東京大学大学院
医科学研究所
津本 浩平 先生

実践編-3：核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析（4）
特に超好熱性タンパク質に対する温度に対応したDNAの相互作用特性について

目次

1. はじめに
2. 超好熱菌由来TATA-box結合タンパク質の分子特性
3. PhoTBPのSELEX解析
4. SELEX DNAの熱力学的な相互作用解析（当ページです）
5. SELEX DNAの塩濃度依存性
6. ゲノム配列における生物学的意義
7. おわりに

SELEX DNAの熱力学的な相互作用解析

50℃と25℃のSELEXで選択されたDNA配列（50℃；oligo50、25℃；oligo25）を用いて、ITC測定による相互作用の熱力学的解析を行いました[5]。50℃における測定の結果、oligo50、oligo25ともに同程度の解離定数(KA=105～106M-1)が得られました(表1)。

表1. SELEXで選択された塩基配列DNAとPhoTBP間の相互作用における熱力学的パラメータ

しかし熱力学的パラメーターに関しては、oligo25の方がエンタルピー的に有利な値を示しました。25℃においても同様の結果が得られ、oligo50とoligo25はPhoTBPに対する結合親和性に温度によって有意な差がないことが明らかとなりました。各測定温度における熱量変化ΔHoの値をプロットしたところ、oligo25とoligo50では比熱容量変化ΔCpに相違がみられました(図4、oligo50-1:-0.43 kcal mol-1K-1、oligo25-1:-0.49 kcal mo-1K-1)。

図4. oligo50とoligo25の熱量変化ΔHoの温度依存性

これはPhoTBPとの相互作用において、oligo50とoligo25では水和変化に違いがあることを示唆しています。また測定温度25℃においては、熱量変化ΔHoが直線プロット上に乗らず、PhoTBPの構造変化に違いがあることが示唆されました。

次へ（SELEX DNAの塩濃度依存性）

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