2D-DIGEの研究対象サンプル
やはり哺乳類由来が多く、血液(22%)、脳(17%)、神経(15%)という割合でおよそ半分。その次に、腎臓(7%)、肺(6%)、心臓(5%)、また、尿、血管、胃が各々2~3%であった。哺乳類以外としては、微生物(10%)、植物(9%)という割合であった。ここで、サンプル種は論文の題目や要旨にあるキーワードからの大雑把な分類であり、2D-DIGEサンプルの他に研究背景なども含むおおよその傾向としてご了承をいただきたい。
このように2D-DIGEが使われる研究対象は実に多様ということが見て取れる。2D-DIGEの実験において、そのサンプル調製法は実験結果を左右する重要なポイントである。今回の「ぜったい成功するタンパク質抽出法」は、近藤先生の経験に基づく、とても詳細で実践的な内容である。
DIGE 道場 第3回
できるプロのタンパク質抽出術
第3回 もくじ
- はじめに ~とってもDIGE(大事)なタンパク質抽出~ (本ページ)
- タンパク質可溶化液について
- 培養細胞からのタンパク質抽出法
- 組織からのタンパク質抽出法
- おわりに
Dr. 近藤のコラム
コラム第3回 「生涯道場編」 ~戦うプロテオーム研究~
1. はじめに ~とってもDIGE(大事)なタンパク質抽出~
●最も重要!タンパク質の抽出
タンパク質の抽出は二次元電気泳動法において最もDIGEなポイントである。二次元電気泳動法の画像の質や再現性が問題にされる場合、電気泳動法そのものだけでなく、サンプリング法にも問題があるのではないかと推定している。某メーカーの二次元電気泳動装置のパンフレットでは明らかに問題のあるタンパク質サンプルが使われている。
成功する二次元電気泳動法をマスターするには、可溶化するタンパク質としないタンパク質を再現性よく分画し、タンパク質以外の分子ができるだけ含まれないようにするサンプリング法を習得することが必要である。サンプリングごとに抽出されるタンパク質が異なれば二次元電気泳動法のデータも毎回異なってくるのが当然である。また、DNAが多くコンタミしているサンプルでは一本のチューブの中でタンパク質は均一に存在しているわけではないので、チューブのどこを吸い取るかで実験結果が変わってもおかしくない。そもそもDNAが多量に入ったサンプでは、かなり高い確率で泳動は失敗する。
腫瘍組織からのサンプリングでは、組織をまとめてすりつぶす場合は腫瘍組織のどこをとるかによって含まれる複数の種類の細胞(腫瘍細胞、間質細胞、炎症細胞、血管内皮細胞)の割合が異なる。したがって、腫瘍の種類によっては、手術検体からサンプリングする都度異なるタンパク質内容となってもまったく不思議ではない。腫瘍組織と言っても採取する部位によって腫瘍細胞がほとんど含まれていなかったり、炎症細胞が膨大に含まれていたりすることもあり得るからである。
DNAのコンタミが激しいサンプルの救い方についてはいくつかの方法が報告されている。たとえば、TCA/アセトンで沈殿させる方法、DNA分解酵素や孔径の小さい膜でDNAを切断する方法、超遠心などである。いずれも一回限りの実験なら二次元電気泳動のパターンからするとうまくいっているように見えることもあるらしいが、再現性についてはほとんどの場合は検討されていないし、筆者の経験ではいずれもうまくいかない。サンプル調製がうまくいっているかどうかは実際に二次元電気泳動を行ってみなくてはわからない。失敗したかもしれないと思うのなら、貴重なサンプルでない限り最初からタンパク質抽出をやり直す方が結局は時間の節約になる。含まれる細胞の割合がさまざまである腫瘍組織からタンパク質を抽出している場合、まとめてすりつぶす限りにおいては組織を採取する段階での再現性が悪いとしても解決する方法はない。
●他の研究でも十分使用できます
以上のことは、二次元電気泳動法に限らずタンパク質の発現解析一般に言えることであり、2D-DIGE法も例外ではない。2D-DIGE法がうまくいかない、というその同じサンプルを使う限りにおいては、他の実験もうまくいかないことも大いにあるだろう。本稿では二次元電気泳動法を成功させるためのタンパク質抽出をどう行うかということについて述べるが、ここで述べる方法は他の実験でも十分使用できる。
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