磁気ビーズって何が良いの???
~Mag Sepharose™によるアフィニティー精製の利点~
磁気ビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィー精製は、ゲル担体を用いた精製時と同じプロトコールによって、より効率的にサンプルを回収することができる非常に優れた技術です。ここでは、その磁気ビーズ(Mag Sepharose™)の性質について詳しくご紹介していきます。
磁気ビーズ “Mag Sepharose™” って何???
Cytiva製磁気ビーズであるMag Sepharose™は、各種Sepharose™に包まれるようにして磁石が中心に存在します(図1参照)。写真の黒い部分が磁石であり、周りに薄く見える透明の膜表面に各種Sepharose™が存在しています。このように、Mag Sepharose™は名前のとおり、「磁石の性質をもったSepharose™担体(ビーズ)」なのです。
図1 Mag Sepharose™の顕微鏡画像
磁気ビーズを用いる利点は???
Protein G Sepharose™のようなゲル担体を用いたバッチ精製では、洗浄時に溶液が残ったり、逆にゲル担体を吸い上げてしまったりするリスクがあります。一方、Mag Sepharose™は、磁力を利用してビーズを壁面に集積させることができるため(図2)、 “サンプルロスを抑えて溶液交換ができる” のです。また、遠心操作の必要がないことも操作を手軽に行える理由のひとつになっています。
(操作の流れについては、こちらの動画でもわかりやすくご覧いただけます)
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図2 壁面に集積するMag Sepharose™
左:インキュベーションによりMag Sepharose™は溶液中に広がっている状態
中央:ラックにマグネティックバー(白い棒)を差し込んでいるところ
右:磁気を持ったマグネティックバー側にMag Sepharose™が集積
つまり、磁気ビーズによるバッチ精製は洗浄効果を高める他、少ない溶液量(濃縮された状態)でサンプルを溶出できることが利点です。
プロトコールは、Sepharose™担体でのバッチ法とほとんど同じ
操作の流れはまったく変わりません
図3ではProtein G Mag Sepharose™(またはProtein A Mag Sepharose™)を用いた免疫沈降プロトコールを示しています。
図3 Mag Sepharose™を用いた免疫沈降の流れ
- 抗体をビーズに結合させる ※抗体の溶出を抑えたい場合にはクロスリンクプロトコールを用いる
- 抗体に目的タンパク質(複合体)を結合させる
- 不純物を洗浄する
- 目的タンパク質(複合体)を溶出
実際にProtein G Sepharose™やProtein A Sepharose™、NHS Sepharose™を用いたリガンドカップリングカラムを利用している皆さまには、ゲル担体を用いる場合と同じ手順で操作を行えること、高い結合性をはじめとするSepharose™の利点や特性がMag Sepharose™では保たれていることから、ほとんど実験条件を再検討することなくMag Sepharose™での精製を行うことができます。
Mag Sepharose™ アプリケーション例
下図4は、薬物処理によるチロシンリン酸化タンパク質の変動解析例(2-D DIGE解析)です。リン酸化タンパク質濃縮前(左のゲル写真)に比べ、抗チロシンリン酸化抗体を結合させたProtein G Mag Sepharose™によってリン酸化タンパク質を分画することで、多くの変動タンパク質を検出することができました。
図4 薬物処理によるリン酸化タンパク質の変動
左:リン酸化タンパク質濃縮なしでの2-D DIGE解析
右:抗リン酸化抗体を用いた濃縮後の2-D DIGE解析
リン酸化タンパク質の濃縮を行うことで、より多くの変動タンパク質スポット(緑、赤で示されるスポット)を検出することができました。
※そのほかにも、Mag Sepharose™の使用例がデータファイルに掲載されていますのでご参照ください。
まとめ
Mag Sepharose™を用いることで、簡単な操作で濃縮された目的タンパク質を回収することができます。特に、Sepharose™担体を使ったバッチ法精製を行っているお客さまにとっては、プロトコールをそのまま流用してもリスクが少ないため安心してお使いいただけます。数µl~数十µl程度の少量サンプルの精製にお役立てください。
※Mag Sepharose™での精製には磁気ラック(MagRack 6, コード番号:28948964)が必要です。他社製の磁気ラックもご利用いただけます。
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