ウェスタンブロッティング検出試薬 ECL™シリーズ選択ガイド
Cytivaが提供するECL™シリーズは、ウェスタンブロッティング検出における世界で最初の化学発光検出試薬です。15年以上の歴史の中、ECL™ Plus、ECL Advance™と発展を遂げ、最近では幅広い応用が期待される蛍光検出用試薬ECL Plex™を発売しました。
ここでは、個々のECL™シリーズ製品の特徴を比較し、どのような場面で異なるECL™シリーズ試薬を使えばよいかについて簡単にご紹介します。
実施しているウェスタンブロッティングの結果に満足していない皆さま、各ECL™試薬の特徴を掴むことで解決のヒントが得られるかもしれません。
【重要なお知らせ】
誠に勝手ながらECL™ Plus(RPN2132)は2011年12月、ECL Advance™(RPN2135)は2012年7月で販売終了となりました。
これまで長きにわたりご愛顧賜りありがとうございました。
今後は後継品、ECL™ Prime、ECL Select™がこれまで以上にお客さまのご期待にお応えしてまいります。どうぞご利用ください。
ECL™ Plusの後継品→ECL™ Prime
ECL Advance™の後継品→ECL Select™
ECL™シリーズ比較表
各ECL™シリーズ試薬の特徴
図1 ECL™の検出原理
ECL™ Western Blotting Detection Systemの特徴
ECL™シリーズのスタンダードとなる化学発光検出試薬です。ECL™反応は、フェノール環を持つ化合物などのエンハンサーの存在下でHRPによってルミノールが酸化されたときに起こります。これにより、光の放出が約1,000倍高まり放出時間も長くなります(右図参照)。
ECL™の検出感度は1 pgであり、一般的な発色法を用いたウェスタンブロッティングと比較して約10倍です。発色法と異なり、検出にHyperfilm™ ECL™のようなX線フィルム、またはImageQuant™ ImagerのようなCCDカメラが必要です。
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図2 ECL™ Plus/ECL Advance™の検出原理
ECL™ Plus Western Blotting Detection Systemの特徴
ECL™ PlusはECL™の上位試薬であり、ECL™に対して約20倍の検出感度が得られます。検出感度の他にも以下のような特徴をもち、その使い勝手の良さから日本ではECL™と同程度の利用者がいます。
- 発光持続時間が長い
ECL™ Plusの発光時間は最大24時間と、他のECL™シリーズ試薬と比較して化学発光の持続時間が長いです(ECL™:1~2時間、ECL Advance™:4~6時間)。反応から検出までの操作を余裕を持って行うことができるため、多検体の処理にも適しています。
- 蛍光検出が可能
ECL™ Plusを用いた検出反応時には、化学発光物質と同時に化学蛍光物質が生成されます。蛍光検出は定量性が高くバックグラウンドが低いことが特長です。
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ECL Advance™ Western Blotting Detection Systemの特徴
ECL Advance™はECL™シリーズの中で最も高い検出感度をもち、ECL™ Plusに対し最大10倍の検出感度を示します。抗体の使用量も少ないため、検出感度を求める場合だけでなく、貴重な抗体を用いている場合にも重宝します。
検出原理はECL™ Plusと同じですが(右図)、基質が異なるため蛍光検出はできません。
注意点としては、非常に高感度であるため検出条件の至適化が必須です(至適化についてのポイントは、次回にご紹介します)。また、非特異シグナルの検出を抑えるため非常に強力な専用ブロッキング剤を用いています。このブロッキング剤にはスキムミルクが含まれているため、リン酸化タンパク質の検出時には注意が必要です。詳細はバイオダイレクトラインまでお問合せください。
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図3 ECL Plex™の検出原理
ECL Plex™ Western Blotting Detection Systemの特徴
ECL Plex™は他のECL™シリーズとは異なり、蛍光ウェスタンブロッティングの検出に用いる試薬です。CyDye™蛍光色素(Cy2, Cy3, Cy5)で標識された抗マウス抗体、または抗ウサギ抗体が用意されており、同一レーンから複数の抗体反応を検出できます(蛍光多重検出)。
蛍光多重検出は幅広い応用性が特長であり、メンブレン(SDS-PAGE)上では分離が不十分なバンドであっても異なるシグナルとして検出できる他、二次元電気泳動と組み合せることでさらに多彩な解析ができます。
また、複数抗体の検出に際して抗体除去やリプロービングが必要ないため、これらの操作による手間や検出感度の低下を防ぎます。また、ECL Plex™では検出条件が至適化されており、蛍光検出の特長である定量ダイナミックレンジの広さが保たれています。
※蛍光検出の際には、低蛍光PVDFメンブレンであるHybond™-LFPの利用をおすすめします。
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関連情報
ECL™シリーズ試薬 検出感度・ダイナミックレンジの比較
ここでは、ECL™シリーズの検出感度や定量ダイナミックレンジについて比較しました。
サンプルとして5 ngから段階的に2倍希釈したヒトapotransferrinを各レーンに添加し、各ECL™シリーズ試薬で検出を行いました。
図4 至適化条件におけるECL™シリーズ試薬の検出感度比較
- サンプル:5 ngから段階的に2倍希釈したヒトapotransferrin
- 検出:Typhoon™(ECL Plex™)、Hyperfilm™ ECL™(その他)
- 一次抗体:rabbit polyclonal anti-human transferrin
- 二次抗体:ECL Plex™ goat-α-rabbit-Cy5(ECL Plex™)、donkey-α-rabitt IgG HRP-linked(その他)
検出感度 ECL™ < ECL™ Plus < ECL Plex™ = ECL Advance™
ECL™シリーズの中では、ECL Advance™が最も高い検出感度を示します。本データでは、ECL Plex™と検出感度に大きな差は見られませんが、一般的にはECL Advance™の方が高い検出感度を有します。
定量の直線性とダイナミックレンジ ECL™ < ECL Advance™ < ECL™ Plus < ECL Plex™
蛍光検出であるECL Plex™が最も高い定量性を示します。ECL™ Plusは反応が安定していることもあり、定量性は比較的高いです。他の化学発光検出についても、ImageQuant™のようなCCDイメージャーにより検出することで、さらに定量性を高めることができます。
抗体の経済性 ECL™ < ECL Plex™ < ECL™ Plus < ECL Advance™
ECL Plex™は検出限界感度は高いものの、一次抗体が比較的多く必要であることに注意してください。単に検出感度を求めるだけでなく、抗体を効率的に使用したい場合にも、上位試薬を用いる価値があります。
関連情報: 『他のECL™シリーズ試薬へ切替える際のポイント』
ウェスタンブロッティングで十分なパフォーマンスが得られない場合、皆さまはどうしていますか?
ご利用のECL™試薬から検出感度の高いECL™シリーズ試薬に移行することも、解決方法のひとつです。条件検討だけでは解決しないとお悩みの方は、「検出感度が高い手法へ変える際のポイント」をご参照ください。
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