カラムについてこんなことはありませんか?
- 「論文に出ていたカラムを使いたいけど、どこからも市販されていない」
- 「市販のカラムでは自分の実験スケールに合わない!」
- 「必要なものとはいえ、年に何回も同じカラムを買うのはもったいない!」
- 「カラムの中の担体が汚れているので詰め替えたい!」
- ・・・・こんなとき、カラムを自作できると大変便利です。
ここでは、カラム充填に初めてチャレンジするときによくいただくご質問に、一つずつお答えします
FAQ 目次
- Q1:空カラムを選ぶために、最初に必要な情報は?(ケーススタディあり)
- Q2:カラムサイズ(直径、高さ)はどうやって決める?(ケーススタディあり)
- Q3:空カラムって基本的にはどういうもの?(ケーススタディあり)
- Q4:XKとHiScale はサイズが大部分共通していますが、何が違う?
- Q5:カラムを自作するときに購入すべきものはなに?
- Q6:Packing tube、リザーバーって何??絶対に必要?(ケーススタディあり)
- Q7:XKカラムのPacking reservoirとPacking connector、どう違うの?
- Q8:レジンのパッキング方法はどこに載ってる?
- Q9:充填がうまくできなかったとき、どんなデメリットがある?
- Q10:カラムをうまく充填できたかどうかは、どうやったら確認できる?
Q1 空カラムを選ぶために、最初に必要な情報は?
Ans
- どのレジンを
- どの規模で(50 mL分など)
詰める必要があるか?という情報が必要です。
すでに小スケールでの精製の経験があり、これをスケールアップしたい場合には、サンプル量とレジン量の比率を保ち、スケールアップ精製のために必要なレジン量を決定します。
ケーススタディ
培養液50 mLからのタンパク質抽出液を、現在1 mLサイズのHisTrap FF で精製できている。
今後、この精製を培養液1500 mLまでスケールアップしたい
サンプル液が30 倍に増えるので、レジンも基本的に30倍*。よって、30 mLの容積のカラムが必要です。
※スケールアップ前後で、サンプル液中の目的タンパク質濃度が同じであることが前提です
カラムサイズの決め方についてはQ2 ケーススタディへ続きます。
Q2 カラムサイズ(直径、高さ)はどうやって決める?
Ans
詰めるレジンの種類(手法)、レジンの量、用途で決めます。
手法別の一般的なベッド高:
- ゲルろ過クロマトグラフィーカラム:30-60 cm※
- バッファー交換用のゲルろ過クロマトグラフィーカラム:一般に10 cm程度
- 結合/溶出モードを利用する手法(アフィニティー、イオン交換、疎水クロマトなど):一般に 5~30 cm
※これより高いベッド高は通常の実験環境ではパッキングが難しい為、カスタムパッキングサービスを利用するか、あるいは20 cmや30 cmのカラムを2本用意し、直列に接続することも選択肢の一つです。
レジンに結合せずに分離するゲルろ過クロマトグラフィーにおいては、カラムの充填状態の良し悪しはダイレクトに分離に影響します。このような分離方法では、ある程度の分離距離、つまりカラムの長さが必要です。
一方、結合/溶出モードを利用する手法では、それほどの分離距離を必要としません。逆に、長すぎるカラムでは、背圧がかかり分離スピードを落とさなくてはいけなくなるのでデメリットの方が大きくなります。
ケーススタディ
HisTrap FF 1 mLからの30 倍スケールアップで、30 mLのレジンをパッキングしたい。適したカラムは?
アフィニティークロマトグラフィーレジンは、一般にベッド高が5-30 cmとなるようにカラムを選びます。
弊社取り扱いカラムのすべての直径で計算してみると、、、、
φ10 mmのカラムでは、断面積が0.785 ㎠なので、ベッド高38 cm。( 長すぎます)
φ16 mmのカラムでは、断面積が2.01 ㎠なので、ベッド高14.9 cm
φ26 mmのカラムでは、断面積が5.31 ㎠なので、ベッド高5.6 cm。
φ50 mmのカラムでは、断面積が19.6 ㎠なので、ベッド高1.5 cm。( 短かすぎます。)
φ16 mmと φ26 mmのどちらがよい?
