Q フィッティングがかかりません!こんな感じです。どうすればいいですか?

センサーグラム形状

図1.センサーグラム形状

フィッティングをしたとき

図2.フィッティングをしたとき

A ブランクサイクルの再現性を見てみましょう。

さて、そう思った着眼点はどこにあるのでしょう?

このセンサーグラムを見たときにぱっと思うのは、結構きれいなセンサーグラムだけどなんか右肩上がりだなぁ。。。ということではないですか?特に添加前と300sec以降を見るとよくわかると思います。これらの時間帯はランニングバッファーがセンサーチップ上を流れているだけですので、レスポンスが上昇するというのは何かがおかしい?ということが言えるわけです。こんな時にはブランクサイクルの再現性を確認してみましょう。

ブランクサイクル(灰色)も含んだセンサーグラム

図3.ブランクサイクル(灰色)も含んだセンサーグラム

Biacore™の正確な解析のためには、リファレンスを差し引いたセンサーグラム(例えばFc2-1)をさらに、アナライト濃度を振ったセンサーグラムからアナライト濃度0のセンサーグラム(ブランク)を差し引くという処理をします。これは“ダブルサブトラクション”といわれる工程ですが、マウスクリックするだけだったりあるいはマウスクリックすらせずに自動的にこの工程をソフトウエアがしてくれたりするので、あまりこのステップをきちんとチェックしない方もいらっしゃるかもしれません。

図3.を見てみると矢印のあたりにある3つ“あるように見える”ブランクサイクル(灰色)のセンサーグラムの傾きが大きいものからだんだん小さくなって、3番目のブランクサイクルのベースラインはほぼアナライト添加(色付きセンサーグラム)と重なっているのが分かると思います。そしてこの矢印の先にある一本に見える3番目のブランクのセンサーグラムなのですが実は4番目のブランクのセンサーグラムをぴったり重なっている(再現性が高い)のです。

つまりこれは最初の3サイクルまでで実施したブランクサイクルの再現性が悪くて、それらを含めた全部で4つのブランク(の平均)をダブルサブトラクションしても右肩上がりのベースラインドリフトが残ってしまった、ということです。

それでは今回のデータでブランクの再現性が高い3番目と4番目のブランクサイクルだけを用いてダブルサブトラクションしたセンサーグラムをフィッティングの画像をお見せしたいと思います(図4)。

うーん、ほれぼれするようなきれいなフィッティングですね!
(この図の後に補足Tipsもあるので、よろしければ最後までお読みください)

再現性の高いブランクでダブルサブトラクションをしたデータでのフィッティング

図4.再現性の高いブランクでダブルサブトラクションをしたデータでのフィッティング

補足Tips

  • 今回ブランクとして”sample"サイクル中にアナライトの0濃度を4サイクル分添加するセットアップにしていますが、このようなサイクル毎の再現性を高める(安定化)するためのサイクルは、Biacoreのソフトウエアのコンセプト上は “Startup” サイクルの中で行われます。(どちらのsetupでも構いませんが、わずかなメリットデメリットがそれぞれあります)
  • マルチサイクルカイネティクス(MCK)の時にアナライト濃度を5濃度でうち1濃度はn=2にするのもこの再現性を確認するためです。(過去記事:Tips・FAQs 5濃度+0濃度、n=2?)シングルサイクルカイネティクスの(SCK)の場合には1濃度だけn=2にすることは不可能ですので、この再現性を確認するためにウイザード/メソッド テンプレートで0濃度が2サイクル分設定されています。
  • このようにブランクの再現性が悪くなるのは、アミンカップリングで固定化した直後のサイクルで起こりがちです。一般論としてキャプチャー法の方が安定するまでのサイクルは少なくなることが多いです。
  • このブランクの再現性は特に解離速度が遅い相互作用ではよりシビアに確認することをお勧めします。そのあたりのことは、過去記事の“この相互作用には気をつけろ!①”もよろしければご参考ください。