はじめに
Biacore™ Insight Softwareは、Biacore™ 1シリーズ、8シリーズ共通のソフトウェアですが、Biacore™ T200、S200のデータ解析も可能です。便利なレポートアウト機能や豊富な追加解析機能(Extension)があるため、Biacore™ T200、S200ユーザーの間でも使用される方が増えています。詳細は「Biacore™共通解析ソフトウェアご存じですか?」をご覧ください。
今回、Biacore™ T200/S200 Evaluation Softwareには無かった、痒いところに手が届くBiacore™ Insight Softwareならではの機能を紹介します。
Reference Settings
シリアルフローセル(Multi)でFc1,2,3,4などを用いて測定を行った場合、解析前にリファレンスセルを変更することができます。Fc3-2なども含め、大きな番号からの差し引きについてすべて対応可能です(Figure 1)。
- ブランクのFcとネガティブサンプルでブロッキングしたFcなど、2種類のリファレンスセルを設定して、アナライト毎に適切なリファレンスセルを選択したい。
- リファレンスセスの処理によるセンサーチップへの非特異結合の違いを比較したい。
Figure 1:Reference Settings
Biacore™ Insight Evaluation Softwareで、データを開いた後、HomeのPropertiesからReference Settingsができます。
Sensorgram typeからReference/Activeの切り替えが可能。
Sensorgramsから評価可能なセンサーグラムを確認。
Injection assignment
センサーグラムにおけるAnalyte (Sample)以外のInjection Commandを対象に解析を行うことができます(Figure 2)。
- Dual Commandを用いた解離のpH依存性評価について、1:1 dissociationによるフィッティング解析でkdを求めたい(Figure 3)
- 変数はCaptureの濃度だけれど、Analyte (Sample)のレスポンスを評価したい
- 変数はAnalyte (Sample)の濃度だけれど、Enhancement injectionのレスポンスを評価したい
Figure 2: Injection assignment
各Evaluation itemにおけるSettingsからInjection assignmentができます。
Use variable information from:解析時に使用する変数(濃度)
Use response values from:解析対象となるInjection Command部分
Figure 3:Dual Command を用いたADCs のpHに依存した解離速度の評価
細胞外(pH 7.4)、エンドソーム内(pH 6.0)の環境を模倣した二種類のpHで解離の違いを測定。
Initial values
フィッティング解析による初期値にDriftが追加されています。また、ほかのEvaluation Softwareと異なり、RIの初期値が0になっています。
- Drift:ベースラインドリフトは本来、0濃度(ブランク)サイクルで補正すべきですのでデフォルトではConstant 0になっています。もし、0濃度サイクルがきれいに取れず十分な補正ができなかった場合、変数として扱うこともできます。
- RI:溶液効果などの影響でアナライト添加前後に段差が残るケースがあります。通常はダブルサブトラクションで限りなく0に近い値となり、結合解離の速い箱形センサーグラムを誤評価することがあるため、デフォルトではConstant 0になっています。もし、段差部分がきれいに消えていない場合、変数に変えることもできます。
Figure 4:Initial values
各Evaluation - kineticsにおけるSettingsからInitial valueの確認・変更ができます。
DriftおよびRIについては、ランニングバッファーで適切に希釈されたアナライト溶液を用い、0濃度(ブランク)も設定がされていれば、基本的にはデフォルト(Constant 0)のまま変更する必要はありません。もし、十分なダブルサブトラクションができなかったセンサーグラムであっても、フィッティング結果を参照したい際は変数にしてください。
今回、Biacore™ T200/S200 Evaluation Softwareにはない、Biacore™ Insight Softwareの細かな機能に関してご案内しました。Biacore™ 1シリーズ、8シリーズのユーザーの方も是非ご活用ください。