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生化夜話 第25回 番外編:世界を変えたコンタミ - Enhanced Chemiluminescenceの発見突然ですが、納豆は好きですか?実は筆者の好物の1つです。もうかなり前のことになりますが、ベルギーに1週間ほど滞在して帰ってきた時は、まず納豆定食を食べました。 納豆の歴史を紐解いてみれば、どうやら煮豆と藁束の偶然の出会いが生んだ生化学反応、ということのようです。今回は納豆の歴史を語るのが主題ではないので、そのあたりは専門家にお任せすることにしますが、このように、偶然見つかり人々の役に立った生化学反応の例はそれこそ世界中にたくさんあります。実は生化学研究のツールにもそんな話がありました。 もっと光を1960年代の終わりから1970年代の前半にかけて、放射性化合物を使わないイムノアッセイとして、EIA/ELISAが開発されました(詳細は第22回:イムノアッセイでイヌのアッセイ - RIAとEIA/ELISAを参照)。検出法としては、蛍光色素標識や発色法などがありましたが、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いた化学発光も初期の段階から利用されていました。 しかし、EIA/ELISAの黎明期には化学発光の将来性は評価されていたものの、当時の化学発光は光が弱かったためシグナルとバックグラウンドノイズの比(S/N比)が小さく、またHRPを使った系については、過酸化水素(H2O2)を用いているため光の減衰が非常に速く、検出する直前に反応させなければならないという欠点がありました。 そうした化学発光の弱点を改善するために、発光の機構を研究し、発光の強さや持続時間に影響している要因を特定しようという研究が始まりました。 バーミンガムのウォルフソン研究所にいたラリー・クリッカとゲイリー・ソープのグループも、そうした発光を研究するグループの1つで、化学発光の系として大変よく知られたHRP(HRP+ルミノール+H2O2)とホタルルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ+ホタルルシフェリン)を使って研究を進めていました。 輝きは"混ぜ"で決まる1980年代初めのある日、クリッカたちの実験室で行われたHRPの実験で、それまでとはまったく異なるレベルのS/N比が得られました。強いシグナルと低いバックグラウンドノイズ、まさにクリッカたちが望んでいたものではありますが、意図して何かを工夫したわけではありません。 そこで、実験を行ったテクニシャンと、その日の実験で何があったのかをよく検討しました。実験室の同じエリアでHRPとルシフェラーゼの実験を行っており、その日の実験では、どうやらHRPの系にルシフェラーゼの実験で使う試薬が混入してしまったようでした。そこで、同じように試薬の混入を再現してみたところ、HRPの系にルシフェリンを入れると化学発光が増強されることがわかりました。これが、後にさまざまな場面で応用されることになる増強化学発光(Enhanced Chemiluminescence、ECL™)発見の瞬間でした。 ここでルシフェリンの生物発光について面白い性質を発見した、というような論文にしていたら、その後の歴史もまったく違っていたかもしれません。しかし、クリッカたちはこの現象がルシフェリンに特有の現象ではなく、特定の構造の分子を加えた際に化学発光が増強されるという一般的な現象ではないかと仮定しました。それから程なくして、2,4-ジクロロフェノールでも同様に化学発光が強まることがわかり、彼らの仮説が正しいことが証明されました。その後、彼らはさらに効率よく発光を増強できる分子のスクリーニングを続け、その成果が後のAmerliteに活かされることになりました。 インスタントでどうぞクリッカたちは、発光を増強する分子の探索だけでなく、それを実際の実験に役立てる方法も検討していました。その中に、写真用の機材を使って発光を検出するというものもありました。 光電子増倍管のような光検出器の利点は、感度が高いことと、定量性があることでしたが、その代わりに非常に高価でした。また、記録されるのはシグナルの強さだけなので、後で実験結果を解析し直してみよう、ということはできません。その代替として、フィルムとカメラを使って検出する方法を紹介しています。感度と定量性では光検出器に劣るものの、特に設備が必要なく、記録もメンブレンの写真として残りますので、後で定量をやり直すこともできます。また、インスタントフィルムを使うととても速い、という利点を挙げています。 その論文の中で、この写真の製品に非常によく似たポラロイド製のインスタントカメラが紹介されていました。 参考文献
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