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Location:Home実験手法別製品・技術情報タンパク質サンプル調製・前処理

第5章
サンプルスループットの増加/スクリーニングアプリケーション(2)

個々の製品とプロトコール(2)

Protein A HP MultiTrap™および自動化システムを使用した抗体精製

Protein A HP MultiTrap™およびProtein G HP MultiTrap™は、抗体スクリーニングや種々のサンプル供給源からの抗体精製などさまざまな操作に使用できる汎用ツールです。これらのツールではウェル間の再現性が高く、検出可能なレベルのコンタミネーションは生じません。Te-VacSハイスループット真空分離モジュールとMagellanデータ解析ソフトウェアを搭載したTecan™ Freedom EVO™自動化プラットフォーム(Tecan™社)では、簡単なセットアップで優れたウェル間の再現性が確認されています。

サンプルをProtein A HP MultiTrap™にチェス盤パターン(隣のウェルは空のまま)で分注して、ヒトモノクローナルIgGを精製しました(図5.4)。サンプルは、200 μl/ウェルの純品のヒトモノクローナルIgGを使用しました。バッファーは、結合バッファー(20 mMリン酸ナトリウム、pH 7.0)、洗浄バッファー(20 mMリン酸ナトリウム、pH7.0)、中和バッファー(1 M塩酸トリス、pH9.0)および溶出バッファー(0.1 M塩酸グリシン、pH2.7)の混合液としました。各ウェルについてコンタミネーションがないか分析しました。溶出後、280 nmで吸光度を測定して収量を計算し、各画分をSDS-PAGEで分析しました(図5.5)。RSD(相対標準偏差)1.4%という高い再現性で精製を行え、空のウェルからは抗体は検出されませんでした(図5.6)。

図5.4
図5.4 サンプルをチェス盤パターンで分注。Sはサンプル、Eは空のウェルを示します。

図5.5
図5.5 1回目の溶出で得られたモノクローナルIgGを泳動させたSDSポリアクリルアミドゲル(非還元)をDeep Purple Total Protein Stainで染色しました。サンプルはA1~A12ウェルとB1~B8ウェルから採取。M=分子量マーカー。この試験では、MultiTrap™プレートのウェルを1つおきに空にしました。

図5.6
図5.6 IgG総収量のウェル間変動の標準偏差は1.4%でした。

ビーズ量を最小で1 μlとしたときのProtein G Mag Sepharose™ XtraへのヒトIgGの結合

スループットとスクリーニングの手法を改良あるいは開発する際には、再現性とロバスト性が重要です。以下に示す実験はその例を示すもので、Protein G Mag Sepharose™ Xtraを使用しています。この実験では、96ウェルプレートのウェル(表5.1)に異なる容量のProtein G Mag Sepharose™ Xtraを拡散させ、ヒトIgGの結合を測定しました。各容量のビーズについて16回反復して実験を行いました。処理はTecan™ Freedom EVO™自動化システムを用いて、図5.7に示したステップに従って自動的に行いました。ビーズ1 μlにつき20 μlのヒトIgG(gammanorm、Octapharma AG)を使用しました。結合バッファーにはPBSを使用し、溶出はpH 2.8の100 mM塩酸グリシンを用いて行いました。各ステップの前に、マグネティックセパレーターを使用してビーズを引き寄せ、「液体」(バッファー、サンプル残分、洗浄液)を除去しました。

表5.1 実験に使用したビーズの容量とIgG の量

Volume of beads (µl)5 4 3 2 1 No beads
Amount of IgG loaded (µg)100 80 60 40 20 20

図5.7
図5.7 結合実験のステップ

各ウェルについて280 nmで吸光度を測定し、溶出したタンパク質の量を測定しました(図5.8)。96ウェルプレートの8つの列で同等のパターンが見られました。ビーズ容量が等しいウェルで同等量のタンパク質が溶出され、ビーズを入れなかったウェルではタンパク質は測定されませんでした。コンタミネーションは認められませんでした。

図5.8
図5.8 A280で測定した各ウェルの溶出IgG量

His Mag Sepharose™ Niを用いた少量のヒスチジンタグGFPサンプルの精製

この実験では、GFP-(His)6を大腸菌溶解液に添加しました。His Mag Sepharose™ Niの使用量によってタグタンパク質の量を調整しました(表5.2参照)。各容量のビーズについて16回反復して実験を行いました。この実験には96ウェルプレートを使用しました。結合バッファーおよび溶出バッファーの組成は次の通りです。結合バッファー=20 mMリン酸ナトリウム、500 mM NaCl、20 mMイミダゾール、pH 7.4、溶出バッファー=20 mMリン酸ナトリウム、500 mM NaCl、500 mMイミダゾール、pH 7.4、溶出したタンパク質を280 nmにおける吸光度で測定し(図5.9A)、SDS-PAGEで泳動しました(図5.9B)。磁気ビーズおよびサンプルの容量にかかわらず、同じ純度が得られました。GFP-(His)6の収量の測定間変動はきわめて小さく、RSD(相対標準偏差)は2%~5%でした。

表5.2 実験に使用したビーズの容量とGFP-(His)6の量

Volume of beads (µl)5 4 3 2.5 2 1
Amount of GFP-(His)6 loaded (µg)94 75 56 47 38 19

図5.9
図5.9 (A)A280測定値による溶出タンパク質量の平均値とそのRSD(相対標準偏差)(%)。(B)出発サンプル、素通り画分および6通りのビーズ容量を用いたときの溶出画分(ビーズ容量につき2回反復)を泳動させたSDSポリアクリルアミドゲル。SDS-PAGE画像中の矢印はGFP-(His)6のMrを示します。

スクリーニングアプリケーション

MultiTrap™およびMag Sepharose™フォーマットは、タグ組換えタンパク質のハイスループットタンパク質生産ワークフローにおいてスクリーニングを行う場合に特に適しています。このようなワークフローでは (3、4)、多数のタンパク質について特徴付けを行う必要があり、これを達成するために一般に各タンパク質について複数のコンストラクトのスクリーニングと最適化を行います。このプロセスを効率的に扱うためには、並行作業が不可欠です。組換えタンパク質や抗体の発現スクリーニングと条件スクリーニングに適用される一般的なプロトコールを図5.10に示します。

図5.10
図5.10 発現スクリーニングと条件スクリーニングのワークフロー

GSTタグおよびヒスチジンタグタンパク質の濃縮に使用するMultiTrap™製品では、各ウェルに最大600 μlのサンプルをアプライでき、マイクログラムから数ミリグラムの濃縮タンパク質が得られます。GST MultiTrap™およびHis MultiTrap™製品では、サンプルを清澄化せずに直接アプライできることから、必要な調製時間が短縮されます。抗体生産の条件に関するスクリーニングについても同じ手法を使用でき(Protein A HP MultiTrap™/Protein G HP MultiTrap™プレートを使用)、この場合、多数のハイブリドーマのスクリーニングを平行して行うことが可能です。

タグを持つ、またはタグを持たない組換えタンパク質の精製のスケールアップはこのハンドブックでは扱いませんが、多くの場合、小スケールで使用した条件と方法をスケールアップしたフォーマットに簡単に移行できます。


※販売終了品を含みますが参考情報として掲載しております。

 

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