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抗体精製をマスターしよう (1)抗体の成り立ち抗体はライフサイエンス研究全般において必須の道具の一つで、免疫学的測定・解析をはじめとして、細胞やタンパク質の機能解析、遺伝子の発現スクリーニングなどの基礎研究においても利用されています。1975年にKöhlerとMilsteinによってモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の樹立方法が確立されて以来、生命現象を個々のタンパク質レベルで研究するための最も重要なツールのひとつとして活用されてきていることは言うに及びません。さらには、昨今では近未来の医療を担う抗体医療の直接的な手段として、世界各国の製薬企業が抗体医薬品の研究開発に大きな力を注いでいます。 このようにライフサイエンス研究において広く活用されている抗体ですが、動物種や使用する原料によってサンプルの前処理方法や精製方法が異なり、実験目的によって求められる純度も様々であるため、タンパク質精製を初めて行う研究者にとっては抗体の精製は必ずしも容易な操作とは言えません。 本連載では、これから抗体の精製に着手される皆さまを対象として、抗体精製の原理から、抗体の種類別精製プロトコール、サンプルごとの処置方法まで、1年間にわたってわかりやすくご紹介して参ります。 抗体の基本構造
図1 免疫グロブリンの基本構造
すべての免疫グロブリン(Ig)は2本の同一H鎖(Heavy chain)と2本の同一L鎖(Light chain)の計4本のポリペプチド鎖を基本構造としています(図1)。 免疫グロブリンはPapainによってH鎖の中央付近で限定分解され、その際の定常部位側をFcフラグメント、可変部位を含む側をFabフラグメントと呼びます(図2)。また、Pepsinを用いて分解する場合は、Fabはヒンジ領域を含んで左右が連結した状態で消化され、これをF(ab')2フラグメントと呼びます。(この際Fcは細かく分解されます。) 図2 Fab, Fc, F(ab)2フラグメントこのように免疫グロブリンの基本構造が共通しているため、抗体の精製に際しては生物学的親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーによって精製プロセスをルーチン化することが可能です。これが抗体精製の大きな特徴のひとつです。 例えば、もっともよく用いられるIgGのアフィニティークロマトグラフィーにおいては、定常部位に対して親和性を持つリガンドであるProtein A・Protein Gを用いるのが一般的です。特にProtein Gは、対応できる動物種・サブクラスの範囲が広く、温和な条件で結合できるため、もっともよく用いられます。IgG以外の抗体についても、多段階にわたるの精製過程で、まずはじめにアフィニティークロマトグラフィーを行うのが一般的です。 抗体のクラス以上のような構造を基本に、免疫グロブリンにはIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5つのクラスが存在し、それぞれが異なる構造を持ち、異なる免疫機能を担っています。
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体
図3 ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体
つづいて、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の違いについて説明します。 モノクローナル抗体とポリクローナル抗体は作製方法が異なるため、精製方法が異なってきます。
抗体には、一次構造を認識するものと立体構造(コンフォーメーション)を認識するものがありますが、立体構造を認識するモノクローナル抗体の場合、変性剤(尿素や塩酸グアニジンなど)や還元剤(DTTや2-MEなど)の存在下で抗原のコンフォーメーションが変化すると、抗原を認識できなくなることがあります。他方でポリクローナル抗体は多種類の抗体の集合なので、コンフォーメーションを失った抗原に対しても抗原抗体反応を起こすことがあります。 抗体の物理化学的性質・生物学的性質抗体にはさまざまな構造や性質のクラスが存在し、各クラスには固有の物理化学的性質があります(図5)。とはいえ、分子量が巨大なIgMのような例外を除けば、精製の初めの段階から分子量や等電点の情報だけに依拠して精製を行うことは困難であり、得策ではありません。抗体の精製においては、ほとんどの場合で簡便かつ特異性の高いアフィニティークロマトグラフィーを利用できるので、ゲルろ過やイオン交換を用いる以前に、短時間、高純度な精製が可能なアフィニティークロマトグラフィーをまず行います。その後、求める純度など、必要に応じてイオン交換やゲルろ過を行います。
サブクラスごとの等電点や分子量は、その際の大まかな目安になります。 図5 代表的な抗体クラスの物理化学的性質 以上、第1回では抗体の成り立ちについて基本的な知識をご紹介しました。 お問合せフォーム※日本ポールの他事業部取扱い製品(例: 食品・飲料、半導体、化学/石油/ガス )はこちらより各事業部へお問い合わせください。 お問い合わせありがとうございます。 |
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