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ウェスタンブロッティング こんなときどうする?(4)定量性をより高めるためのポイント

ウェスタン テクニカル担当者
回答:ウェスタンブロッティング担当

ウェスタンブロッティングは、特定のタンパク質(群)の発現量を確認するためのスタンダードな手法として用いられていますが、転写や抗体反応など実験ステップ数が多く、定量性を保つことが難しい技術といえます。各ステップごとでの細かい操作や注意を払うことで、より定量性を保った状態で検出が可能です。

【重要なお知らせ】

誠に勝手ながらECL™ Plus(RPN2132)は2011年12月、ECL Advance™(RPN2135)は2012年7月で販売終了となりました。
これまで長きにわたりご愛顧賜りありがとうございました。
今後は後継品、ECL™ Prime、ECL Select™がこれまで以上にお客さまのご期待にお応えしてまいります。どうぞご利用ください。

ECL™ Plusの後継品→ECL™ Prime
ECL Advance™の後継品→ECL Select™
ECL™シリーズ比較表


定量性を保つための基本的な操作ステップとポイント

定量性を保つための基本的な注意事項を表1にまとめました。

表1 各ステップにおける定量性を保つための基本的な注意事項
  定量性を高めるためのポイント
サンプル調製
電気泳動
  • ポジティブコントロールを泳動し検量線を作成できるようにしておく
  • 反復実験を行う
  • 比較するサンプルを同じゲルに泳動する
転写
  • レーンの位置によって転写効率に差がないかを確認する
    (濃度既知のポジティブコントロールゲルの両サイドに置く)
  • 比較するサンプルとポジティブコントロールを、同じメンブレンに転写する
抗体反応
  • モノクローナル抗体を使用する*
  • 蛍光標識二次抗体の使用
  • 抗体濃度の最適化
検出試薬との反応
および検出
  • 検量線作成からの濃度算出
  • CCDカメラ、蛍光スキャナーの使用

泳動ステップ

  • 目的タンパク質を簡単に用意できる場合にはポジティブコントロールを泳動しましょう。アプライ量を5段階程度に希釈して検量線を引けるようにしておきます。アプライ量は目的タンパク質の含量を考慮して決定しましょう。
  • 再現性をとるために、反復実験は必ず行います。希釈系列をつくっても構いません。
  • サンプル間での比較を行う場合は、泳動ゲル間での誤差を無くすため同一のゲルに泳動しましょう。

転写ステップ

  • Rainbow™ Markersのような有色マーカーやポジティブコントロールによって、ブロッティング機器の転写効率にムラがないかを確認しましょう。特に黒板のセミドライ式ブロッターでは、使用劣化により湾曲することがあるため念入りに確認する必要があります。あらかじめ確認しておくことはもちろんですが、サンプル泳動の際にも必ずこれらを一緒に泳動・転写します。レーンの両サイドに同量の有色マーカー、あるいはコントロールサンプルを泳動しておけばよいでしょう。
  • 泳動ゲルと同様、メンブレン間の誤差を無くすため同一処理を施した同一メンブレンに比較したいサンプルを転写しましょう。

抗体反応ステップ

  • できるだけモノクローナル抗体を使用します。一般的に、認識部位が一箇所であるモノクローナル抗体を使用する方が定量性が高いと言われています。複数の認識部位をもつポリクローナル抗体では、タンパク質構造によって結合に影響がでます。ポジティブコントロールやサンプル間でタンパク質構造が完全に状態が同等でない場合には、定量性に誤差が生じる可能性があるため注意が必要です。モノクローナル抗体が手に入らない場合、感度を追求する場合にはポリクローナル抗体を用いるしかありませんので、定量性の高いデータが得られるよう十分な検討が必要です。
  • 抗体濃度を最適化することで、定量性を高められます。過剰な抗体添加はバックグラウンドシグナルを高め、定量解析の妨げとなります。バックグラウンドの低下については、下記コンテンツをご参照ください。
    → ウェスタンブロッティング こんなときどうする?(3)バックグラウンドが高い
  • ECL Plex™のような蛍光標識二次抗体を使った検出では、幅広い範囲にわたって定量性を保つことができます。ECL™などのホースラディッシュペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼによる酵素反応をともなう検出方法では、弱い光の蓄積になるため、定量ダイナミックレンジが低くなる傾向があります。(補足データ2をご参照ください)
    → 補足データ1 化学発光検出と蛍光標識二次抗体を用いた検出の定量ダイナミックレンジ比較

検出ステップ

補足データ

補足データ1 化学発光検出と蛍光標識二次抗体を用いた検出の定量ダイナミックレンジ比較

ECL™ Plus, およびECL Advance™による化学発光検出と、蛍光標識二次抗体であるECL Plex™を用いた蛍光検出の定量ダイナミックレンジを比較した結果を表、図で示しました。

