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ウェスタンブロッティング こんなときどうする?(2)シグナルが検出できない

ウェスタン担当者
回答:ウェスタンブロッティング担当

ウェスタンブロッティングでバンドが検出できない、シグナル強度が得られない、というご質問をよくいただきます。この場合、ウェスタンブロッティングのさまざまなステップに原因がある可能性があります。今回は、シグナルが現れないという問題点について、ステップごとにQ&Aを考えていきます。

まず、タンパク質サンプルがメンブレンへ転写されていない場合、その後のステップをどんなに検討してもシグナルは得られません。転写に原因があるかどうか判断する場合は、有色マーカーを使用してゲルからメンブレンへの転写効率を確認することが効果的です。 もし、マーカーがメンブレンに転写されなかった場合、ゲルとメンブレンのセッティングが逆になっていないか確認してください。ゲルがマイナス側、メンブレンがプラス側です。

セッティングに問題がない場合は、ブロッティング時の電圧の状態を確認します。電圧が高い場合や不安的な場合は、ろ紙の湿らせ方が不十分で乾燥していたり、ろ紙の枚数が不足している可能性があります。 電圧が安定している場合は転写条件(転写バッファー、転写時間など)の検討が必要となります。

転写バッファーはTris、グリシン、メタノール、(SDS)などがベースとなったTowbinバッファーがよく用いられます。 そのうち、メタノールとSDSは、転写するサンプルに応じて濃度を検討してください。 メタノールはメンブレンとタンパク質との結合能力を高めます。反面、高分子のタンパク質がゲルから溶出しにくくなります。特に低分子のタンパク質は、メタノール濃度を上げると転写効率が上がる傾向があります。通常PVDFでは15%以下、ニトロセルロースでは20%以下で使用します。SDSは高分子のタンパク質をゲルから溶出させる目的で使用します。ただし、メンブレンへの結合が低下するため、ターゲットたんぱく質が高分子の場合に0.1%以下で加えます。

メタノールやSDS濃度を検討しても、十分な結果が得られなかった場合、 メンブレンとゲルを挟む上下のろ紙に含ませるバッファーのpHや塩濃度に変化をつける不連続バッファー系によっても転写が改善することがあります。 タンパク質の大きさによって至適な転写時間は異なります。高分子のタンパク質の方が転写に時間がかかる傾向があります。有色マーカーを用いて、ターゲットタンパク質に近い分子量のマーカーがメンブレンに転写されているか確認し、転写時間を検討してください。

抗原抗体の反応性に由来することもあります。泳動前のSDS還元処理によって抗原性が低下することがあるため、SDS還元処理前後のサンプルを比較して抗原性が低下していないか調べます。また、抗体の力価によって使用する抗体濃度を検討する必要があります。抗原性や抗体濃度の検討には、ドットブロットが簡便で便利です。

また、検出試薬の劣化も考えられます。劣化しているかどうかはHRP標識の二次抗体をメンブレンに直接ドットブロットして、上から検出用基質をかければ確認できます。また、アジ化ナトリウムはHRPの活性を阻害しますので、バッファーには加えないでください。

表1 シグナルが現れない場合の対処法

  原因 解決策
サンプル調製
電気泳動
  • 抗原性の低下
抗体反応性の確認
SDS還元処理などにより、サンプルの抗原性が低下していないかドットブロット法で確認
ブロッティング
  • ゲルとメンブレンの密着性(気泡)
  • PVDFメンブレンの親水化
  • 電極の向き
  • 転写時間・電流・転写バッファー
有色マーカーで確認する
Rainbow™ Molecular Weight Markersなどの有色マーカーを一緒に流して電気泳動の状態、ゲルからメンブレンへの転写状態を確認。
ECL DualVue™ Western Blotting MarkersならECL™で化学発光検出も可能です。
転写バッファーを検討する
メタノール濃度とSDSの濃度を検討
抗体反応
  • 抗体濃度が低い
  • 抗体の力価の低下
抗原性の低下
抗体の希釈率をドットブロット法で検討
抗体の溶液中に活性を阻害する物質(アジ化ナトリウム)が入っていないか確認
検出試薬との反応
  • 検出試薬の劣化
検出試薬の活性確認
HRP標識抗体のドットブロット法を試して試薬の活性を確認
検出    

 

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