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バイオダイレクトメール vol.37 細胞夜話
<第2回:HeLa細胞 - Henrietta LacksとLacks家の物語>

1951年2月1日、Johns Hopkins Hospitalに1人の黒人女性が来院しました。彼女の名前はHenrietta Lacks。数日前に下着に血液が付着しているのに気付いて診察を受けるために、彼女がJohns Hopkins Hospitalを訪れたとき、すべてが始まりました。

Hela, story of Henrietta Lacks

当時、ヒト以外の動物細胞では、細胞株が樹立され、研究に使われるようになっていました。しかし、ヒトの細胞ではまだ誰も成功していませんでした。
Johns Hopkins Hospitalで研究を行っていたGeorge GeyとMargaret Gey夫妻も、がん研究のための道具として、ヒト細胞株をつくろうと20年間研究を続けていましたが、成功していませんでした。
2人にとってはどのような種類のがんでも良かったのですが、1951年当時、婦人科学部長のRichard TeLindeの求めに応じて、2人は子宮頸部の細胞を集中的に研究していました。

1951年2月1日、Henriettaを診察したHoward Jones医師は彼女の子宮頸部に腫瘍を発見し、検査のためのサンプルを採取しました。結果は悪性でした。

8日後、Henriettaはラジウムを用いた治療を受けますが、その際、治療の前に若い研修医Lawrence Whartonがサンプルを取り、子宮頸部の細胞を研究していたGeyに渡しました。
培養してみたところ、細胞は試験管内で順調に増殖し、日ごとに細胞の層が厚くなってゆきました。こうして、世界で最初のヒトの細胞株が得られたのです。

1951年10月4日、Henriettaの細胞が入ったバイアルを持ったGeyがテレビに出演しました。Henriettaの細胞をHeLa細胞と呼び、この細胞ががんを駆逐する研究につながる可能性を語りました。

一方、Henriettaの体内のがん細胞も、試験管内の細胞と同様に急速に増殖し、数ヶ月で全身に転移していました。そして、Geyがテレビに出演したちょうど同じ日、Henriettaはこの世を去ります。彼女の遺体は、家族のタバコ農園の向かいにある何の墓碑銘もない墓に埋葬されました。

世界で初めて樹立されたヒトの細胞株は、すぐに医学に大きく貢献しました。Geyらは、HeLa細胞でポリオウィルスを増殖させることに成功しました。その結果、研究者は多くのポリオの系統の中から、病原性を持つものを分離できるようになり、製造したワクチンが効果をもつかどうかを確かめることもできるようになりました。
その後、Geyと彼の同僚は世界中の研究者にHeLa細胞を配布しました。HeLa細胞はがん、ウィルスの増殖、タンパク質の合成、遺伝子の制御、薬剤や放射線の効果の確認など、さまざまな研究に使われました。Henrietta自身は故郷のVirginiaと、結婚後に移住したBaltimore間の往復以外に旅らしい旅をしたことがありませんでしたが、彼女の細胞は世界中に広まり、スペースシャトルによって宇宙にまで運ばれました。

このように、Henriettaの細胞は世界中で活躍しましたが、Henriettaの功績が語られることはなく、論文では、誤ってHelen LaneまたはHelen Larsonなどとされてしまう状態でした。そして、夫のDavid Lacksや5人の子どもたちは、Henriettaの細胞が研究に使われていることなど知らされていませんでした。

Lacks家の人々は、ある偶然によって、Henriettaの細胞が研究に使われていることを知ります。1975年のある日、Henriettaの長男Lawrenceの妻であるBarbaraが友人宅での夕食会に参加したところ、友人の家族の中に研究者がおり、彼からHenrietta Lacksという黒人女性から採取された細胞が世界中で広く使われているという話を聞きます。

Barbaraが聞いた話に驚いたLacks家の人々は、事実を確認しようとJohns Hopkins Hospitalに電話をかけました。
ちょうどその頃、研究者の間で、ある疑惑が浮上していました。

奇妙なことに、Geyの成功の後、なぜかヒトの細胞が容易に培養できるようになり、次々にヒト細胞株が樹立されてゆきました。その多くの場合、増殖の過程に共通のパターンが見られました。最初の数週間から数ヶ月はなかなか増殖しないのですが、多くの細胞は、その後、急に増殖するようになりました、まるでHeLa細胞のように。。。 1974年、Walter Nelson-Reesが疑問を提起しました。培養している細胞にHeLaが混入しているのではないか、と。当然、研究者は信じようとはしませんでした。もし、Nelson-Reesの言うとおりであれば、それまでさまざまな細胞株について行われてきた多くの研究が、時間と予算の無駄だったことになってしまいます。
実際、空中に飛散したり、手やピペットに付着したりしたHeLa細胞が、接触した多くの培養細胞にすりかわっていたのですが、当時の研究者には、どの細胞株がHeLaで、どの細胞株が本来目的としていたものなのか、区別する手段がありませんでした。研究者が知っているのは、Henriettaが黒人女性ですでに死亡している、と言うことだけだったのです。

Lacks家の人々は、研究者の求めに応じ、血液や組織のサンプルを提供しました。その結果、研究者はHeLa細胞の特徴をつかみ、HeLa細胞を見分けることができるようになったとNelson-Reesは語っています。
しかし、Henriettaの息子Sonny Lacksによると、Henriettaと同様のがんになるかどうかを調べてくれるという話だったのでサンプル採取に応じたそうですが、その後の連絡は何もありませんでした。

医学、生物学の発展に大きく貢献したHeLa細胞ですが、同時に2つの問題を残しました。1つは、組織サンプルに関するインフォームドコンセントの問題です。患者本人にも、家族にも何の連絡もないまま、Henriettaの細胞は研究に使われてしまいました。Hopkins Bioethics Instituteの部長Ruth Fadenによると、間違ったことではありますが、当時は、医師が患者の了解なく研究を進めてしまうことはよくあることだったそうです。この時期から、生物医科学における倫理の問題が取り上げられるようになり、今では勝手にサンプルを採取できないようになっています。
もう1つの問題は、患者から採取されたサンプルが経済的価値を持つようになった場合、患者には何らかの利益が与えられるべきかどうか、という問題です。この問題については、いまだにはっきりした結論は出ていません。

Note

  • HeLa細胞は世界で初めて樹立されたヒト由来の細胞株です
  • HeLaという名前はHenrietta Lacksという患者の名前に由来しています
  • ヒトパピローマウィルスの遺伝子をもっています
  • 今日でも研究材料として広く使われています

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