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Location:Home実験手法別製品・技術情報タンパク質サンプル調製・前処理

第5章
サンプルスループットの向上/スクリーニングアプリケーション(1)

はじめに

サンプルスループットとは、処理するサンプルの数のことです。同時に処理するサンプルの数や、規定の時間内に処理するサンプルの数を指すこともあります。サンプルを同時に処理する場合、並行処理またはマルチ処理という用語が使用されることがあります。サンプルスループットの改善が必要な場合に使用できるさまざまな並行またはマルチサンプル調製手法があります。

手法概要

ラボでの作業効率化を図るうえで検討対象となる要素は多数存在しますが、並行処理によるサンプルスループットの向上も効率化の1つです。

フォーマット:フォーマットは、試薬の選択と同様、スループットに影響を及ぼします。フォーマットを正しく選択することで個々の操作の速度を改善できたり、ワークフローに組み込まれていたほかの操作を1つ省略できることもあります。さらに並行処理を可能にするラボ用機器(マルチピペット、遠心機など)や既存の自動化装置に適合したフォーマットであることが重要な要素となります。フォーマットの例としては、次のものが挙げられます。(i)液相操作に使用するチューブ、(ii)自然落下型カラム、スピンカラム、ピペットチップまたは96ウェルフィルタープレートに充填したクロマトグラフィー担体、(iii)フィルターカートリッジおよび(iv)磁気ビーズ/粒子。

自動化/ロボット化:ロボットの使用は 1、2、間違いなく、並行処理数と単位時間当たりのサンプル処理数の両面でスループットを改善するストラテジーとなりますが、ワークフローの自動化の導入は他にも理由があります。自動化により実働時間が短縮されるため、必要なスタッフ数を削減できますし、スタッフの時間を他の業務に割り当てることができます。さらに、プロセスを標準化する手段となり、そのことにより再現性が改善され、トレーニングや経験の必要性が減り、ラボ間の技術移管を改善できる可能性があります。

デザインに関する考慮事項と一般的な問題

スループットの改善を検討する場合、ワークフロー全体の分析から始めることをお勧めします。以下の質問項目から、前述した選択肢に基づいてワークフローデザインの概要をイメージして評価します。

  • 現時点でスループットの観点からボトルネックとなっているのはどのステップか。
  • 並行処理数および単位時間当たりのサンプル処理数の観点から、ワークフローには全体でどの程度のスループットが必要か。
  • スループット全体を、個々の操作レベルにどのように振り分けるか。何個のサンプルを並行して処理できるか。単位時間当たりのサンプル数は何個と予測されるか。これらを満たすにはどの程度の変動があるか。
  • 処理するサンプル量はどれだけか。

製品とプロトコール(1)

Cytivaは、スループット改善に適したタンパク質サンプル調製用の製品を多数提供しています。これらの製品は、96ウェルフィルタープレート(MultiTrap™)、スピンカラム(SpinTrap™)、磁気ビーズ(Mag Sepharose™)などのフォーマットに準じたものです。その中には、脱塩/バッファー交換に適した製品や、アフィニティーベースのタンパク質濃縮(タグ付き組換えタンパク質や抗体の小スケールのアフィニティー精製など)に適した製品もあります。さらに、MALDI分析のゲルスポット処理に使用するロボットシステムもあります。以下ではMultiTrap™プレートを取り上げ、またスループット改善とスクリーニングを目的としたMag Sepharose™の使用についても解説します。スピンカラムおよび手動で操作する磁気ビーズについては第3章で説明しています。これらの詳細については、注文情報にあるリストをご参照ください。

■Cytivaが提供するフォーマット

Multitrap 96ウェルフォーマットの概要

CytivaのMultiTrap™(図5.1)はready-to-useの充填済み96ウェルフィルタープレートです。このプレートを使用することで、スクリーニングと小スケールの並行サンプル調製が簡便化され、ウェル間およびプレート間の再現性の高い一貫した結果が確実に得られます。このフォーマットは既存のロボット化ソリューション(Tecan™ Freedom EVO™液体処理ステーションや同等のシステムなど)を使用した完全自動処理に適します。また、マルチチャンネルピペットと遠心機、またはコンピュータ制御された真空マニフォールドを組合せても、MultiTrap™プレートを処理できます。

図5.1
図5.1 ロボット化ワークステーションにセットしたMultiTrap™ 96ウェルフィルタープレート

自動化システムとともに使用するMag Sepharose™フォーマットの概要

磁気ビーズフォーマットは小スケールの実験に適した優れた特性があります。高密度のビーズは磁気デバイスによって速やかに回収され、またサンプルが自動的に濃縮されることから分析のシグナル強度が向上します。さらに、磁気ビーズを用いたプロセスはスケールを調整できるため、処理するサンプル容量の柔軟性が高まります。MagRack 6を使用すると、1.5 mlのチューブを最大6サンプルを調製できます。TiO2 Mag Sepharose™をMagRack 6とともに使用した例を 第3章で紹介しています。また、磁気ビーズプロセスはさまざまなプラットフォームで簡単に自動化できます。以下に示す例は、Tecan™のロボットシステムを使用しています。

■サンプルスループットの向上

PD MultiTrap™ G-25と遠心分離を用いた脱塩/バッファー交換

MSなどの分析を後のステップで行う場合や、 Biacore™システムを用いてタンパク質相互作用の研究をノンラベルで行うためには、タンパク質サンプルの脱塩が必要となることがあります。PD MultiTrap™ G-25を使用すると高い再現性と効率で脱塩を行え、一般に85%以上の高いタンパク質回収率が得られます。図5.2にこのプロセスの概略図を示します。以下に示す例では、BSAからのNaCl除去率は93%、ウェル間の変動の相対標準偏差(RSD)は1%でした(図5.3参照)。

図5.2
図5.2 PD MultiTrap™ G-25と遠心分離法を用いた脱塩/バッファー交換のフローチャート。この概略図はプレート上の単一のウェルを示しています。

図5.3
図5.3 PD MultiTrap™ G-25による脱塩後の電気伝導度測定。実験条件:サンプル=130 μl/ウェル、1000 μg/μlのBSA、1 MのNaCl。サンプルアプライ量=80~180 μl。平衡化バッファー=Milli-Q™水。ハイスループット手法=遠心分離法。検出法=電気伝導度測定。

 

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タンパク質サンプル調製ハンドブック目次5章 References略号と用語、記号解説


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