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マルチプレックス次世代シークエンシング(NGS)におけるDNAライブラリーノーマライゼーションのベストプラクティスなぜNGSライブラリーのノーマライゼーション(正規化)が必要なのでしょうか?また、どのように行うのがよいのでしょうか? ――本記事では、NGSライブラリーのノーマライゼーションの必要性、ライブラリーを定量化するためのベストプラクティスおよび磁気ビーズを用いたノーマライゼーションへの新しいアプローチを可能にする方法をご紹介いたします。 DNAノーマライゼーションとは?NGSにおいて重要なのはなぜか?NGSのノーマライゼーションは、サンプル調製のマルチプレックス化に対応してDNAライブラリー(の濃度のばらつき)を均等化するプロセスです。マルチプレックス法は、NGSのキャパシティ最大化に役立つ手法で、単一のフローセルでマルチプルライブラリーを解析することで(多くの場合、数千)、コストの削減が可能になります。 DNAシークエンシングコストが低くなり、リプロダクティブ・ヘルスやオンコロジーを含む一連の分子診断アプリケーションでNGS解析が採用され、世界中のさまざまな臨床研究の取り組みに応用されています。 基礎研究と臨床におけるNGS解析のいずれにおいても、「信頼性の高いデータを得る」ことが重要です。 しかし、異なる種類のサンプルや品質が異なるサンプルによってNGSライブラリーの濃度が不均一になると、データ品質のばらつき(inconsistencies)につながる可能性があります(図 1)。
高い濃度のDNAライブラリーはフローセル上で過剰に増幅される可能性が高く、低濃度のライブラリーの増幅は少なくなります。過剰増幅は必ずしも問題にはならないものの(リード深度が増える可能性があります)、キャパシティが無駄になります。過少増幅は、リード深度が少なくなり、データの信頼性が低くなります。また、出力容量が浪費され、貴重なサンプルが失われる可能性があります。 すべてのライブラリーが均等に増幅され、十分な深さまでシークエンスされることを確実にする上での「ノーマライゼーションの重要性」を示しています(図1)。 ライブラリーをノーマライゼーションする、しないの理由とは?(使用可能なサンプルがあると仮定し、)コストの観点から見ると、キャパシティが無駄になるということは、ライブラリーを再び準備するために追加の作業時間を費やすことになります。この時間は、二次解析や別のライブラリーの準備に使うことができます。 アプリケーションと結果の観点から見た場合は、潜在的に不正確なデータまたは不完全なデータかに基づく解析や導かれた結論はいたずらに研究結果を混乱させたり、何度も実験の再現性を確かめる必要を生じさせたりします。 最悪の場合、たとえば臨床医は、より適切な治療手段に導く可能性のあるまれな対立遺伝子(レア・アレル)や単一塩基変異(SNV)などの重要な情報を見逃す可能性があります。 ノーマライゼーションは、これらの課題に対処するのに役立ちます。 ノーマライゼーションの方法マルチプレックスDNAシークエンシングで使用される各ライブラリー調製物は、サンプルと濃度の両方の面でそれぞれ固有です。ライブラリーの最終濃度は、DNA抽出プロトコールおよび出発物質の品質と量に依存します。ノーマライゼーションによりこれらのライブラリーを均等化すると、一貫性と信頼性のあるNGSデータの生成に役立ちます。マルチプレックスシークエンシングワークフローのステップのいくつかにおいてノーマライゼーションの機会があります。DNAサンプルをプーリングする前に、インプットDNAの濃度、ライブラリー断片のサイズ分布およびライブラリープレップの濃度をノーマライズできます。 調製した各ライブラリーの濃度を確認することにより、クラスタリング効率、クローナル増幅、そしてプールされたライブラリー全体のリードの均一性に直接影響する可能性があります。そのため、標準プロトコールは、多くの場合、個々のライブラリー調製物を定量的にチェックし、プーリングする前に、等モル比にそれらを調製することが含まれます。 これにより、すべてのライブラリーがフローセル上で等しく増幅されるようになります。 NGSライブラリーを定量化する方法調製したライブラリーを定量化するには選択肢がいくつかありますが、それぞれ定量しやすさと精度が異なります。
