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Location:Home実験手法別製品・技術情報タンパク質サンプル調製・前処理

脱塩およびバッファー交換

Hitrap Desalting 写真その段階でのサンプル溶液状態が、以降に行う実験またはサンプルの保存に適していない場合にはバッファー交換が必要です。中でも、サンプル溶液中から塩や荷電性の低分子物質を除去する操作を脱塩操作と呼んでいます。また、蛍光色素などでタンパク質を標識した後に、未反応の色素を除去することにも同様の手法を使うことができます。バッファー交換操作はサンプル溶液の希釈または濃縮と関連が深いため、操作後のサンプル濃度に注意する必要があります。

このページの目次


手法間のメリットとデメリットの比較

バッファー交換や脱塩のための手法を表1にまとめました。各手法がもつそれぞれ長所と短所、特にサンプル容量やサンプル溶液の濃度(濃縮・希釈)が手法選択のためのパラメーターとなります。

表1 バッファー交換および脱塩のための手法
手法 メリットとなる点 デメリットになり得る点
透析 操作が簡便 時間がかかる、膜へのタンパク質吸着によるサンプルロス、溶液が大量に必要
限外ろ過 短時間で処理が可能、濃縮を同時に行うことができる、大容量サンプルも簡便に処理 膜へのタンパク質吸着によるサンプルロス
ゲルろ過クロマトグラフィー バッファー交換と同時に、分離・精製を行うことができる 溶液が希釈される、大容量には向いていない
脱塩カラム 5分未満で処理可能、回収率が高い 溶液が希釈される、急激な環境変化、大容量には向いていない
沈殿/再懸濁 塩以外のその他の不純物も除去できる、濃縮が可能 沈殿法に応じて特定のタンパク質をロスする可能性がある、一部のタンパク質は変性する可能性がある

各手法についての概要

透析

透析チューブ膜の細孔より低分子を通過させ、バッファー交換・脱塩操作を行います。目的タンパク質の分子量と膜孔のサイズを考慮することで、不要なタンパク質の除去や分画も可能です。

【操作における一般的な注意点】

  • 透析後は溶液が多少増えます。透析チューブをきつく締めすぎると、透析中に破れることがあります。
  • プロテアーゼによる分解を防ぐため、可能であれば低温で操作を行います。
  • 安定性の低いタンパク質や凝集しやすいタンパク質を扱う際には、徐々に溶液組成を変えていくなど工夫する必要があります。

マーク透析の一般プロトコール

  1. サンプル溶液の5~10倍量以上の置換バッファーを外液として用意する。
  2. サンプルを封入した透析チューブを置換バッファー中に入れる。
    ※マグネティックスターラーで攪拌しながら行うと効率がよい
  3. 1時間~数時間放置する。
  4. 外液を交換する。
  5. 上記1.~4.の作業を3回くり返す。最後の置換操作は一晩行う。
  6. チューブから溶液を回収する
関連製品

Mini Dialysis Kit

最少10 µlから透析可能
Mini Dialysis Kit

マイクロチューブタイプで、簡単で安全に透析操作を行うことができます。分画分子量・サンプル容量に合わせてご選択いただけます。

限外ろ過

限外ろ過膜を用いてバッファー交換および脱塩を行うと同時に、溶液量を減らし濃縮することができます。透析膜と同様、膜孔のサイズ(数 nm~数十 nm)によって分子を分離します。

送液ポンプと組み合せて使うカセットタイプや遠心分離で操作するスピンカラムタイプがあります。(弊社ではカセットタイプのみの取扱いです)

スピンカラムタイプでは20~30 ml程度、カセットタイプでは用いる送液ポンプによっても異なりますが、リットル単位での処理が可能です。

関連製品

半自動化限外ろ過システム
ÄKTA flux™ s

短時間で濃縮・透析が可能な限外ろ過システムです。透析や脱塩カラム処理には不向きなサンプル容量(100-2,000 ml)に対応します。

クロスフロー型メンブレンフィルター
Kvick Start™

メンブレン上の滞留物・残留液量を抑えるクロスフロー型フィルターを採用しているため、1ステップで効率的に脱塩・濃縮を行えます。

ゲルろ過クロマトグラフィー

ゲルろ過は分離精製を行いながら適当なバッファーへの置換ができます。単に脱塩やバッファー交換が目的の場合には、ポアサイズの小さい脱塩カラムを利用したほうが簡便で、短時間で処理できます。

