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DIGE 道場 第5回
実は簡単、グラジエントSDS-PAGEゲルの作製

第5回 もくじ

  1. はじめに
  2. 失敗しないDS-PAGEゲル作製法のポイント (本ページ)
  3. グラジエントゲルの作製法
  4. おわりに

Dr. 近藤のコラム
→コラム第5回 「大型スキャナー“ハリケーン”は来るのか?」

2. 失敗しないSDS-PAGEゲル作製法のポイント

SDS-PAGEゲルがうまくできないということからAPSやTEMEDの濃度について質問されることがある。しかし、聞いてみるとたいていの場合は筆者のラボと同じような組成で実験が行われている。実は組成はそれほど重要ではないようである。なぜ同じ組成で実験をしてもうまくいかないことがあるのか。

ポイントは3つある。

ポイント1:ゲル溶液の温度

一つ目のポイントは、ゲル溶液の温度である。論文やプロトコール本に書かれているAPSやTEMEDの濃度は、おそらくゲル溶液の温度が室温であることが前提で決められている。一方、アクリルアミド溶液やバッファーは作成したてのものでなければ冷蔵庫で保存されているだろう。4℃の冷蔵庫から出してすぐにゲル溶液を作成しSDS-PAGEゲルを作成すると、ゲルの大きさやAPS/TEMEDの濃度にも依存するが、かなり高い確率でゲル作成に失敗する。APSやTEMEDによる重合はゲル溶液の温度と関係するからである。溶液の温度が十分低くてもうまくいくようにAPS/TEMEDの濃度が高く設定されている場合は別かもしれないが、その場合は逆に室温だと重合が速すぎて失敗することがあるかもしれない。

この問題を解決するために、筆者のラボでは、ゲル作成に使うアクリルアミド溶液やバッファーなど一式を、ゲル作成の前日に冷蔵庫から出しておくことにしている。一晩かけて室温に戻すためである。まったく同じ組成のゲル溶液で実験をしていても、あるスタッフはなぜかうまくゲルをうまく作れないという問題が以前あったのだが、このようにすることで解決することができた。つまり彼は冷蔵庫から出した溶液を使って午前中にゲルを作成していたのである。冷たい溶液を湯煎で温めてから使うという方法も考えられないこともないが、ゲルを作成する過程でお湯の温度から室温に向けて変化する溶液の温度を再現性よくコントロールできないので、ゲル溶液を温めることはお勧めしない。ゲルが小さいとゲル溶液はすぐに室温になるので温度の問題はあまり意識されないことがあるかもしれないが、Ettan™ DALTtwelveサイズでは重要になってくる。

ポイント2:脱気操作は必要ない

二つ目のポイントは脱気操作である。ゲル溶液は脱気しないといけないと記載されているプロトコールがある。迷信である。試薬の品質か何かの問題で脱気が必要な時代があったのかもしれないが、何千枚もゲルを作成した経験からすると必要ない。脱気をすることによってゲル溶液の温度は低下し容量も変化するのでしない方がよい。脱気すると必ず失敗するというものではないが、脱気しなくてもまったく問題はない。

ポイント3:ガラス板は清潔に

三つ目のポイントはガラス板の管理である。ゲル溶液をガラス板の間に注ぎこむときに小さい泡が発生することは避けられない。きれいに管理されたガラス板を使っている場合、発生した泡はするすると上方に抜けていく。ゲル溶液の上端に達した泡は、後に重層することになるブタノール溶液でつぶされてなくなってしまうので問題にならない。一方、ガラス板をふだん素手で触ったりしていると泡がガラス板のどこか一ヶ所に留まってしまい、そのまま重合が進むので気泡を含むゲルができてしまう。おそらく手からガラス板へ移った脂や汗などのためだろう。

この問題がやっかいなのは、実際にゲル溶液を注いでみないとそのガラス板に問題があることがわからないことである。普段からルールを決めて素手ではガラス板を触らないようにすることが重要である。ルールがラボ内で徹底できない場合はガラス板の共有は避けた方がいい。

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