DIGE 道場 第2回
こんなにすばらしい!2D-DIGE法
第2回 もくじ
- 二次元電気泳動に対する誤解と2D-DIGE
- 2D-DIGEの魅力
- 2D-DIGEが可能にした「レーザーマイクロダイセクションからのプロテオーム解析」
- 最後に
Dr. 近藤のコラム
コラム第2回 DIGEなおサイフの話 - 2D-DIGEは本当に高い?
2-4 スループット性の向上
●二次元電気泳動のスループット性を低める 「銀染色ステップ」
二次元電気泳動法はもともとスループットの悪い実験系ではないと認識している。サンプル調製から画像取得までは1週間かかるが、泳動装置の台数に比例していくらでも並列にサンプルを処理できるので、ある期間にこなせるサンプルの数を計算するとかなり高いスループット性である。
一次元目の泳動装置であるMultiphor IIでは、同時に12本のIPGゲルを泳動することができる。二次元目の泳動装置として例えばEttan™ Dalt twelveも12枚のSDS-PAGEゲルを泳動することができる。スループットが要求されるような実験で一つずつサンプルを泳動するような状況は考えにくく、そもそもたくさんのサンプルが実験の最初の段階で存在するか予想される。1サンプルずつではなく12サンプルずつ、計画を立てて実験すれば手持ちのサンプルの泳動は短期間に終わってしまう。実際、筆者は大学院生のときにこれ以上のペースで二次元電気泳動をしていたことがある。しかし毎日12枚もの二次元電気泳動法を行うのはそれほど簡単なことではなかった。
従来の二次元電気泳動法でもっとも労力と時間がかかるのは実は染色の操作である。時間はかかっても実際に人が手を動かす時間の少ない泳動操作に対して、ゲルを銀染色にかける場合は、待ち時間の間にも次工程の準備をしなければならず、結局1日拘束されることになる。特に複数のゲルを同時に平行して染色する場合は、超純水の準備もあってかなり忙しい。毎日12枚の泳動を続けるのはかなりたいへんである。すなわち、年間何検体の解析が可能かということでスループット性を評価すると、染色操作の煩雑さがリミットとなっていた。
●本当に便利な「蛍光プレラベリング」
2D-DIGE法は違う。前述の網羅性の項でも述べたように、2D-DIGE法では泳動前にあらかじめサンプルを蛍光標識するため、泳動終了後のゲルをガラス板に挟んだままの状態でレーザースキャナーに載せることができる。そして、1時間以内に画像を取得することができる。染色操作はいっさい必要ない。ゲルサイズに関係なくゲルが破損する恐れがまったくない。肉体的にも精神的にも従来の二次元電気泳動法よりずいぶん楽である。
図5 Typhoon Trio™によるレーザ-スキャン
6台を並列に使うことで年間数千枚の2D-DIGE法が可能になる。1台でも、数百枚は可能。
日々の実験のスループットについてはどうだろうか。レーザースキャナー1台で1時間に1枚のゲルをこなすとすると、一日12枚が限界だろう(実際は1時間に1枚以上できるのだが、それにしても・・・)。筆者のラボではTyphoon Trio™を6台並べて同時に使っている(図5)*1。1日24枚というのがちょっとペースを上げた日の実験で、1日12枚というのが普通のペースである。
ただこれは年間2,000枚のゲルを泳動する特殊な研究室の話であって普通はここまでのスループット性は要求されないだろう。毎日12枚の泳動では足りないという場合、もしゲルサイズがEttan™ Daltのものなら、Ettan™ Dalt twelveを2台使って並列に泳動し、毎日24枚の泳動を行い、2枚同時にスキャンすることで単位時間あたりに得られるゲル枚数を倍にできる。
●身体を動かすことで、結果はついてくる!
スループット性と労力はトレードオフの関係にある。今まではどんなにやる気があってもこなせなかった数のサンプルが2D-DIGE法では解析できるようになったのだが、そのためにはそれなりに身体を動かさなくてはならない。楽してたくさんのサンプルを調べたいという方は2D-DIGE法はあきらめた方がいい。今までに誰も見たことのないデータを自分が初めて見るためには少々の労力をいとわない、という方に2D-DIGE法は可能性を提供する。
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参考文献
- Kondo T, Hirohashi S. Nat Protoc. 1(6):2940-56(2006)