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Location:Home実験手法別製品・技術情報2D DIGE(蛍光標識二次元発現差異解析)

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カロリ鈴木の技解説

【腕ひしぎ十字固め】
柔道の代表とされる関節技であり、相手の肘関節を決める技です。
プロレス、グレイシー柔術など、様々な格闘技にも発展しており、認知度は非常に高い技です。
一見すると、相手の腕を反対に反り上げる力技に見えるかも知れませんが、実は、「テコの原理」を利用した技で、腕を反り上げることに力を入れるのではなく、相手の腕関節に密着している自らの腰を浮き上がらせ、テコの支点の位置をコントロールする技です。
この技も、DIGEも周知の事実になっている技術ではありますが、真のpointは理解しにくいということを、近藤は、腕ひしぎ十字固めで表現しています。

2D-DIGEを用いた論文発表数の推移 (Cytivaより)

蛍光ディファレンスゲル二次元電気泳動(2D-DIGE)の技術が世に広まる発端は、2001年に「Ettan™ DIGE」として製品化されたことに始まる。以来、Ettan™ DIGEは海外・国内含めて多くの研究者に利用され、近藤先生が本文中で触れているように、2D-DIGEを活用した内容で今日までに1,000報をこえる論文が報告されている。

論文数はCytivaにおける独自の調査であり、全ては網羅できていないことは承知の上でその推移を見てみる。2001年(6報)、2002年(19報)、2003年(40報)と増え(括弧内は年間の論文数)、2004年には101報(トータルで166報)に達している。Ettan™ DIGEの導入は2001年以降で段階的に進んだことを考えると、かなり短期間で2D-DIGEを使った実験系が立ち上がり、研究成果が挙がってきていることが推測される。

2005年以降も、2005年(174報)、2006年(282報)、2007年(309報)とさらに増え、2008年も5月時点で159報と伸び続けている。

このように多くの論文が報告されていることは、2D-DIGEが実際に研究で活用されているためといえるだろう。2D-DIGEをさらに一般的なツールとして広く使っていただきたいと考える次第である。

DIGE 道場 第2回
こんなにすばらしい!2D-DIGE法

第2回 もくじ

  1. 二次元電気泳動に対する誤解と2D-DIGE(本ページ)
  2. 2D-DIGEの魅力
  3. 2D-DIGEが可能にした「レーザーマイクロダイセクションからのプロテオーム解析」 
  4. 最後に

Dr. 近藤のコラム
→コラム第2回 DIGEなおサイフの話 - 2D-DIGEは本当に高い?

1. 二次元電気泳動に対する誤解と2D-DIGE

二次元電気泳動法は1975年に報告されて以来、33年間も使い続けられている。その間、プロテオミクス研究がブームとなり、質量分析は普及し、液体クロマトグラフィーに代表される昔からの基盤技術がブラッシュアップされてきた。

二次元電気泳動法自身も、試薬や機器の品質が飛躍的に向上している。IPG (Immobilized pH Gradient)ゲルの登場による等電点電気泳動の操作性の向上、画像解析ソフトの発展、質量分析による微量なタンパク質の同定、これらと時期を同じくして2D-DIGE法が現れた。

このような技術的発展により、二次元電気泳動法の研究環境は発表当時と比較して格段に改善された。それに伴い、さまざまな分野で二次元電気泳動法は使い続けられてきた。二次元電気泳動法のうち2D-DIGE法だけに限定しても、現在までに1,000本以上の論文が発表されており、今年(平成20年)だけでも159本が発表されている(平成20年5月7日現在。オンライン発表[Epub ahead of print]を含む)。

プロテオミクスでは最大の国際学会であるHuman Proteome Organizationの年会でも、二次元電気泳動法を用いた演題が毎年かなりの数で発表されている。培養細胞を用いる基礎生物学研究から臨床情報をフルに利用するバイオマーカー開発まで、さまざまな分野で興味深い成果が続々と発表されている。

二次元電気泳動法はいろいろな前処理法や検出法に対応できるため、そのバリエーションは実に多い。技術的な可能性はほとんど無限である。タンパク質発現の定量的な比較ができることに加え、翻訳後修飾の差異を比較できること、データベース化が可能であること、など、他の技術に無い特性をもっている。周囲の技術の進歩を取り込み需要に応じて発展しながら、二次元電気泳動法はこれからも末永く使われていくだろう。

●二次元電気泳動法は重大な問題を抱えている???

その一方で、「二次元電気泳動法は重大な問題を抱えている」という意見も学会、総説、広告などで耳に(目に)するところである。曰く、再現性が悪い、定量性が悪い、網羅性が低い、スループット性が低い、熟練しないとできない、などである。筆者からすると、これらの批判はまったくの的外れである。このような批判は、

  1. 自分の個人的な経験を一般化している
  2. 伝聞を右から左に流している
  3. 新しい製品の宣伝のため

以上の理由であることが多く、二次元電気泳動の本質を理解できていないだけと考えている。

●実験の道は1日にして成らず!

他の実験と同様に、二次元電気泳動法も試薬と機械を買いさえすれば誰でもその日に結果が出るというものではない。二次元電気泳動法に限らず一般的に、プロトコール、試薬、機械は音楽でいう「楽譜」や「楽器」のようなものである。演奏ほどハードルは高くないが、ある程度の指導やトレーニングは必要である。したがって、研究者のレベルによっては二次元電気泳動法の性能をうまく引き出せないこともありうる。

しかし、それはその研究者の個人的な技術レベルの問題であって、二次元電気泳動法の問題ではない。残念なことに個人的な問題が一般的な問題とすりかえられてしまい、未経験の方にも誤解されてしまっているのかもしれない。

2D-DIGE法は従来の二次元電気泳動法を基盤とした革新的な技術である。2D-DIGE法は複数のサンプルをそれぞれ異なる蛍光色素で標識し、混合して一枚のゲルで泳動し分離する手法である(2D-DIGEの技術概要はこちら)。

  1. 一枚のゲルで複数のサンプルを分離すること
  2. 泳動前にサンプルを蛍光標識すること

というたった二つの点によって、二次元電気泳動法のパフォーマンスは劇的に向上したのである。

このように、2D-DIGE法によって二次元電気泳動法の「壁」は大幅に引き下げられたし、従来の二次元電気泳動法ではできなかった実験も可能となった。

連載第2回では、2D-DIGE法によって二次元電気泳動法が内在する利点がどのように顕著になったか、そしてどのような新しい可能性が開かれたかについて述べる。

次へ 2-1. 再現性の大幅な向上

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