●ガラス板の準備
まず、アクリルアミドゲルがガラス板にぴったりくっついて少々のことでは取れなくなるようなコーティング処理をガラス板に行う。この操作は必ず別室で行う必要がある。コーティングに使う試薬は揮発性なのだが、普通の部屋(ドラフト外)で行うと、周り中のガラス板が不本意にもコーティングされてしまうからである。その結果どうなるかというと、解析用に泳動した場合であっても電気泳動終了後にガラス板からゲルがはがれなくなってしまう。
コーティング剤の組成は次の通りである。
【コーティング剤の組成】
- Ethanol 8 ml
- Glacial acetic acid 200 μl
- Bind-silane 10 µl
- 超純水 1.8 ml
図1 コーティングの準備
後述する「マーカー」を貼る位置をマークした塩化ビニルの板をガラス板の下に敷く。青く印がついているところが貼る位置である。さらにその下に敷いているのは低蛍光のペーパータオルである。
ガラス板の上にコーティング剤を垂らしていくわけだが、ガラス板は再利用するので、どちらの面をコーティングするのかをあらかじめ決めておき、常に同じ面を使うようにする。ガラスカッターを使って端に傷をつけたり書き込んだりしている。
なぜコーティング面を決める必要があるかというと、ガラス板を洗浄してもコーティング剤がガラス板に残っているからである。本来はゲルが固着してほしくない方にもコーティング剤が残っていると、その分取用の電気泳動では両方のガラス板がコーティングされてしまうことになってしまう。そうなるとゲルを挟んだ2枚のガラス板をあとで二つに分離できなくなってしまう。そうなるともう打つ手がなく、その2枚のガラス板(とゲル)は捨てるしかない。
図2 コーティング面の認識方法
「分取」と書き込んだ側を常にコーティングするようにする。ガラスカッターの先端を使ってごしごしと書き込んでおく。
図3 コーティング処理(1)
このガラス板の上にコーティング剤を垂らす。1 mlずつ2ケ所に滴下して、低蛍光ペーパータオルで広く均一に伸ばすようにする。
図4 コーティング処理(2)
低蛍光ペーパータオルをまるめたものを使ってコーティング剤を伸ばしているところ。むらなく均一に伸ばしてから力を入れて刷り込んでいく。自分で決まりを作って操作するようにするとよい。
コーティング剤を滴下しては均一に伸ばすという、操作を行ったあとは、すぐに「マーカー」となるシールをガラス板に貼る。貼る位置は上の写真にある、青くマークしてある部位である。この場所はガラス板の端より内側、スペーサー部分にひっかからないように気をつけて、かつスポットとかぶらないようにできるだけ外側に貼る。上下ではほぼ中央、の位置である。
図6 マーカーシールを貼っているところ
1 mmくらいずれていても実は構わないのだが、内側に貼りすぎるとスポットに引っかかってしまうので注意が必要。
この状態で1時間放置し、ゲル作製に使用する。放置するのは、過剰なコーティング剤をとばしてしまいたいからである。