脱塩カラム

低分子のみが通過できるポアサイズをもつゲルろ過担体(脱塩カラム)を用いて、バッファー交換および脱塩処理を行うことができます。透析法や限外ろ過法に比べて短時間で処理が可能であり、操作も非常に簡単です。

透析などに比べると急激に溶液が置換されることから、タンパク質によっては変性・沈殿形成が起こる可能性があります。不安定なタンパク質を扱う際には注意が必要です。このような場合には、2~3回に分けて徐々にバッファー組成を変化させることで、変性や沈殿形成を防げることがあります。

サンプル容量やクロマトグラフィーシステムの使用などを考慮して、適切な形状やサイズの脱塩カラムを選択します。HiTrap™ Desalting 5 mlでの脱塩処理プロトコールを下に示しますのでご参照ください。

マークHiTrap™ Desaltingでの脱塩処理プロトコール シリンジ使用時

  1. シリンジをバッファーで満たし、カラム上部(赤いパーツが付属)のストッププラグ(黒)を外す。
  2. シリンジに付属のルアーアダプターを取り付け、カラムに空気が入らないようにバッファーを滴下しながらカラムに接続する。
  3. カラム下部のツイストオフエンドを折る。
  4. 25 ml のバッファーを流速5 ml/min* でカラムに送液し、20% エタノール(保存液)を除く。 (下写真参照)
    ※カラム内に空気が入ってしまったときには、脱気したバッファーを気泡が抜けるまで送液してください。
  5. 2 ~ 5 ml 容量のシリンジを用いて、流速1 ~ 10 ml/min でサンプルを添加する。カラムからの溶出液はまとめて分取しておく。(下写真参照)
  6. サンプル量が1.5 ml 以下の場合、残りの容量はバッファーに切り換えて総溶出量が1.5 ml になるまで送液を続ける。溶出液は4.と同様に分取しておく。(下写真参照)
  7. 表(PDF:31KB)に示されている適量(溶出・回収量)を送液してタンパク質を溶出させ、脱塩済みのタンパク質を回収する。

*注意:HiTrap™ 5 ml カラムを用いる場合、5 ml/min は約120 滴/ 分(約2 滴/ 秒)に相当します。

ステップ4の操作写真
ステップ4
ステップ5の操作写真
ステップ5
ステップ6の操作写真
ステップ6
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HiTrap™ Desalting 製品写真

シリンジでも使用可能なお手軽タイプ
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わずか数分で脱塩処理が終了です。シリンジ・システムのどちらでも使えます。5本まで直列に接続することできます。(7.5 mlまで処理可能)

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サンプル容量が2.5 ~ 15 mlの脱塩に
HiPrep™ 26/10 Desalting

システムに連結するタイプの脱塩カラムです。同じ担体を用いているHiTrap™ Desaltingから、簡単にスケールアップができます。

PD-10 製品写真

多サンプルの脱塩処理に!
PD-10

自然落下型の脱塩カラムです。2.5 mlの試料容量で試料の回収率95 %以上、塩の混入率4 %以下で、希釈率はわずか1.4倍です。

  

沈殿/再懸濁によるバッファー交換および脱塩処理

沈殿/再懸濁の手法は、脱塩と同時にサンプル溶液の濃縮や他の不純物を除きたい場合に最適です。

「処理中に沈殿しないタンパク質が存在する」、「再懸濁が難しい」などの要因からサンプルのロスが考えられるほか、沈殿法の種類によっては処理に多少の時間を要します。純粋に脱塩処理のみが目的の際には上に挙げた他の手法を用いた方がよいでしょう。

沈殿/再懸濁の詳細は 「タンパク質溶液の濃縮」に記載しました

 
関連製品

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高回収率かつ効率的に不純物を除去
2-D Clean-Up Kit

TCA/アセトン沈殿をベースとした、回収率の高さが特徴のキットです。塩類の他に、界面活性剤・脂質・核酸などを効率的に除去します。



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