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Presented by Dr. Kouhei Tsumoto
東京大学大学院
医科学研究所
津本 浩平 先生

実践編-3:核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析(3)
特に超好熱性タンパク質に対する温度に対応したDNAの相互作用特性について

目次

  1. はじめに
  2. 超好熱菌由来TATA-box結合タンパク質の分子特性
  3. PhoTBPのSELEX解析(当ページです)
  4. SELEX DNAの熱力学的な相互作用解析
  5. SELEX DNAの塩濃度依存性
  6. ゲノム配列における生物学的意義
  7. おわりに

PhoTBPのSELEX解析

二本鎖DNAに対する塩基配列特異性の探索を行うにあたり、PhoTBPのSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)解析を行いました[5]。SELEXの方法としては、(1)24 bpのランダム領域とPCR増幅用プライマ-配列を含む全長70 bpの二本鎖DNAプール (50 pmol) を準備し、(2)ニッケル固定化樹脂にHis6-tag融合PhoTBP (5 nmol)を固定化させたカラムと混合させ、(3)非特異DNAを洗い流し(5回洗浄)、(4)PhoTBPをイミダゾール溶液でカラムから溶出し、(5)フェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿によりDNAを抽出、(6)PCRで増幅させたDNA溶液を再度PhoTBP固定化カラムへ添加する、という操作を7サイクル繰り返しました。以上の操作より得られた二本鎖DNAの塩基配列をシーケンサーで解読し、これらをPhoTBP特異的に結合するDNA配列としました。

高温度環境下として50℃でのSELEXを行いました。全83サンプルの塩基配列を解読したところ、24 bpのランダム配列領域にはA/T-richな塩基配列(5~8 bp)が含まれていることが分かりました(図3A上段)。MEME (Multiple EM algorithm for motif Elicitation) を用いて8 bpスケ-ルで共通する塩基配列モチーフの解析を行いました。その結果、50℃ではTTTAというモチーフで構成されたA/T-rich配列がコンセンサスであることが明らかとなり(図3A中段)、二か所の結合サイトが存在することが示唆されました(図3A下段) [5]。Archaea由来TBPに関するゲノムDNA上のコンセンサス配列は、T T T A a/t A N N (box-A) が知られており、この50℃におけるSELEXの結果はPhoTBPのゲノムコンセンサス配列に類似していました。

図3
図3. 各温度条件下におけるSELEX解析の配列結果。上段;ランダム領域の配列例、中段;MEMEによる8 bpスケールでの塩基配列モチーフ(Weblogo表示)、下段;ランダム領域の配列概略図。灰色はA/T-richな配列領域。(A) 50℃、(B) 37℃、(C) 25℃。

続いて低温条件下でのSELEXを実行しました。37℃においては、TTTAにTATAというモチーフが混在した塩基配列が選択され(図3B)、さらに低温の25℃になると、TATAモチーフをコンセンサスとしたA/T-rich配列が選択されました(図3C)。このように、高温ではTTTA配列、低温ではTATA配列に対し有意にPhoTBPと相互作用していることが明らかとなりました[5]。

次へ(SELEX DNAの熱力学的な相互作用解析)


相互作用解析の王道」について

相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。

連載記事一覧
タイトル 配信
ご挨拶 連載「相互作用解析の王道」を始めるにあたって 2009年8月
第1回 原理:其は王道を歩む基礎体力 2009年10月
第2回 実践編その1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例 2009年12月
第3回 対談:アフィニティーを測定する際の濃度測定はどうする? 2010年2月
第4回 実践編-2:相互作用解析手法を用いた低分子スクリーニング その1 2010年4月
第5回 実践編-3:核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析 2010年8月
第6回 概論:タンパク質/バイオ医薬品の品質評価における、SPR/カロリメトリーの有用性 2010年11月
第7回 抗体医薬開発の技術革新~物理化学、計算科学との融合~ 2011年5月
第8回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~相互作用の観点から~ 2011年8月
第9回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~タンパク質の構造安定性の観点から~ 2011年9月
第10回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(1) 2011年10月
第11回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(2) 2011年12月
参考 用語集  
〈応用編〉連載記事一覧
タイトル 配信
第1回 抗体医薬リードのカイネティクス評価手法の実例 2012年5月
第2回 細胞表面受容体の弱く速い認識を解析する 2012年7月
第3回 SPRを用いた分子間相互作用測定における、“低”固定化量の重要性 2012年8月
第4回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(1) 2012年9月
第5回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(2) 2012年10月
第6回 「ファージライブラリによるペプチドリガンドのデザインにおける相互作用解析」 2012年11月
第7回 SPRとITCの競合法を用いたフラグメント化合物のスクリーニングとキャラクタリゼーション 2012年12月
第8回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(3) 2013年2月
第9回 熱分析とタンパク質立体構造に基づくリガンド認識機構の解析 2013年3月
〈最終回〉
最終回 連載「相互作用解析の王道」を終えるにあたって ~3年間を振り返って、そしてこれから~ 2013年4月

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