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ゲルろ過クロマトグラフィー担体選択のポイント

ゲルろ過クロマトグラフィー(以下ゲルろ過と略します)は、タンパク質をはじめとした生体分子の精製に広く用いられる手法です。抗体や組換えタンパク質精製の最終工程に使用されている方も多いのではないかと思います。 弊社へ寄せられるゲルろ過に関するお問い合わせの中では、カラムの選び方や、実際に分離を試したがなかなかうまく分かれない等の声が多く寄せられます。そこで今回は、ゲルろ過ついてのカラム選択法からトラブルシュートまでをダイジェストにてご紹介させていただきます。

ゲルろ過とは

ゲルろ過(Gel Filtration)とは、カラムに多孔性ゲルを充填し、分子ふるい効果により含まれる成分をその分子の分子量の差によって分離する液体クロマトグラフィーの一手法です。 ゲルろ過は、タンパク質やペプチド及び核酸や多糖類など生体成分の精密分離に用いられるばかりではなく、分子量測定にも広く用いられています。また、イオン交換クロマトグラフィー用サンプルの脱塩やバッファー交換、あるいは一部の製造の用途では最終精製品の成分調製などにも用いられることがあります。 ゲルろ過は、試料が溶液状態で分離しようとする成分の分子サイズに差があれば原理的には分離が可能であり、他の液体クロマトグラフィー手法よりも試料の適用範囲が広いことが大きな特徴です。ゲルろ過はサンプルの大きさによって分ける手法であり、分子量の大きなものから順番に溶出されます。

ゲルろ過原理図

高分離分画を目的とするゲルろ過

担体・カラムの選び方

実際にゲルろ過を行うにあたり一番はじめに行うのは自分のサンプルに最適なゲルろ過担体を選択することです。弊社ではSuperdex™、Sephadex™、Sephacel™、Superose™などのゲルろ過担体を販売しています。さらに分画範囲に応じて製品が細分化されています。担体の選び方は次の選択ガイドをご覧ください。

ゲルろ過担体選択ガイド

ゲルろ過担体にはそれぞれ分画範囲というものがあります。これは使用するカラムにおいて使用できるサンプルのサイズを示しています。よって目的サンプルの分子量分布がカラムの分画範囲の中に収っていることが必要です。 次に、目的サンプルの分子量分布とカラムの分画範囲が合っているものが複数選択肢にあるような場合にはどうすればいいでしょうか。この場合にはより分画範囲の狭いものを選択することを推奨します。これは同じサイズのカラムを使用した場合には分画範囲の広い担体と比較して狭い担体を使用したほうがより近接したサンプルを分離することができるからです(図1)。


図1.分画範囲の広いSuperose™担体とSuperdex™担体を使用した例
同じサンプルでも分画範囲が異なるカラムを使用すると分離パターンが変化することが確認できます。 サンプル1. フェリチン(440 kDa)、2.アルドラーゼ(158 kDa)、3. アルブミン(67 kDa)、5. オブアルブミン(43 kDa)、6.カーボニックアンヒドラーゼ(29 kDa)、7. リボヌクレアーゼ A(13.7 kDa)、8.アプロチニン(6.5 kDa)

実験上のご注意点

ゲルろ過では分子量の差が2倍程度ないと分離することができません。分子量に差があまりないような夾雑物を除きたい場合にはゲルろ過以外の手法を用いるべきです。また、ゲルろ過では添加できるサンプル液量が限定されることにも注意が必要です。一般的なゲルろ過では添加することのできるサンプル液量は使用するカラム体積の2~5%です。サンプル液量が多い場合には複数回に分けて実験を行うか、前処理として濃縮効果のあるイオン交換クロマトグラフィーや限外ろ過などでサンプル液量を減らします。添加するサンプル液量が多くなると分離パターンが悪くなってしまいます(後述トラブルシュート2を参照)。

グループ分画を目的とするゲルろ過

ゲルろ過では前述したような高分離分画とは別に脱塩やバッファー交換にも使用されます。この場合に使用されるのはSephadex™のような排除限界の大きな担体です。排除限界とはこの分子量より大きなサンプルは分離されずに、まとまって溶出される分子量数値です。この場合にはサンプル中に含まれるタンパク質など分子量の大きなものを塩などの低分子のものとを分離することができます。グループ分画で添加できるサンプル量は使用するゲル体積の30%です。サンプルが少量の場合には透析膜など用いるよりも簡単に脱塩の操作ができます。

トラブルシューティング

1.流速による影響

カラムへの送液が早い場合は、ピークトップの位置に変化はありませんが、ピークの高さが低くなりピークの幅も広がってしまいます(図2)。流速を早めただけでこのような分離の差が生じてしまうことがあります。カラムの推奨流速範囲内へ流速を下げる対処をおすすめします。

溶出パターンと流速
図2.溶出パターンと流速の関係

2.サンプル体積による影響

カラムへ添加するサンプル体積が多い場合、ピークの立ち上がりの位置は同じですが、ピークの幅が広がってしまいます(図3)。分離を向上させるには、サンプルの添加量を2~5%まで減らしてください。

溶出パターンとサンプル体積
図3.溶出パターンとサンプル体積の関係

3.サンプルが溶出されない

カラムが十分に平衡化されていない場合やサンプルと担体間の間にイオン的相互作用が生じている可能性があります。ゲルろ過ではバッファー組成は自由ですがイオン的な相互作用を防ぐ目的で50 mM以上のイオン強度を含むバッファーを使用します。150 mMのNaClが比較的よく使用されます。

ゲルろ過 おすすめサイト

ゲルろ過クロマトグラフィー
ゲルろ過関連製品へのリンク、技術情報などを集めたポータルサイトです。

あなたにもできる!ラボスケールカラムパッキング
プレパックカラムとして販売されていない担体やカラムサイズを使用する場合に、空カラムに担体を充填(パッキング)する方法をご紹介しています。

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