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ヒトおよび動物の遺伝子治療用プラスミドの精製
プラスミドDNA

ワクチンおよびベクターの精製技術 - 目次


遺伝子治療

遺伝子治療は遺伝子レベルでの疾患の治療を目的としています。遺伝子は細胞に送達され、そこで問題の疾患に効く治療用タンパク質またはペプチドを発現します。プラスミドDNA複合体は運搬手段(ベクター)として使用され、標的細胞まで遺伝子を送り込みます。

臨床用プラスミドDNAは厳密な純度要件を満たす必要があります。市販する場合、GMP適合の製造方法に従った精製方法を採用する必要があります。

精製ストラテジー

遺伝子治療に用いるには、バクテリア由来の染色体DNA、RNA、タンパク質およびエンドトキシンを除去するだけでなく、プラスミドDNAのスーパーコイル構造を維持しなければなりません。さらに、精製担体およびプロセスは、費用対効果が高い大量製造へ円滑に移行できるものである必要があります。プラスミドDNA製造で最も一般的な宿主は大腸菌であるため、プラスミドDNA以外の核酸、エンドトキシンおよび微量の混入物質の除去が実際の課題となります。

方法によっては、経済性や処理能力の面で大量精製には適しません。製造スケールで採用できない技術を用いて精製した物質でも第I相試験では用いることはできますが、第II相/第III相試験では確実にスケールアップ可能で経済的な技術が要求されます。ろ過やクロマトグラフィーは完全にスケールアップ可能で、経済的かつcGMPに適合しています。しかし、この場合はプラスミドのサイズを考慮したプロセスの選択に注意を払う必要があります。

精製プロセス

治療用として採用されるには、どのスケールでも極めて純度の高いプラスミドDNAを製造できることが欠かせません。ここに記載した3ステップ精製は、ラボスケールで開発し、カラムの直径と膜面積を大きくしてパイロットスケールに移行した例です。コピー数の高いプラスミドを含む培養大腸菌を出発原料としています。集菌後、アルカリ溶解を行い、遠心して清澄化します。パイロットスケールでは、清澄化したライセート(溶解液)をホローファイバー限外ろ過カートリッジで5倍に濃縮します。

図6はプロセスフロー図を、図7はクロマトグラムを示しています:1)Sephorose 6 Fast FlowによるRNA除去およびバッファー交換、2)open circular(oc)プラスミドDNAを含む産物からのスーパーコイル構造をとったcovalently closed circular(ccc)プラスミドDNAのPlasmidSelectによる選択的な分離、3)SOURCE™ 30Q陰イオン交換クロマトグラフィーによるエンドトキシン除去およびポリッシング。いずれのステップもÄKTApilotシステムを用いることができます。精製プラスミドの最終濃縮およびバッファー交換は限外ろ過で行います。

プロセスの流れ
図6. 清澄化ライセートを出発原料とする3-ステップクロマトグラフィープロセス

クロマトグラフィーデータ
図7. 主要な分離は第2工程で実施。PlasmidSelectによりsupercoiledプラスミドDNAとopen circularプラスミドDNAおよび残留のゲノムDNAやRNAなどの残存不純物を分離。oc = open circular、ccc = covalently closed circular

表2はパイロットスケールで得た精製データの一覧です。この結果からも、本プロセスで高純度のプラスミドDNAが得られ、プラスミド治療に関するcGMP規制要件を満たしていることがわかります。回収率もまた高いことがわかりました(表3)。

最終産物の品質データ
表2. パイロットスケールにおける最終産物の純度

ステップと回収率の表
表3. パイロットスケールにおける精製ステップごとの回収率(A260を用いて算出)

コメント

このパイロットスケールプロセスにより、極めて純度の高いプラスミドを大量に製造することができます。堅牢性があり、経済的で、完全にcGMPに適合しており、そして実製造へのスケールアップも容易です。

なお、精製に使用した3種の担体は、詳細なプロトコールも付属するSupercoiled Plasmid Purification Starter Packとしてご用意しています。このパックで、遺伝子治療水準のsupercoiledプラスミドDNAを1サイクルあたり約10 mg精製が可能なので、cGMP製造への第一歩として最適です。そこまでの純度が必要ない用途の場合には、このプロセスから1~2つのクロマトグラフィー工程を省略することができます。純度はそれほど高くありませんが、グラムあたりのコストは低くなります。

製品写真
Supercoiled Plasmid Purification Starter Packでは遺伝子治療水準のsupercoiledプラスミドDNAを1サイクルあたり約10 mg精製できます。パックに含まれている担体(Sepharose™ 6 Fast Flow、PlasmidSelectおよびSOURCE™ 30Q)はプロセススケールでも入手可能であり、cGMP製造へのスケールアップができます。

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