ECL™ Plus, およびECL Advance™ではダイナミックレンジが2.4に留まったことに対して、ECL Plex™を用いた蛍光検出におけるダイナミックレンジは3.6(1.2~5,000 pg)でした。蛍光検出では非常に幅広い濃度範囲で、定量的に信頼性の高いデータが得られることがわかります。

表2 感度と定量ダイナミックレンジの比較
検出システム 検出限界 リニアリティ(R2 ダイナミックレンジ
Order 範囲
化学発光 ECL™ 9.8 pg 0.961 1.5 9.8~313 pg
ECL™ Plus 4.9 pg 0.997 2.4 4.9~1,250 pg
ECL Advance™ 0.6 pg 0.978 2.4 0.6~156 pg
蛍光標識二次抗体 ECL Plex™ 1.2 pg 0.998 3.6 1.2~5,000 pg

ECL™ Plusの結果 ECL Advance™の結果

ECL Plex™の結果

図2 蛍光検出がもつダイナミックレンジの優位性

【左上】 ECL™ Plus、DR*:2.4(4.9~1,250 pg)、L*:R2 = 0.997
【右上】 ECL Advance™、DR*:2.4(0.6~156 pg)、L*:R2 = 0.978
【下】 ECL Plex™、DR*:3.6(1.2~5,000 pg)、L*:R2 = 0.998

Y軸: シグナルインテンシティ
X軸: トランスフェリンの添加量

補足データ2 CCDイメージャーとフィルムによる定量ダイナミックレンジ比較

ECL™ Plusによる化学発光検出シグナルの定量ダイナミックレンジを、CCDイメージャー(ImageQuant™ Imager)とX線フィルム(Hyperfilm™ ECL™)間で比較しました。その結果、ImageQuant™ Imagerで取得したイメージでは、フィルムでの検出に比べてダイナミックレンジが1.2 log も優れていました。ImageQuant™ Imagerでは9.8~5,000 pgまで濃度依存的にシグナル強度の直線性が保たれていたことに対して、フィルムによる検出では9.8~310 pgでした。

図1A CCDイメージャーとフィルムによるECL™ Plus検出シグナル
図1A CCDイメージャーとフィルムによるECL™ Plus検出シグナル

【上】 検出:ImageQuant™ Imager、露光時間:6分、DR*:2.7(9.8~5,000 pg)、L*:R2 = 0.9965
【下】 検出:Hyperfilm™ ECL™、露光時間:5分、DR*:1.5(9.8~310 pg)、L*:R2 = 0.9952
【サンプル】 トランスフェリン
【検出試薬】 ECL™ Plus
*DR = ダイナミックレンジ、L = リニアリティ(直線性)


図1B ダイナミックレンジの比較CCDイメージャーによる検出の方がダイナミックレンジが広いです

【左】 CCDイメージャー = ImageQuant™ Imager、DR*:2.7(9.8~5,000 pg)、L*:R2 = 0.9965
【右】 X線フィルム = Hyperfilm™ ECL™、DR*:1.5(9.8~310 pg)、L*:R2 = 0.9952

Y軸: シグナルインテンシティ
X軸: トランスフェリンの添加量

※ 図1Aの結果を元にシグナル強度のリニアリティを算出したグラフです。リニアリティが保たれていた範囲のみを示しています。X軸の幅が異なることに注意してください。ImageQuant™ Imagerのリニアリティ範囲(左)は、X線フィルム(右)のリニアリティ範囲を大きく上回っています。

※ それぞれの結果を元にシグナル強度のリニアリティを算出したグラフです。リニアリティが保たれていた範囲のみを示しています。X軸の幅が異なることに注意してください。ECL Plex™ のリニアリティ保持範囲(下)は3.6と非常に高い値を示しました。

まとめ

はじめに挙げた操作手順は、どれも当たり前のことではありますが、定量比較をする際には重要なポイントです。信頼性の高い定量データを得られるよう、ベストを尽くしましょう。

検出方法による定量ダイナミックレンジは、化学発光(X線フィルム) < 化学発光(CCDイメージャー) < 蛍光標識二次抗体 の順に高くなります。

定量が一番の目的の場合には、もちろん蛍光検出の系を使うことが望ましいです。しかし、検出するサンプルの特性(量と量変動範囲)や各検出方法の特性をしっかり把握することで、求めるデータを得ることができます。たとえば10~20倍程度の量変化であればX線フィルムのダイナミックレンジに収まるため、シグナル飽和に気をつけさえすれば良好なデータが得られます。事前の実験計画によって、定量比較データが得られるかが決定します。

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