どちらでも問題ないですが、直径が太い方が早い流速での処理を期待できます。初期精製へのクルードなサンプル液を1500 mL添加する所要時間を考慮し、今回はφ26 mm x 高さ5.6 cmを選びます。
実際のカラムの選択についてはQ3 ケーススタディに続きます。
Q3 空カラムって基本的にはどういうもの?
Ans
カラム管に対し、エンドピースまたはアダプターをセットしたものです。
上下両側にアダプターを持つタイプ(HiScale)、片方だけにアダプターを持つタイプ(XK, Tricorn)があります。
XK、Tricornでもアダプターを追加で用意し、上下両側にアダプターをセットすれば、ベッド高の調節幅を広く取れます。
ここで、弊社空カラム(HiScale, XK, Tricorn, C)の一覧表をご覧ください。
表のみかた:
例えばXK16/70についてみてみます。XKカラムに標準装備の1本のアダプターで調整可能なベッド高範囲は52.5~65 cm(レジン量105~130 mLに相当)ですが、アダプターをさらにもう1本追加すると38~65 cm(レジン量76~130 mL)の間でベッド高を調整可能になります。
このように、目的のベッド高を達成できそうなカラムを選びます。複数候補がある場合は、今後の実験でも使い回しできそうなサイズを選ぶとよいです。
カラムにはレジンに触れる部分にフィルター(ネット、ネットリング、ベッドサポートと呼ばれることもあります)がありますが、カラムごとにそのメッシュサイズが異なるため、表の「対応レジン粒子径」も忘れずチェックしてください。
ケーススタディ
φ26 mm × 高さ5.6 cmにNi Sepharose FFレジンを詰めたい場合に選ぶカラムは?
- XK26/20(アダプター1本で1~12.5 cm)
- HiScale26/20(0~20 cm)
の2つで、目的のサイズのカラムを作成可能です。
フィルターメッシュサイズはどうでしょうか?もう一度、表の「対応レジン粒子径」をチェックしてみます。
Ni Sepharose FFレジンは平均粒子径が90 μmですので、XK(標準メッシュ:10 μm)でも、HiScale(標準メッシュ:20 μm)でも問題なく充填できることが確認できます。XKカラムとHiScale カラムの違いについては、Q4も続けてご覧ください。
Q4 XKとHiScale はサイズが大部分共通していますが、何が違う?
Ans
HiScale は基本的にXKカラムの改良版で、主に以下の点が改良されました。
- HiScaleではカラムの耐圧が上がったため(HiScale 耐圧:2MPa、XK16とXK26:0.5 MPa、XK50:0.3 MPa)、今までXKカラムでは対応できなかった流速で、Capto™ やMabSelect™ などの流速特性の高いレジンの性能を発揮できる
- アダプターを2つ初期搭載している
- アダプターを装着する際、ベッド面に触れるプランジャーが回転しない構造であるため、充填時の操作性が向上した
- 内筒管にメモリがある為、充填後のベッド高の確認が容易(巻き尺で測らなくてもよい)
- パッキング後にカラム接液部外に残った溶液を抜きやすくするためのピンホールがあるため、微生物増殖のリスクが軽減された
HiScale は40 cm以上のカラム長のラインアップがありませんので、その場合は目的サイズに合うXKカラムを選択して下さい。ただ、カラムパッキングはベッド高が高いほど難易度が上がります。前述(Q2)のとおり、目的のベッド高の半分のベッド高のカラムを2つ作成して、直列に接続することもできますので、是非覚えておいてください。
Q5 カラムを自作するときに購入すべきものはなに?