ライブラリーの定量化とその後のノーマライゼーションの精度に影響する重要な要素の1つは、選択する定量法が、アダプターが結合した(つまり増幅可能な)二本鎖DNA(dsDNA)分子を特異的にカウントできるかどうかがポイントとなります。これらは、フローセル上でクラスター化し、シークエンス出力に寄与する唯一の分子です。 イルミナ社のベストプラクティスでは、ほとんどの場合、ゲノムDNAサンプルを蛍光定量またはqPCRベースの定量法を使用することを推奨しています。表1は、一般的な定量の方法をまとめたものです。
表1.ノーマライゼーションためのNGSライブラリー調製定量化の一般的なアプローチ qPCR:定量において「究極の精度」を提供興味深いのは、いずれの単一の方法だけでは、必要なすべてのデータをノーマライゼーションに十分な精度で提供できないことです。蛍光測定とqPCRは最も正確な定量が可能ですが、いずれの手法においても、さらに別の方法を用いて断片平均サイズを取得する必要があります。そのため、多くの場合、電気泳動で断片平均サイズを確認する必要があります。 これら蛍光測定とqPCRの2つの最も正確な定量法のうち、qPCRのみがアダプター結合分子を特異的に標的とすることができます。アダプター配列に相補的なプライマーを使用します。これらの実行可能なシークエンスで使用するテンプレートのみを定量化することで、ライブラリーを正確にノーマライゼーションすることができます。 アダプターのライゲーション効率は、個々のサンプルとバッチ間で異なります。 不純物や出発物質品質の違いの影響を受ける可能性のある酵素反応に依存しています。そのため、アダプター分子を非特異的に定量すること(蛍光測定法)は、シークエンスできるライブラリー濃度を過大に評価し、過剰に希釈する可能性が高いことを意味します。 とはいえ、出発物質が高品質で一貫しており、ライブラリー調製ワークフローの最終修複/アダプターライゲーションステップが効率的である場合、蛍光測定はより安価で、より速く、ほぼ正確なオプションになります。 ただし、定量において最大の精度を求めている場合は、qPCRが最適です。 代替法としての「磁気ビーズベース」のノーマライゼーションライブラリーの定量化のトラブルをまったく経験する必要がなかった場合はどうなりますか?もしライブラリーの定量化に何ら手間がかからないとしたらどうでしょうか? NGSサンプル調製のワークフローで「磁気ビーズ」が使われることが一般的になってきています。たとえば、磁気ビーズはサイズセレクション(NGSサンプル調製の別の課題)に既に使用されており、核酸を安全に処理するための信頼できる確立された方法を提供しています。 磁気ビーズをベースとしたノーマライゼーションの考え方は、一定量のビーズが一定量の核酸分子に結合できることです。つまり、各ライブラリーにおいてビーズを飽和させるのに十分な分子がある場合、本質的に等モル量のライブラリー断片が結合し、各サンプルから(磁気ビーズに)保持されます(図 2)。その後、すべての未結合分子は洗い流され、各ライブラリーはビーズ結合分子のみとなります。
(磁気ビーズには)特定の用途に合わせて利用可能な「コーティングオプション」がいくつかあります。たとえば、バッファー条件に基づいた一般的な非特異的結合のためのカルボキシルおよびシリカコートした磁気ビーズ; mRNAを結合するためのオリゴ(dT)コーティングビーズ;ビオチン化サンプルを結合するためのストレプトアビジンをコートしたビーズです。 磁気ビーズのアプローチはかなり簡便で、近年の研究では、ビーズベースのノーマライゼーションにより、(先に紹介した)既存のいくつかの定量ベースの方法よりも一定したリード深度が得られることが示されています。イルミナ社はこのアプローチをノーマライゼーションに活用し、NGSライブラリー調製で磁気ビーズを使用するためのトランスポゾンベースの「断片化(Tagmentation)」システムを展開しています。 しかし、各ライブラリー内の分子数はビーズの結合能力以上である必要があり、(結合しなかった)余剰分は破棄されてしまうので、ビーズベースのアプローチは(サンプルが)無駄になる可能性があります。 貴重なサンプルであったりまたは量が不足している場合、時間をかけてqPCRベースの定量を行ったほうがよい場合もあります。 ノーマライゼーションの方法を選択するためのベストプラクティスライブラリーのノーマライゼーションに「蛍光測定」を使用する場合:
ライブラリーのノーマライゼーションに「qPCR」を使用する場合:
ライブラリーのノーマライゼーションに「磁気ビーズ」を使用する場合:
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