal Rabbit Anti-Glial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)(Dako社、Z0334)
  • Donkey anti-Rabbit IgG, Cy3 conjugate (Millipore™ 社、AP182C)

マウス胎生14.5日胎仔終脳由来神経上皮細胞をN2 supplement、bFGFおよびEGF( 各10 ng/ml)を含むDMEM/F-12培地で培養後、LIF(Leukemia Inhibitory Factor)、Chemical X、2.5 ng/ml LIF + Chemical Xの3条件により、2日間処理を行いました。(図1)細胞固定後、一次抗体として1/200希釈anti-MAP2抗体および1/1000希釈anti-GFAP抗体、二次抗体として1/200希釈FITC標識抗体および1/400希釈Cy3標識抗体を用いた免疫染色を行いました。

調製したサンプルは、IN Cell Analyzer 1000による画像取り込み後、画像解析ソフトウェによる解析を行いました。(図2-4)

図1 アッセイプレートフォーマット
図1 アッセイプレートフォーマット
3ウェルずつ同濃度で測定。
ウェルH10 ~H12が最も添加物質の濃度が高い測定ウェルであり、以下、行方向(G→ F → E、、、、A)に32 段階で1/2 希釈。
ウェルA1 ~A3がコントロール(添加なし)測定サンプル。
Plate1 : LIF、80 ng/ml から1/2 希釈
Plate2 : Chemical X、50 nMから1/2 希釈
Plate3 : 2.5 ng/ml LI(F 固定)+ Chemical X、50 nMから1/2 希釈

結果

撮影画像および解析結果

Plate1 : LIF 添加
Plate1 : LIF 添加

Plate2 : Chemical X添加
Plate2 : Chemical X添加

Plate3 : 2.5 ng/ml LIF + Chemical X添加
Plate3 : 2.5 ng/ml LIF + Chemical X添加
図2 IN Cell Analyzer 1000による撮影画像

図3 各種薬剤が与える神経細胞分化への影響
図3 各種薬剤が与える神経細胞分化への影響
X 軸:FITC蛍光強度(MAP2:>250>)、Y 軸:Cy3 蛍光強度(GFAP:>240>)。各プロットは3ウェル分の総細胞数による。薬剤添加濃度は図1を参照してください。

図4 各種薬剤による神経分化マーカー発現および細胞形態変化への影響
図4 各種薬剤による神経分化マーカー発現および細胞形態変化への影響(Spotfire DecisionSite™)
A plate1:LIF 添加
B plate2:Chemical X 添加
C plate3:2.5 ng/ml LIF 、Chemical X 添加
横軸
(1)細胞数、(2) FITC蛍光強度、(3)Cy3 蛍光強度、(4)突起を持つ細胞数、(5)突起本数(合計)、(6)突起面積(合計)、(7)突起長さ(合計)、(8)突起Cy3 蛍光強度(合計)、(9)突起本数(平均)、(10)突起面積(平均)、(11)突起長さ(平均)、(12)突起Cy3 蛍光強度(平均)

まとめ

今回、IN Cell Analyzer 1000 を用いて、各種薬剤が与える神経表皮細胞の分化誘導に対する影響を解析しました。その結果、LIF 、Chemical X の各濃度におけるニューロン(MAP2)、グリア(GFAP)への分化誘導効率の違いが確認されました。特に、GFAP 陽性細胞を誘導することが知られているLIF では、0.625 ng/ml 以上の濃度におけるGFAP の発現上昇が認められました。画像解析をベースにしたHigh Content Analysis 技術では、接着細胞を剥がすことなくポピュレーション解析が行えるほか、マーカー発現量だけでなく形態変化を含めた多角的な解析が可能です。これにより、単に分化誘導の評価を行うだけではなく、機能評価もあわせた解析を行うことができます。


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