Biacore™ 1シリーズと8シリーズ共通のソフトウェア、Biacore™ Insight software ver.6に加わった3つの大きな機能をご紹介します。


加わった3つの大きな機能

  • Biacore Intelligent Analysis™のマシーンラーニングを利用した自動データ評価サポート
  • Data Integration ExtensionにAPIが搭載。SPRデータの完全自動統合
  • Inject and Elute機能 結合分子の回収機能

Cytivaでは近年図1で示されるようなボトルネックを解決するソリューションの開発を続けており、今回データ評価とデータ統合のステップで大きな機能追加(上記1、2)がされることとなりました。本記事では主にこれらの機能をご紹介いたします*)

*)3.Inject and elute機能はBiacore™ T200で搭載されていたInject and Recover機能と同等の機能ですが、現在の使用実績は中国での生薬研究で使われることがほとんどであるため、今回は割愛させていただきます

図1:ボトルネックを解決するソリューション

Biacore Intelligent Analysis™

今回の機能拡張により、これまでフラグメント化合物スクリーニングだけを対象としたマシーンラーニング自動評価機能だったのが、一般的なBindingスクリーニングやアフィニティースクリーニング解析まで対象になりました。とはいえ、これまでの機能をご存じない方も多くいらっしゃると思いますので機能と利点の全体についてご紹介します(図2)。

図2:Biacore Intelligent Analysis™の機能の全体像

Bindingスクリーニングのプロット(レポートポイント)は一見するとシンプルな数値データですが、そのもとになっているセンサーグラムには非常に多くの情報が含まれています。
熟練したBiacoreデータ解析者はセンサーグラムを見て実際に得られたプロットが信用に足るものなのかを判断します。この作業は、それ自体に時間がかかりますし、その判断する“目”を成熟させるのにも膨大な時間がかかったはずです。加えて、属人的な判断手法では解析者が変わるとその判断が異なってしまうリスクを含みます。
Biacore Intelligent analysis™ を用いた判断の一例を図3に示します。

これはセンサーグラム形状は各濃度で平衡値に達し、短時間で解離するような(化合物)ライブラリーを行った場合の例です。そしてもちろん特異的な結合であるためにはレスポンスはおおむね理論的Rmax以下であるはずです。Biacore Intelligent Analysis™ はすでにトレーニングされたアルゴリズムに基づいて、図3のようなセンサーグラム形状を理論的Rmaxより高い(Super stoichiometric)、短時間で解離しない(Atypical dissociation)、平衡値に達さない(Positive slope)と分類し、そのうえでトリアージとしては”Low quality”と判定します。

これらの事前にトレーニングされた判断アルゴリズムは日々のご利用の中でさらにその施設やプロジェクト等に最適化するように実際に取得したデータから追加のトレーニングを重ねることが可能ですし、また分類の項目を最初から作成・トレーニングすることも可能になりました。

上記はbinding スクリーニングにおける図2の「4. 分類とトリアージ」の例でしたが、Affinity解析へのサポートいついては、Outlier(外れ値)の削除やフィッティングに採用するレポートポイントの最適な位置(Affinity Range)、フィッティングのモデル(constant Rmaxモデルとfitted Rmaxモデル)の選択をして全体的なトリアージを提示します。

これらのことにより、bindingスクリーニングからaffinity解析まで、解析者が詳細な確認をする数を大幅に減らすことができます。

図3:Biacore Intelligent Analysis™を用いた判断の一例

Data Integration Extension

これまでのこのExtensionの機能ではデータをXMLやJSON形式で出力することが出来ましたが、操作はマニュアルでした。今回API(Application Programming Interface)が搭載されたことにより、解析・runデータを自動的にエクスポートすることが可能となりました。LIMSやELNそのほかのdata managementシステムへのデータの集約やその後の他科学データも含めたうえでの迅速なdecision makingに対するボトルネックを解消します。また多くのデータが必要になるAIのためのデータ集約に対しても待ち望んだ機能が搭載されました。

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