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複数タグのススメ【2】
~GST融合タンパク質編~

GST融合タンパク質イメージ図

組換えタンパク質の第2弾はGST融合タンパク質です。GST融合タンパク質はHis-tag付きタンパク質と並び、よく利用される発現方法です。


GSTとはGlutathione S-Transferaseの略です。

特徴

GSTそのものの可溶性(親水性)が非常に高いため、目的とするタンパク質を可溶画分に発現させられる可能性が高くなります。精製に関しては基質であるグルタチオンをリガンドとしたGlutathione Sepharose™(Glutathione Sepharose™ 4 Fast Flowなど)との親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーを初期精製で利用できます。
そのため、

  • 酵素・基質反応であるため、アフィニティー特異性が高く、サンプルによっては1ステップ精製(初期精製)で80~90%程度まで純度を上げることが可能

という特徴が挙げられます。

ポイント

  1. 機能や構造を解析する際、または抗体作成用の抗原とする場合には、タグの部分が邪魔になることが多い(精製後にタグを切断する必要がある場合がある)

  2. タグだけで約28 kDaあるため、分子量の大きなタンパク質の発現にはあまり向いていない(一般的には発現できる上限の分子量の目安は100 kDa程度)

精製後に必要なくなったGSTについてはプロテアーゼによる切断を行いますが、使用するプロテアーゼは発現ベクターにより決まっています。弊社で販売しているベクターは、使用するプロテアーゼの種類により3つに分かれます。

どのベクターにするかは、クローニングする際の制限酵素、目的タンパク質のアミノ酸配列などの情報を元に選択します。

・Thrombin
比較的安価ですが、認識配列の特異性が低いという留意点があります
・Factor Xa
認識配列が比較的長めで、特異性は高いといえますが、二量体として挙動するため、還元条件下で機能することができません(GSTrap™カラムなどで精製後に還元型グルタチオンを除去してから反応させる必要がある)。
・PreSicssion Protease
認識配列が長く、低温で反応可能な点が特徴で、外の内在性プロテアーゼの活性を抑えつつタグ切断のみが行われることが最大のメリットです。更にPreScission™ ProteaseのN末端にはGST融合タンパク質が付加されています。

ここでのポイントは、

  • 切断の精度(正確さ)
  • 切断したGSTの除去
  • 使用したプロテアーゼの除去

になります。

切断精度は認識配列が長いという点でFactor XaやPreScission™ Proteaseが挙げられます。

切断したGSTの除去には、最初に組換えタンパク質を精製する時に使用するGlutathione Sepharose™(Glutathione Sepharose™ 4 Fast Flowなど)を用い、素通り画分を回収します。

プロテアーゼの除去は、セリンプロテアーゼに分類されるThrombinやFactor XaはBenzamidine Sepharose™を用いて除去します。PreScission™ Proteaseは上述の通りGST融合タンパク質であるため、切断したGSTの除去と共にPreSiccion Proteaseも一緒に除去できる、とても便利なプロテアーゼです。

これから実験系をGST融合タンパク質で組み立てようと考えていらっしゃる方は是非お薦めのベクター・プロテアーゼの組み合わせです。

アプリケーション例などを知りたい、という方はガイドページをご訪問ください。

プロテアーゼの比較
Thrombin Factor Xa PreScission™
分子量 37 kDa
単量体
48 kDa
二量体
46 kDa
単量体
認識配列 P4-P3-Pro-Arg/Lys↓P1'-P2'(P3とP4は疎水性アミノ酸、P1'とP2'は非酸性アミノ酸) Ile-Glu-Gly-Arg↓ Leu-Glu-Val-Leu-Phe-Gln↓Gly-Pro
P2-Arg/Lys↓P1'(P2またはP1'がGly)
反応温度 室温
2~16時間
室温
2~16時間
低温
4~16時間
プロテアーゼの除去 Benzamidine Sepharose™ Benzamidine Sepharose™ Glutathione Sepharose™
還元剤 不可

精製スキーム

精製スキーム図



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