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水サンプルのろ過:排水試験における時間の節約

政府施設、工業用の製造施設、および受託試験ラボでは、環境に放出される水の品質基準を満たすために、継続的な排水試験を実施しています。全懸濁物質(TSS)、全溶解性蒸発残留物(TDS)、および強熱残留物(VSS)の測定は、これらの試験の重要な要素です。

多くの場合、これらのラボは最大限稼働しており、排水試験用のガラス繊維ろ紙を準備するためにかなりの時間を費やしています。 Cytivaの研究開発チームは、分析担当者が、この試験に使用するフィルターの準備にどのくらいの時間を費やすか、そして事前に前処理を施された(準備が終わっている)フィルターを使うことで、どれくらいの時間が節約できるのか検証しました。

TDS、TSS、およびVSSはどのように測定されますか?

  • TDS:ろ液をスチームバスまたは乾燥オーブンで蒸発させた後に、蒸発皿に残った残渣の乾燥重量
  • TSS:フィルターで捕捉された粒子の乾燥重量、しばしば重量を測定し評価
  • VSS:フィルターに捕捉された粒子を550℃で強熱した後の質量損失

分析ラボはどの標準法に従っていますか?

米国、カナダ、シンガポール、およびラテンアメリカでは、分析ラボは米国のEPA標準法2540(パートC、D、およびE)に準拠しています。

TDSおよびTSSの測定に関して、EPA 2540パートCおよびDでは、フィルターをバインダー(結合剤)フリーのガラス繊維ろ紙にし、使用前に洗浄、乾燥、および2回秤量した際の質量減少の幅が0.5 mg未満であること示すことが必要です。 VSSについて、EPA 2540パートEでは同じ洗浄工程の後、乾燥の代わりにフィルターを550℃で強熱し、存在する全ての揮発性物質を除去します。

ろ液の重量測定によりTDSが測定され、一方でフィルターの質量増加によりTSSが測定されます。 TSS測定後に、フィルターを強熱することで、VSSが測定されます。

他の国では、EPA 2540 C/D/Eと同様の要件を持つEN 872規格(欧州規格)を使用するか、または2つの方法のうちのどちらかを適用します。 EPA 2540は、分析者が事前に前処理されたガラス繊維ろ紙を使用できると規定しています。EN 872では、フィルターは事前に洗浄および乾燥することができると述べており、工業的に製造された前処理済みのフィルターを試験に使用できる可能性を残しています。

研究開発チームはフィルターの前処理をどのように評価したでしょうか?

TSS分析ではしばしば吸引ろ過を用います。 EPA 2540試験では、ろ過の工程に少なくとも10工程が含まれ、そのうち5工程は前処理にあたります。

研究開発チームは、分析者が通常行う前処理手順を次のように模倣し、所要時間を記録しました。

洗浄

水溶性の物質を除去するために、20 mLの試薬グレードの水を使い3回連続でフィルターをすすぎます。放置しておくと、その後の重量測定の精度に影響を与える可能性があります。

乾燥

湿ったフィルターを103〜105℃、1時間乾燥させることで、水分が除去されます。その後、分析者はフィルターを放冷・秤量し、初期測定値を得ます。乾燥・放冷・秤量のプロセスをもう一度繰り返すことで2回目の測定値を得た後、2つの値を比較します。

この後の工程へ進むためには、EPA 2540では、2つの測定値の乖離が4%以内または0.5 mg以内である必要があります。乖離が基準より大きい場合は、水分が十分に除去されていることを確認するために、分析者は乾燥・放冷・秤量のサイクルを追加で実施する必要があります。

強熱残留物分析のためには、オーブン中で乾燥する代わりに、フィルターを550℃で15分間、炉内で強熱します。

デシケーター内で放冷する

デシケーターはフィルターが湿気を吸収することなくバランスのとれた温度に達することを可能にします。最終重量としては、0.1 mgの精度で、ろ過前のフィルターの質量が得られます。これで排水試験に使用するフィルターの前処理が終わりました。

前処理されたフィルターはどのくらいの時間を節約できるでしょうか?

米国のEPA標準法2540

EPA 2540パートDおよびEでは、これらの前処理工程は排水を正確に分析するために非常に重要です。研究開発チームが算出した、各工程に費やされた合計時間は、次の通りです。

  • 洗浄:1分
  • 103-105℃での予熱と乾燥:77分
    • 550℃での予熱と強熱処理:35分
    • 2回目の強熱処理:15分
  • 放冷および秤量(各2回):40分

合計:168分

水質試験を行う分析ラボでは毎日多数の試験が行われています。研究開発チームの調査によると、事前に前処理されたフィルターを使用することで、一連の試験において最大168分の節約が可能となります。

事前に前処理されたフィルターには他にどんな利点があるでしょうか?

これらの検討結果を踏まえ、Cytivaは標準法の要件に合わせるようにデザインされたReady-to-Use(RTU)フィルターを開発しました。この製品の利点は、分析にかかる時間が節約でき、節約した時間を追加の分析や他の作業に使うことができることです。

事前に前処理されたフィルターには下記のような利点もあります。

  • 一貫性:製造業者が製品の品質を管理するので、分析ラボでの洗浄と乾燥で起こりうるバッチ間または個人間のばらつきがなくなります。
  • 認証:前処理を施した製品は、標準法の要件を満たしています。
  • 利便性:CytivaのRTUフィルターなどのフィルター製品には、分析ラボのワークフローに合わせた様々な前処理が施されています。

分析ワークフローの中では、事前に前処理されたフィルターはどのように使用されるでしょうか?

各前処理済みフィルターは、その重量が表示されたアルミニウム製の皿に入っています。それぞれの皿にはバーコードが貼付けされているのでスキャンすることで、秤量データをダウンロードすることができます。

分析者はフィルターを吸引ろ過のファンネル上に置き、濡らした後に密封します。サンプルをろ過した後、10mlの試薬グレードの水で3回フィルターを洗浄し、それをアルミニウム皿に戻します。

103〜105℃で1時間乾燥した後、皿にのせてフィルターを放冷し秤量します。 TSSの質量は、皿に表示されている重さ(前秤量の測定値)と測定された重さの差となります。

VSS測定の場合、分析者はフィルターを550℃で15分間強熱し、放冷してから再度秤量します。 TSS測定と比較した際の質量の減少分がVSSを示します。

国内では、JIS K 0102工場排水試験方法の要件に沿って、RTU GF/Bガラス繊維ろ紙を準備しました。この製品は、洗浄・乾燥・放冷までの工程を製造段階で終えており、EPA2540、EN872のケースと同様に前処理工程に係る時間を節約することで、他の分析業務や作業にかける時間を捻出し、分析ラボの生産性を向上させることができます。

排水試験用のRTU GF/Bガラス繊維ろ紙の詳細については、「環境モニタリング用ろ過・ろ過システム」カタログをリクエストください。RTU以外のバインダーフリーガラス繊維ろ紙の製品情報は「こちらから」ご覧いただけます。RTUフィルターの使用に関するアドバイス、またはサンプルの要求については、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 


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