Cytiva

検索のヘルプ

Location:Home実験手法別製品・技術情報セルラーサイエンス

浮遊細胞を用いたイメージングサイトメーターによるアポトーシス解析

はじめに

解析ソースとして細胞イメージを用いるイメージングサイトメーターでは、接着細胞や組織切片でも、測定の際に剥離、分散といった操作をせずに、細胞個々のイメージから蛍光強度、面積、長さ、真円率等の形態情報やタンパク質の局在情報が取得できます。さらに従来のフローサイトメーターのようなポピュレーション解析も可能です。個々の細胞イメージと数値データを相互リンクしているので、必要に応じて、ポピュレーション解析で得られた特徴的な数値データを持つ細胞について、形態観察や数値確認も行えます(図1)。

今回はIN Cell Analyzer 1000を用いた浮遊細胞のアポトーシス解析例をご紹介します。アポトーシス解析では従来、フローサイトメーターによる解析が多く行われています。イメージングサイトメーターを用いることで、ポピュレーション解析だけでなく、核の断片化などの形態変化もあわせて検出することができました。また、焦点を合わせにくく、均一な画像を取るのが難しいとされている浮遊細胞も遠心することで問題なく解析することができました。

図1 データと細胞イメージとのリンク
図1 データと細胞イメージとのリンク
プロット(1)や数値(2)をクリックすることで対象となる細胞イメージ(3)を開くことができます。

使用した製品

  • IN Cell Analyzer 1000・・・細胞イメージ取得用装置
  • IN Cell Investigator Software・・・解析用ソフトウェア

サンプルおよび試薬

  • Jurkat細胞
  • Camptothecine・・・アポトーシス誘発剤
  • Vybrant Apoptosis Assay Kit #2、Alexa Fluor™ 488 Annexin V/propidium iodide(Invitrogen V13241)
  • Hoechst™ 33342 (Dojindo 346-07951)

※Annexin V、Propidium Iodide(PI)はアポトーシス細胞のステージを識別するためのマーカーです。Annexin V はアポトーシス初期以降の細胞を全体的に染色します。PIは死細胞の核を染色します。アポトーシス後期以降の核が染まります。Hoechst™ 33342は生死を問わず核を染色します。

実験方法

Jurkat細胞を、10 µM Camptothecineで5時間処理、50 µM Camptothecineで5時間処理、95℃2分間処理の3通りの方法で細胞死を誘導しました。その後下記の手順に従いAnnexin V、Propidium Iodide(PI)、Hoechst™ 33342で細胞の染色を行いました。

  1. 薬剤処理したJurkat細胞(チューブあたり5x104個/100 µl)を、400×g, 5分遠心しました。
  2. 上清を捨て、100 µlのPBSで懸濁し、400×g, 5分遠心しました。
  3. 上清を捨て、1×Annexin Buffer 100 µlを加えて懸濁しました。
  4. 15 µl Anxexin V conjugate、2 µl PI working solution、20 µl 600×Hoechst™ 33342溶液、80 µl 1×Annexin Bufferを加え、常温で15分インキュベートしました。
  5. 400×g, 5分遠心し、上清を捨て、ペレットを100 µl 1×Annexin Bufferに懸濁しました。
  6. 96ウェルプレートに細胞を分注し、細胞をプレート底に沈めるために遠心機でフラッシュし、IN Cell Analyzer 1000で観察、測定しました。

結果

10 µM Camptothecine処理を行った細胞をIN Cell Analyzer 1000で撮影した画像を図2、3に示しました。図3には画像解析ソフトウェア、IN Cell Investigator Softwareにより細胞を認識させた結果も示しました(図3)。Hoechst™ 33342で染色された核を元に認識しました(図3D~F)。細胞から抜け出してしまった核は認識の対象外となっています(図3中△印)。このように指定した条件のものを対象から除外することもできます。

それぞれ処理を行った細胞をIN Cell Investigator Softwareで認識し、横軸にAnnexin Vの強度、縦軸にPIの強度をとりプロットした結果を図4に示しました。各ステージの細胞の割合が分かるよう図5にPie Chartも示しました。図4、5よりCamptothecine処理で濃度依存的に生細胞(Annexin V -、PI -)の割合が減少し、初期アポトーシス細胞(Annexin V+、PI -)が増加しており、95℃ 2分間処理で大幅に細胞死(Annexin V+、PI +)が誘導されている様子が確認できました。

図2 50 μM Camptothecineで5時間処理したJurkat細胞の様子(10×レンズ使用)
図2 50 µM Camptothecineで5時間処理したJurkat細胞の様子(10×レンズ使用)

図3 画像解析ソフトウェアIN Cell Investigator Softwareによる画像認識
図3 画像解析ソフトウェアIN Cell Investigator Softwareによる画像認識
A~Cは細胞認識前の画像、D~Fは細胞認識後の画像を示します。黄丸で囲まれたものを細胞と認識しています。Hoechst™ 33342、PIで染まらず、Annexin Vで染まっている脱核した細胞は解析対象から除外されていることが分かります(図中△印)。

図4 Annexin V 初期アポトーシスアッセイ解析結果のドットプロット
図4 Annexin V 初期アポトーシスアッセイ解析結果のドットプロット

図5 Annexin V 初期アポトーシスアッセイ解析結果のPie Chart
図5 Annexin V 初期アポトーシスアッセイ解析結果のPie Chart
※Annexin V(-)、PI(+)はアポトーシス解析には不要なため非掲載。

A 生細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(-)、PI(-)
A 生細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(-)、PI(-) A 生細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(-)、PI(-)

B 初期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(-)
B 初期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(-) B 初期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(-) B 初期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(-)

C 中期~後期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(+)
C 中期~後期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(+) C 中期~後期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(+) C 中期~後期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(+) C 中期~後期アポトーシス細胞 Hoechst™ 33342(+)、Annexin V(+)、PI(+)

D 脱核した細胞 Hoechst™ 33342(-)、Annexin V(+)、PI(-)
D 脱核した細胞 Hoechst™ 33342(-)、Annexin V(+)、PI(-)
図6 50 µM Camptothecineで5時間処理したJurkat細胞の様子(60×レンズ使用)

また、60×レンズを用いることで細胞内の形態変化を確認することが可能です。図6に50 µMで処理した細胞イメージを示しました。 Aは生細胞を示しています。核がHoechst™ 33342(青)だけで染色されています。Bは初期アポトーシス細胞です。細胞全体がAnnexin V(緑)で染色されています。Cは後期アポトーシス細胞です。核が断片化され、小粒状になっている様子が観察されます。この細胞イメージからさらに核の大きさ、数などの情報を得ることも可能です(データ未掲載)。

まとめ

  • IN Cell Analyzer 1000で得た細胞イメージからポピュレーション解析を行うことができました。
  • 浮遊細胞の観察は、事前にプレートを遠心して細胞をプレート底に沈めることで測定できました。
  • Annexin V、PIに加えHoechst™ 33342染色することで細胞を認識し、さらに脱核した細胞を除外して解析することができました。
  • 60×レンズにより、後期アポトーシスにみられる核の形態変化を観察できました。


お問合せフォーム

※日本ポールの他事業部取扱い製品(例: 食品・飲料、半導体、化学/石油/ガス )はこちらより各事業部へお問い合わせください。