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IN Cell Minerによる化合物ライブラリー ハイコンテントスクリーニングデータのハンドリング

はじめに

IN Cell Miner High-Content Manager(HCM)は、High-Content Analysis(HCA)によって得られたデータを取り扱うための包括的なソリューションです。クライアントサーバモデルをベースにしたデータ管理システムで、IN Cell Analyzerの測定データを持つクライアントPCを、EMC社のDocumentumをベースにしたデータ管理サーバにつなぎます。IN Cell Minerソフトウエアは、IN Cell Analyzerにより取得された画像と解析結果を、プロジェクト、スクリーニング対象、測定日、プレート番号などによって階層的に管理します。
また、ユーザーによって化合物情報や処理濃度などの注釈を追加することができます。
今回、Sigma-Aldrich社LOPAC chemical libraryの薬理学的に活性のある640の化合物を用いたモデル実験を行いました。アゴニストに対する反応として起こるβ2アドレナリン受容体のインターナリゼーションをモニターし、各化合物の影響を評価しました。

図1 2-adrenergic receptor アッセイスキーム
図1 2-adrenergic receptor アッセイスキーム
pH感受性のcyanine dye(CypHer 5E)はpH 7.4では蛍光をもたず、pH 5.5 で最大の蛍光強度をもちます。アゴニスト刺激により酸性域のエンドソームを形成して膜タンパク質がインターナリゼーションする様子をモニターすることができます。(A)アゴニストを添加したコントロールウェル。(B)アンタゴニストを添加したポジティブコントロール。Hoechst™(青)とCypHer5E(赤)のマージ画像です。

実験内容

サンプルおよび試薬

  • LOPAC(Sigma-Aldrich)― 640 pharmacologically active compounds(96 well format)
  • HEK293細胞株 ― VSV-Gエピトープタグ付きβ2アドレナリン受容体を発現
  • 抗VSV-G抗体 ― pH 感受性CypHer5E dye(Cytiva)でプレラベル
  • Isoproterenol

方法

96ウェルプレートに1ウェルあたり8,000細胞播種し、およそ70%コンフルエントになるまで培養しました。2.5 mg/ml CypHer5E標識した抗VSV-Gエピトープ抗体および5μM Hoechst™を添加し、室温10分後、コントロールおよびLOPACテスト化合物を含むアッセイ培地に交換しました。コントロールのアンタゴニスト(Alprenolol)は、各プレートのコーナーのウェルに処理し、LOPAC テスト化合物は、0.1μM、1μM、10μMの3濃度で処理しました。さらに室温10分後、アゴニスト(100 nM Isoproterenol)を添加し、37℃で30分インキュベーションの後、IN Cell Analyzerによる測定を行いました(図1)。
IN Cell Analyzerによって得られた画像および数値結果はIN Cell Minerによる管理・照合が可能です。複数枚のプレートにわたるデータを細胞個々の情報レベルまで精査し、また、化合物情報などとの関連付けが可能です。

IN Cell Minerによるデータのハンドリング

IN Cell Analyzerによる撮影画像と解析結果は、化合物ライブラリーの情報とともにIN Cell Minerにインポートします(図2)。
“Plate Aspect”画面では、プレート/ウェルサマリーレベルでの数値データが確認できます(図3)。ヒートマップ表示は、プレート間のデータ比較に有用です(図4)。
興味のあるプレートについては“Plate Aspect”画面から“Well Aspect”画面へとトランスファーでき、チャート表示も可能です。図5では0.1μMのLOPAC化合物スクリーニング結果のうちプレート2番(図4A ②)のみを表示しており、7つのヒットが確認できます。ヒットとは、グラニュールが消失しているウェルを指し、添加した化合物の阻害効果が考えられます。チャートから任意にフィルターを設定してデータの抽出ができます。ヒートマップ上のデータ表示は、IN Cell Analyzerによる測定データ(図5A)、化合物情報(図5B)、その他ユーザーが設定した注釈のほか、画像のサムネイル表示も可能です。
また、“Guided Query”機能により、さまざまなデータや注釈から必要な情報を引き出すことができます。図6では、LOPAC ライブラリーから提供される既知の薬理活性情報から化合物名を照合しました。
IN Cell Minerでは細胞レベルでのデータ表示も可能で、“Cell Aspect”画面では、ハイコンテントアナリシスのデータから細胞個々のデータへアクセスできます。図7では、隣り合う2つのウェルについて核イメージ(図7A, C)およびCypHer5E イメージ(図7B, D)を表示しています。ヒット(図7B)と影響のない化合物(図7D)で、CypHer5Eグラニュールの分布に大きな違いが確認できます。このように数値結果を画像からも確認することができます。
さらに、“Cell Aspect”画面では、細胞個々のデータを、画像とリンクしたインタラクティブなチャートとして表示させることができます(図8)。