Ans
必ず必要なもの:カラム本体
場合により必要なもの
- 追加アダプター(XK, Tricorn)
- カラム本体の体積を一時的に拡張する器具(Packing tube, Packing reservoir、Packing connectorなど、カラム種類によって器具の名称が異なります)
これらについては、Q 6でもう少し詳しく説明します。
その他、カラムパッキングに必要な一般器具については、XK、HiScale、Tricornの標準的なパッキングの様子をまとめた動画でチェックできます。
Q6 Packing tube、リザーバーって何??絶対に必要ですか?
Ans
均一にレジンを充填するためには、スラリー(レジン懸濁液)を一度に注ぐことが重要です。(継ぎ足しを繰り返すと、目には見えない“断層”ができ、分離を損なう原因になります)スラリーは一般に50%濃度が推奨されます※ので、一度にスラリーを注ぐには、予定しているベッド高(容積)の倍の長さ(容積)のカラムが必要です。
※レジンごとの推奨パッキング条件は、それぞれのレジンのInstruction for useを確認ください
カラムの最大ベッド高の半分以下の高さに充填したい場合には、50%スラリーはすべて一度に注ぎ入れる事が可能ですが、それ以上の高さに詰めたい場合には、一時的にカラム長(体積)を拡張してスラリーを一度に注ぎ入れることが可能な状態を作ります。
そのために必要なのが、Packing tube、またはPacking reservoirなどと呼ばれる器具です。
カラムごとに器具の種類、名称が異なりますので、それぞれ説明します。
HiScale | Tricorn | XK |
---|---|---|
Instruction | Instruction | Instruction |
Packing video | Packing video | Packing video |
HiScaleの場合
Packing tubeを使用します。
例えばHiScale 26/40に対してPacing tube 26/40を使えば、カラムを2倍の長さ(容積)に延長ができます。そこまでの高さが必要ない場合には、Packing tube26/20を組み合わせて1.5倍の長さにすることが可能です。
Packing tubeは、カラムとの連結部分(図中の黒い部分)が一体になっているため、カラムとの接続のための部品は他に必要ありません。
Tricorn の場合
延長器具は、Packing equipmentという名称です。
図のようにPacking connectorを介してPacking tube をカラムに接続します。Packing equipmentには、Packing tube、Packing connectorを含め図中の部品が全て含まれます。
Packing connectorだけ別に購入することも可能ですので、複数のTricorn 空カラムを持っている場合には、空いているカラムのガラス管(Packing tube)とPacking connectorを利用して、延長することが可能です。
XKカラムの場合
延長器具は2種あります。
Packing Connectorは、図のようにこれを介して本体のカラムと同じ太さのPacking tubeを接続するための器具です。
Packing reservoir(RK16/26、RK50)は、下の写真のようにタンクのような形状をしています。
XK16とXK26は共用で、RK16:350 mL、RK26:370 mLの容積をプラスすることが可能です。XK50は、900 mLの容積をプラスできます。
ケーススタディ
1:
HiScale 26/20にNi Sepharose FFレジンを30 mL(5.6 cm)パッキングする場合、パッキングの道具としては何が必要?
空カラムの一覧表を見てみます。
HiScale 26/20の充填可能範囲は0~20 cmです。今回のベッド高は目標5.6 cmですので、50%スラリーを用いる場合でもHiScale26/20に一度にレジンを全量注ぐことができます。よって、必要なものはHiScale26/20だけです。Packing tubeは必要ありません
推奨パッキング方法はレジンごとに異なります。レジンによっては、仕上がりベッド体積に対して~15%多いレジンを圧縮充填する場合もあります。その場合は、カラムの半分の高さを目指す場合でも、50 %スラリー液が1本のカラムに入りきらない場合もあります。その場合はスラリー濃度を濃くすることで調整するか、Packing tubeなどの延長器具を使います。
2:
XK16/70カラムに、ベッド高50 cmになるようSuperdex 200 prep gradeをパッキングする場合、必要な器具は?
