プロが導き出す “プロ” トコール
先月号で公開いただいた、たったA4 1枚にまとめられたin-geldigestion プロトコールに対し、今月号では原稿段階で約11ページにのぼる解説をいただいた。料理のレシピも同じだが、簡単・シンプルなフローに至るまでにはただ何となくうまくいったではなく、なぜ良い結果を与えるのか、どうすれば安定した結果を与えるのかの検討、原因究明をくり返し導きだされたのであろう。
プロが導き出す “プロ”トコールはそれだけの意味を持っている。毎度、近藤先生から各操作の意味・ポイントを事細かに説明いただいているが、目的に応じてひとつひとつの操作がどのような意味をもつかを理解することがいかに重要であるか、また問題が起こった際に解決の糸口となるかを、皆さんも痛感していることであろう。プロによる解説が多くの研究者のヒントとなり、新たなプロによる “プロ”トコールが生まれることに、我々メーカーも何らかの形でお手伝いしていきたい。
今回で2D-DIGE/MS法の実験フローの解説は終了となる。次回は一年に渡る連載のまとめと感想について執筆いただける予定である。
DIGE 道場 第10回
成功するIn-gel digestion法 ~実践編~
第10回 もくじ
- はじめに (本ページ)
- In-gel digestion操作 1日目(その1)
- In-gel digestion操作 1日目(その2)
- In-gel digestion操作 2日目
- 最後に: In-gel digestionのポイント
Dr. 近藤のコラム
コラム第10回 「画像解析ソフトウェアはどれがいいのか」
1. はじめに
先月号は筆者のラボで使用しているin-gel digestion法のプロトコールをご紹介した。プリントアウトして実験台に貼れば使える、そのままの状態である。すでにin-gel digestion法を何度も行っている方にはすぐに役に立つのではないかと思う一方で、これから始める方にとっては若干難しかったかもしれないと想像している。
今月号では掲載済みのプロトコールを写真入りで解説していく。ラボ内ではマンツーマンで指導している技術なので、まったくの初心者にはどうすれば遠隔地から教授できるのかいろいろ考えた結果、操作ごとの写真を提示することにした。撮影者がもっとも大切と思うシーンを切り取っているので、動画よりかえってわかりやすいのではないかと思う。
プロトコールはSaturation Labelling Dye(サチュレーションダイ) (Cytiva)で標識されたサンプルに対する方法である。通常のサンプルを対象にしたin-gel digestion法とは若干異なる。サチュレーションダイはシステイン残基を標識することから、通常のin-gel digestion法で使われる「還元―アルキル化」は行っていない。通常の染色法で検出されたスポットを処理する場合は、本プロトコールを基本として通常のプロトコールを参考にDTT、ヨードアセトアミド、アクリルアミドなどを入れるステップを追加されたい。
サチュレーションダイで標識されたサンプルの場合、システイン残基を含むペプチドはイオン化されないので、結果的にタンパク質同定は難しくなっている。したがって、サチュレーションダイで標識されたサンプルにも対応できるプロトコールは未標識のサンプルやMinimal Labelling Dyes(ミニマルラベリングダイ)(Cytiva)で標識されたサンプルであればもっとよい成績を出すことができると考えられる(「還元―アルキル化」のステップは追加するとして)。
次へ In-gel digestion操作 1日目(その1)
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