Dr. 近藤のコラム 2D-DIGEの熱い心
「二次元電気泳動は何をみているのか?」(3/3ページ)
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別の視点からデータベースのデータを眺めると
まったく逆の考え方として、多くの研究者が使う方法を敢えて使わないことで、普通は観察されないプロテオーム分画を調べるという戦略もある。2D-DIGE法では観察できないはずの697個のタンパク質(3.43%)を集中的に調べる方法を思いつけば、2D-DIGE法を使う研究者に対して技術的なアドバンテージをもつことができる。等電点が4以下(23個、0.12%)あるいは10以上(719個、3.8%)、分子量が10 kDa以下(436個、2.3%)あるいは200 kDa以上(499個、2.7%)のタンパク質などは種類が少ないので、その領域に限ってすべてのタンパク質を調べにいくのも独自性を出す目的では有効なアプローチだろう。これは電気泳動のフォーマットを変えれば簡単に実施できる。数が少ないのだから分離能の高い二次元電気泳動法は要らないかもしれない。前分画の実験にしても他の研究者が今まで試していない切り口で分画実験を行うことはそれほど難しいことではなく、しかも誰も観察していないプロテオーム像をとらえることができる。
最後に
プロテオーム解析のために二次元電気泳動法を使用する場合にはゲノム情報を有効に活かしたアプローチを考えたい。タンパク質同定にしかゲノム情報を使用しないのはもったいない。今回はタンパク質データベースの情報を使った考察だったが、この他にも翻訳後修飾を受ける可能性のあるタンパク質のデータベース、特定の配列を共有するタンパク質のデータベースなどからもおもしろい考察を行うことが可能だろう。どのようなフォーマットの二次元電気泳動法がもっとも目的にかなっているかを考える上で、タンパク質データベースは有効なツールになりうる。
筆者は2D-DIGE法を基盤とするプロテオームデータベース、GeMDBJ Proteomics、の構築を行っている。データベース構築を目的とし、全スポットのアノテーションを目指してLC-MSMSでスポット同定を行っている。計算では今のペースだと2009年中に同定スポット数は10,000個を楽に超える。このような情報量をもった二次元電気泳動データベースは過去に例がない。同定結果はインターネット上で無料公開する。とりあえず今年の日本分子生物学会までに追加で1,000スポット以上の同定情報、100検体以上の臨床検体の2D-DIGEデータを公開する。これも無料。GeMDBJ Proteomicsをもとにヒトプロテオーム像の議論ができるようになる日は近い。乞うご期待。
近藤 格
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