まず、スラリー液量がどの程度になるかを計算します。最新のInstructionに掲載された推奨パッキング方法※によれば、レジンは仕上がりカラム体積よりも15%多く準備する事、スラリー濃度は50%が推奨されています。
ベッド高50 cmのカラム体積は φ16 mmカラム直径 2.01 cm2 x 50 = 100.5 mLですが、この15 %増しでレジンを準備するため、
100.5 x 1.15 =115.5
115.5 mlのレジンが必要です。これを50%スラリーで調製すると、
115.5 ÷ 0.5 = 231
スラリー全量は231 mLと計算されます。
231 mLのスラリー液は、XK16/70のカラム容積(130 mL)には収まらない為、拡張が必要です。
下記2つのどちらかのやり方で拡張すれば、50 %スラリーを一度に注ぎ入れることができます。
- Packing reservoir RK16使用した場合: 360 mLの容積をプラス
- Packing connectorを介してXK16/70のガラス管を連結した場合:130 mLの容積をプラス
70 cm長のガラス管を2つ連結すると、カラム本体だけで長さが140 cmとなり操作がしにくいため、場合によってはもっと短いカラム管を使用することもあります。
例:Packing connectorを介してXK16/40のガラス管を連結した場合:70 mLの容積をプラス
これだと、130 mL+70 mL=200 mL程度の容積しか確保ができないため、50 %スラリー231 mLは入りません。このような場合はスラリー濃度を少し濃く設定します(例:60 %スラリーにすれば、スラリー液は192.5 mlとなるので一度に注げます)
※Superedx prep grade Intructions for Use(本記事では18106029 AG版を引用しています)
Q7 XKカラムのPacking reservoirとPacking connector、どう違うの?
Ans
Packing reservoirはカラム本体よりも太い容器であるのに対し、Packing connectorでは同じ直径のカラムの延長に使用します。
カラムパッキングの作業では均一な送液によって、均一にレジンを詰めていきますので、直径の差がない方が充填には有効です。ただし、2倍の容積を確保する必要があれば同じ径のカラムを2本連結するため、場合によってはかなり全長が長くなり、操作しづらいことがあります(Q6 のケーススタディ-2を参照)。
Packing reservoirは、高さをあまり増やさずに大きな容積をプラスできるメリットがあります。
Q8 レジンのパッキング方法はどこに載っている?
Ans
充填方法は、レジンごとに弊社で検討し、最もお勧めの方法をInstructions for use に記載しています。まずはこれに沿って作業することをお勧めします。推奨の充填方法は更新されることがありますので、充填の前に弊社HPで最新のInstructionsを確認ください。
Q9 充填がうまくできなかったとき、どんなデメリットがある?
Ans
下の図の例を見て下さい。上はうまく均一に充填できたカラム、下は充填が均一ではないカラムです。
よく充填されたベッドでは、良好な分離能が得られます。上の図の(B)に示すように、狭くシャープなピークが生成されます。充填が不十分なベッドでは、カラム内を流れる液体が不均一になり、下の図の(B)に示すように、ピークはブロードになります。
これにより隣接する他のピークと重なる可能性があり、また回収するタンパク質の濃度はよく充填されたカラムに比べ希薄になります。
Q10 カラムをうまく充填できたかどうかは、どうやったら確認できる?
Ans
カラムの評価方法としては、アセトンや塩をサンプルとして使用して得たピークを元に、理論段数やピークの左右非対称性 (asymmetry factor, As)を求め、数値として評価する方法があります。
このカラム評価は、パッキングの直後だけでなく、久しぶりに使うとき、洗浄した後などに実施することで、カラム性能の変化を確認できます。これにより詰め直し、廃棄などの判断目安の一つとして利用できます。
なお、プレパックカラムも購入後に一度評価しておくと、その後の劣化の度合いを知る為の目安になります。
カラム評価方法の詳細についてはこちらをご覧ください。
自分で詰めたカラムのスペックの決め方(流速、圧力)、理論段数やAsの解釈、このカラムは使えるの?などについては、関連FAQ理論段数、自作カラムの評価についてもご覧ください。
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