DIGE 道場 第4回
電気泳動操作のポイント -標識からSDS平衡化まで-
第4回 もくじ
- はじめに
- サチュレーションダイによる蛍光標識
- 一次元目等電点電気泳動
- Immobiline™ DryStrip膨潤時の注意点
- 一次元目等電点電気泳動の注意点
- Multiphor II 使用時の注意点
- 電流と電圧
- 泳動後の処理 (本ページ)
- おわりに
Dr. 近藤のコラム
コラム第4回 「方法を見つける方法」
4. 泳動後の処理
●泳動後のIPGゲルの保存
電気泳動終了後のIPGゲルは24cmの長さのものの場合、細胞培養用のシャーレに丸めて入れ遮光して-80℃に保存する。丸めてもちゃんと元に戻る。4か月くらいまでであれば二次元目の電気泳動パターンに問題ないことを確認している。12枚のシャーレを縦に積み上げてアルミホイルで包み、レブコの縦型フリーザーの引き出しに入れて保存している。
●SDS平衡化時の注意点
一次元目のゲルの平衡化では二つのことが行われている。すなわち、タンパク質の還元・アルキル化とSDS化である。とくにSDS化の出来が電気泳動のパターンに大きく影響する。
SDS化がうまくいっていない場合、スポットが縦方向にフォーカスしない。特にアルカリ側の高分子領域(50-100kD)でその傾向が出る。ポイントは平衡化バッファーの容量、シェーカーのタイプ、そして温度である。平衡化の際は平衡化バッファーに浸ったIPGゲルを室温で震盪するのだが、平衡化の間中IPGゲルが平衡化バッファーに十分に浸っていられるだけの容量が必要である。具体的には10 cmシャーレの中で平衡化する場合には20 mlの容量が必要である。これより少ないとIPGゲルが震盪中に浸りきっていないことがある。
次に、シェーカーは平行に動くものを使用する。斜めに震盪するタイプのものを使っていたこともあるのだがよくなかった。最大に傾いているときにIPGゲルが平衡化バッファーから出てしまい、平衡化バッファーとIPGゲルの接触の時間が正確でなくなることがトラブルの原因だと考えて取り替えて解決した。同じ理由から、シャーレの中で平衡化する場合にはIPGゲルの片側がシャーレの底についていることを確認し、もし底についていなければピンセットなどを使って底につけるようにする。
最後に、平衡化バッファーはウレアを含むので作成したての平衡化バッファーはウレアの吸熱反応のために冷たくなっている。そのまま使うとかなり高い確率で失敗する。SDS化に要する時間は温度に反比例し、平衡化に推奨される時間内でSDS化を行うためには室温で反応を行うことが必須だからである。午後から二次元目の電気泳動を行う予定であれば、朝から平衡化バッファーを作成し(還元剤は使用直前に入れる)、昼までスターラーで攪拌する。数時間も攪拌すると温度計で測るまでもなく液温はすっかり室温になっている。
同じ理由で、-80℃から出したばかりのIPGゲルはすぐには使用しない方がよい。遮光して実験台の上にシャーレを並べ30分から1時間ほど置いて室温に戻す。凍って白くなったゲルが透明になってから使用する。このときにゲルがシャーレの底に行くようにするとよい。シャーレを重ねていたのでは室温にならないのでうまくいかない。遮光して一枚一枚実験台の上に置くようにする。
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