●ゲルの作製
マーカーシールを貼ったガラス板を使ってゲルを作製する。普通のガラス板と同じようにゲル作成ボックスにガラスを組み込んでいく。
このとき注意しないといけない点が一つだけある。コーティング剤は揮発性なので、ゲル作製ボックスに組み込むと対面にあるガラス板にも少しずつコーティング剤は移っていく。対面のガラス板がコーティングされないように、ゲル作製ボックスにコーティング済みガラス板を組み込んだら、できるだけ早くゲル溶液を注ぎ込むようにする。
図7 ガラス板の組立て
ガラス板を組み終えて最後のパネルを固定しているところ。ゲル作製ボックス1台で13枚のゲルを一度に作製する。普段の解析には一度に12枚単位で電気泳動を行っており、1枚は予備である。この予備に相当するところに前述の分取用ガラス板セットを組み込み、解析用に12枚、分取用に1枚のゲルを作製すると無駄がない。
左に見えるのは電気泳動用のバッファーを作成するタンク。一回の電気泳動で35 Lの泳動バッファーを使用する。2セット行う日は70 Lを一日で消費することになる。
図8 チューブの接続
ゲル溶液注入のためのチューブを接続。下からゲル溶液を注ぎ込む。
上からゲル溶液を注ぎ込むと泡だらけになってしまい、まずうまくいかない。ゲル溶液を注ぎ込んだあとに逆流しないようにストッパーをつけている。2個つけるのがポイント。ストッパー1個だと圧にまけてゲル溶液が逆流する。
図9 グラジエントメーカーによるゲル溶液の注入
グラジエントメーカーでグラジエント溶液を調製しつつゲル作製ボックスにゲル溶液をペリスタポンプで下から注ぎ込む。
図10 ブタノールの重層
最後にブタノールを重層して完成。一枚あたり1~2 mlくらいが適当だが多すぎてもわるいことはない。あまり勢いよく注ぎ込まないことがポイント。
Sam Hanashのラボではスプレー器具を使いブタノールを噴霧して重層していた(ミシガン大学当時)。臭いが嫌で自分は上記の方法をとっていたのだが、ブタノールを均一に重層するという目的ではスプレーを使うのはよい方法である。
図11 注ぎ込んだゲル溶液を横からみたところ
図12 グラジエントメーカーの洗浄
ゲル作製後は水道水、超純水の順にグラジエントメーカーを洗浄する。ペリスタポンプを高速で回す。長いこと放置すると残存するアクリルアミドが重合するので、少々急いだ方がよい。ここでも洗剤の使用は厳禁。洗浄はかならず水だけで行う。
ゲルを一晩重合させ、翌日はゲル作成ボックスよりゲルを取り出す。
図13 重合が終わったガラス板
一晩重合させたあとに前面のパネルを取ったところ。写真では分からないがガラス板の間に注ぎ込まれたゲル溶液が重合し、13枚のグラジエントゲルができあがっている。
図14 “解体” (完成したゲルの回収)
黙々とひたすらゲルを回収する。我々はこの作業を「解体」と呼んでいる。国立がんセンターのすぐ隣にある築地の場外市場で行われる「鮪の解体ショー」に由来するのかどうかは定かではないが、なぜか何年も前に自然に定着したラボ用語である。
図15 “解体” が進んだゲル作製ボックス
残ったゲル片はあとできれいに水で洗い流す。
図16 ゲル作製ボックスの洗浄
ゲル作成ボックスを洗っているところ。こうして写真でみると「解体」のニュアンスが分かるような気がするでしょうか?
図17 完成したゲルの保存
ゲルの上に乾燥防止のための超純水を重層し使用するまで保存。