イメージングにおける光子収集の絶妙なバランス

生体分子の画像を取得する技術の本質は、光子を収集することにあります。サンプルからより多くの光子を収集することでより鮮明な画像が得られ、鮮明度の低い画像では見逃していたかもしれない微弱なタンパク質のバンドを検出できます。光子を多く収集することでシグナル・ノイズ(S/N)比が高くなり、定量の信頼性が高まります。

ECL™ Primeなど、化学発光をベースとした検出に用いる現在のECL™ 試薬は、酵素の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を触媒とするルミノール反応によって安定した高いシグナルを放出させます。蛍光ベースの検出では、CyDye™ フルオロフォアが業界標準であり、現在では可視光領域全体をカバーしています。中でも、最近中心的に使用されているのはAmersham CyDye™ 700/800近赤外(NIR)標識抗体です。現在、ゲノムシーケンシング企業は、遺伝子検査を目的とした次世代ゲノムシーケンシング(NGS)を公的および民間サービスとして提供しています。コスト効率と費用対効果を保持するために、これらの企業は高いサンプルスループットを維持し、1日に大量のNGSサンプルを処理し、シーケンシングシステムをフル稼働して大量のデータを得る必要があります。

最新のイメージャーには、サンプルから放出された光子を最大限検出するように設計された光源、検出フィルターおよびレンズが装備されています。収集する光子が多いほど良いのであれば、イメージングプロセスでいつ光子の収集を停止すべきでしょうか。最適な露光時間はどのようにすれば決められるのでしょうか。シグナルを最大限で検出するために画像キャプチャーの時間を長くすることはできますが、通常、検出したい(目的の)バンドが飽和しないような露光時間を設定します。

Wide range of fluorescence excitation and emission options

 
図 1.
Amersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャーでは、広範囲の蛍光励起オプションおよび発光オプションを使用できる。

ウェスタンブロッティングなどのアプリケーションで定量を行う場合、グレーの濃淡レベルでのみ構成される.TIFフォーマットのグレースケール画像が使用されます。イメージャーが生成した16ビットの.TIFファイルは、65,535のグレーレベルで表されています。過剰な光子を収集した場合、露光時間にかかわらず画像の最大ピクセル値は65,535に留まり、飽和となります。しかし、細部を観察して弱いバンドを検出するために、さらに多くの光子を収集したいと考えるかもしれません。では、この課題をどのように克服できるでしょうか。

Grayscale of TIF image

 
図 2. グレースケールの.TIFファイルは、さまざまなレベルのグレー階層で構成されている。16ビットのファイルは、8ビットのファイルよりもグレースケールのレベル数が多い。
 

画像最適化のためのSNOW検出

Amersham ImageQuant™ 800生体分子イメージャーにはSignal-to-Noise Optimization Watch(SNOW)と呼ばれる新しい撮影モードが導入されています。このモードでは長時間の撮影においても飽和せずに光子を収集できます。この技術は、基本的に飽和を避けて適切な露光時間で繰り返し撮影し、撮影したすべての画像を平均化して最終画像とするものです。細部がさらに見えやすくなり、線形ダイナミックレンジが拡大され、飽和が回避されます。

また、SNOWイメージングモードを使用すると、ユーザーはリアルタイムで画質の向上を確認でき、シグナル・ノイズ比がもっとも高い最良の画像に到達すると自動的に撮影が停止するように設定することができます。この機能により、画像を取得するときに試行錯誤を繰り返す必要がなくなり、分析のために多くの画像から1枚を選択するときに伴う不確実性がなくなります。

Amersham ImageQuant 800 CCD imager with SNOW imaging mode

 
図 3.
SNOWイメージングモード搭載のAmersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャー。

Amersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャーで自動のSNOWイメージングモードを開始するだけで、最適化された最終画像が表示されます。

この記事では、Amersham ImageQuant™ 800 CCD 生体分子イメージャーのユーザーがSNOW検出を活用して最高の画像を取得する方法を紹介しています。SNOW検出モードは、ウェスタンブロット上のタンパク質のECL検出と蛍光検出の両方で使用でき、また、ビニングの調整が可能なため高解像度が必須のきわめて難しいサンプルの画像の撮影も可能です。

化学発光検出でS/N比が2倍改善

Amersham ECL™ Primeは、きわめて安定したシグナル放出を特徴とする高感度の化学発光検出試薬です。SNOW検出モードと組み合わせることで、露光時間とシグナル・ノイズ比が改善され、高いバンド解像度が得られます。