図2 IN Cell Analyzer画像と解析データの階層的管理
図2 IN Cell Analyzer 画像と解析データの階層的管理
インポートされたデータは、プロジェクト、スクリーニング対象、測定日、プレート番号などで管理されます。各階層の情報は図のように示されます。ユーザーは任意のノードを選択し、解析データを、プレートマップ様式で表示させることができます。

図3 Plate Aspect画面でのプレート/ウェルレベルでのデータ表示
図3 “ Plate Aspect”画面でのプレート/ウェルレベルでのデータ表示
(A)測定値とヒートマップによるオーバーレイで解析結果が表示されます。(B)インポートした化合物情報。(C)ユーザーが設定した注釈。マウスカーソルをウェルへ移動させると、インポートされたすべての情報が確認できます。

図4 テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップ表示(図中の数字はプレート番号)
図4 テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップ表示(図中の数字はプレート番号)
CypHer5E イメージチャネルの各細胞あたりのグラニュール数をカウントし、5つ以下のグラニュールをもつ細胞の割合をヒートマップ表示しました。CypHer5E のグラニュールをもつ細胞が少ないウェルは白で表示されています。すべてのプレートのコーナーはポジティブコントロールです。(A)0.1μM テスト化合物においては、8つの既知の化合物がヒットと判定されました。そのうち7つはプレート2番(A②)で、1つはプレート7番(A⑦)で確認できます。
(B)10μM テスト化合物においては、複数プレートにわたってヒットが確認され、多くは非特異的な影響ではないかと考えられます。

図5 0.1μM テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップおよびスキャッタープロット表示
図5 0.1μM テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップおよびスキャッタープロット表示
スキャッタープロットのX 軸はCypHer5Eグラニュール数、Y軸は細胞数を示します。青のバーを左へスライドさせて、興味のあるデータをハイライトさせることで、ヒットのデータのみを確認できます。チャートとヒートマップはリンクし、ヒット(ポジティブコントロールを含む)として判定されたプロットはヒートマップ上でもハイライトされます。

図6 0.1μM テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップおよびスキャッタープロット表示
図6 0.1μM テスト化合物によるスクリーニング結果ヒートマップおよびスキャッタープロット表示
化合物リストは“Guided Query”機能で抽出されたアドレナリン受容体に対するさまざまな活性をもつことが知られているものです。 0.1μM 化合物のスクリーニングデータ(プレート2番:図4A ②)について、データをフィルタリングすると、IN Cell Analyzer によるβ2アドレナリン受容体活性のヒットと照合することができます。

図7 ヒートマップと画像表示のリンク
図7 ヒートマップと画像表示のリンク
イメージ表示はデジタルズームで細部の確認が可能です。ヒートマップは、細胞あたりCypHer5Eのグラニュール数をカウントし、5つ以下のグラニュールをもつ細胞の割合を表記しました。ヒット(B)と影響のない化合物(D)で、CypHer5E グラニュールの分布に大きな違いが確認できます。このように数値結果を画像からも確認することができます。
A, C:核イメージ
B, D:CypHer5E イメージ

図8 Cell-by-Cell データ表記
図8 Cell-by-Cell データ表記
細胞個々のデータをスキャッタープロット表示できます。X軸は核面積、Y軸は核蛍光強度を示します。IN Cell Investigatorによる画像認識のオーバーレイによりハイライトされた細胞は、スキャッタープロットでも確認ができます。

まとめ

  1. IN Cell Minerは複数プレートのプロジェクトにおいて、画像および測定データの管理のみでなく、各種情報を追加することで、ハイコンテントアナリシスによる研究を拡張させることができます。
  2. 複数プレートにわたるプロジェクトデータをヒートマップ、チャート、データテーブルなどでビジュアル化できます。
  3. Guided Query”機能によるフレキシブルなデータ照合機能で、IN Cell Analyzerによる解析結果やほかのプロジェクトの情報に基づいたデータを検索、照合できます。
  4. IN Cell Miner は複数プレートのプロジェクトからシングルセルデータまで幅広くサポートします。

※ IN Cell Analyzer 2000は2013年2月をもちまして販売終了しております。後継機種IN Cell Analyzer 2200でも、同様の解析を行うことができます。

リファレンス

  1. Adie, E., Kalinka, S., Smith, L., Francis, M. J., Marenghi, A., Cooper, M. E., Briggs, M., Michael, N. P., Milligan, G., and Game, S. A pHSensitive Fluor, CypHer5, Used to Monitor Agonist-Induced G Protein-Coupled Receptor Internalization in Live Cells BioTechniques 33 1152 – 1157, 2002

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