SNOW and Auto mode comparison

 
図 4. メンブレンの撮影画像比較(ECL Primeを使用)。1枚のメンブレンをAutoモードで撮影後(7分、撮影1回目)、SNOWモードで撮影した(49分、撮影2回目)。メインバンドのシグナルのカウント数は両画像、約30,000だった。SNOWモード撮影画像の検出限界のバンドのS/N比は、はAutoモード画像の2倍であった。

Signal-to-noise improvement during SNOW capture using ECL Prime

図 5. SNOWモード撮影中におけるシグナル・ノイズ比改善の例(ECL™ Primeを使用)。

蛍光検出でS/N比が3倍以上改善

Auto versus SNOW with Cy3 detection of GAPDH

 
図 6. AutoモードとSNOWモードの撮影画像比較(Amersham ECLTM Plex CyTM3を使用してGAPDHを検出)。SNOWモードで撮影することにより、検出下限のバンドのS/N比が3.5倍改善された。Autoモードではバンドとして確認することは難しいが、SNOWモードではバンドの定量が可能になった。

近赤外域の弱いバンドを可視的に識別・検出

Amersham CyDye™ 700二次抗体(図8)は、波長700nmで発光する近赤外蛍光色素で標識されています。

Additional bands detection with SNOW mode

 
図 7.
HDAC1のIR-short検出で示したように、標準の自動キャプチャー設定では検出できなかった追加バンドをSNOWで検出することも可能。ラインプロファイルに見られるように、ノイズは明らかに改善されている。

Excitation and emission spectra of  CyDye 700 secondary antibodies

 
図 8. Amersham CyDye™ 700二次抗体の励起スペクトルおよび発光スペクトル。

弱いシグナルの検出でもきわめて高い直線性を実現

Auto mode versus SNOW mode of a calibrated light source

 
図 9. 校正済み光源からの光(1 pW、10 pW、100 pW、1000 pW)をAutoモード(1秒;左上の画像)とSNOWモード(27秒;左下の画像)で検出した画像の比較。両方の画像でダイナミックレンジ全体にわたり線形性はきわめて良好であるが(k=1.01)、SNOW画像のノイズレベルは自動画像のほぼ4分の1である。

ノイズを低減させて弱いタンパク質シグナルを検出

Detecting weak bands with greater confidence

 
図 10. Amersham宿主細胞由来タンパク質(HCP)DIGEメンブレン。CHOライセート(50 μg)およびCyTM3を使用したK1コントロールタンパク質(1:200希釈)の検出。Autoモード画像は1.5秒、SNOWモード画像は2分29秒で、ともに1×1ビニングで取得した。SNOWモードではノイズレベルが大きく改善されており、より高い信頼性で弱いバンドを検出できる。

ノイズを低減させ、強いシグナルと弱いシグナルを飽和なしに検出

Comparison of auto IR-short image and SNOW captured

 
図 11. Autoモード(0.1秒)で取得したIR-short画像(A1、A2)とSNOWモード(17.7秒)で取得したIR-short画像(B1、B2)の比較。画像A1およびB1のコントラストは花の中央の強いシグナルが見えるように設定し、画像A2およびB2のコントラストは白色の舌状花が見えるように設定した。SNOWモードでは、ダイナミックレンジが広いため、弱いシグナルと強いシグナルの両方を同じ画像に取り込むことができる。
 

フルスペクトルにわたる高解像度イメージング

Amersham ImageQuant 800 imager allows high resolution imaging across the entire visible spectrum

 
図 12. Amersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャーを用いた紫外域から赤外域までの波長における高解像度のイメージング。ヒナギクBellis perennisには多数の黄色の管状花と白色の舌状花がある。UV、Cy™2、Cy™3のLED・フィルター設定で観察すると、中央の未開花の管状花と異なり、開花した管状花は特徴的な蛍光を発光している。重ね合わせ画像では、開花した管状花は約0.5 mm幅のピンクのドットに見える。Amersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャーを1×1ビニングで使用することで、このようなミリメートル以下の細部を明確に解像できる。

結論

SNOW検出モードは、安定した化学発光シグナルが長時間得られる検出試薬(Amersham ECL™ Primeなど)とともに使用すると、飽和せずに弱いシグナルを検出できるきわめて有用な方法となります。蛍光検出の場合にも、この新しいモードは飽和せず高い感度と高い解像度で撮影するために役立ちます。Amersham ImageQuant™ 800 生体分子イメージャーを使い、SNOWモード検出を行うことで、シグナル・ノイズ比が高くなって画質が改善し、生体分子研究において正確な定量を行うことができます。