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実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(2)目次
※本記事は「実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(1)」の続きです。概略や手法についてはこちらをご覧ください。 ITCを用いたフラグメント測定の実例(ITC)前回少しご紹介したように、competitive SITE法を用い、少量、低濃度、短時間でのフラグメント化合物のヒットバリデーションと発熱量ランキングを試みました。図7にcompetitive SITE法の概念と測定結果をお示ししました。図7(a)のとおり、本法はフラグメントが結合した標的タンパク質がポジティブコントロールと置き換わって結合することにより生じる発熱量が、フラグメント非存在下でポジティブコントロールが結合したときの発熱量と比べどの程度阻害されていたのかを1回の滴定で検出し、フラグメントの結合特異性と結合に伴う発熱量を間接的に求める手法です。実際に得られたサーモグラムが図7(b)ですが、測定時間は1化合物あたり5分以下で行うことができ、測定濃度も3 µMの標的タンパク質と500 µMのフラグメント化合物で行いました。図7(c)では従来のマルチインジェクションのcompetitive assayを行っていますが、結果はcompetitive SITE法と相関が取れていることが確認されました。
それでは実際のデータを整理したものをご紹介したいと思います。図8にcompetitive SITEから得られたフラグメントの発熱量ランキングとSPRスクリーニングでの結合量を並べて示しました。またここまでの測定について表2にまとめました。
この結果から第一に、ヒット化合物が発熱を起こすことで特異的結合が期待できるという考えの下、ヒットバリデーションができたということが言えます。実際に今回ITCで測定した7化合物中6化合物では明らかな発熱が確認され、特異的結合を有すると期待できました。またこのことは今回、より確からしいヒット化合物を得ることを期待して行ったSPRスクリーニングも狙い通りの結果であったことを示唆しています。逆に、今回のSPRの重複選出に漏れた化合物をいくつかITCで測定してみると、発熱阻害は観察されませんでした(data not shown)。第二に、結合する化合物の中でも発熱しやすい相互作用と発熱しにくい相互作用を見分けることができ、このことはヒット化合物に合成展開上の優先順位づけに関する情報を付与することが期待されます。 次に、Low C ITC法という高濃度、大量のサンプルを要する反面、詳細にKD値やΔHなどを求めることが可能な方法で、2-aminobenzothiazole(2-AB)と2-ABを共通骨格として有する#180と#339について解析しました。その結果、#180と#339はともに7 kcal/mol程度の発熱を伴う相互作用を有するのに対し、2-ABは全く発熱が観察されず、SPRの測定においてもNSBしか観察されませんでした。
これは意外な結果でした。なぜなら、#180や#339の2位のアミノ基はポジティブコントロール化合物のFR180204と同じようにERK2のATP結合ポケット内のGln105とAsp106と水素結合を形成していると予想しており、2-ABもそれと同じように結合するに違いないと考えていたからです。そこで、果たして2位のアミノ基が相互作用に重要な役割を果たしているのかどうかを#180と#339の周辺化合物検索をして評価してみました(図10)。
すると、やはり2位にアミノ基を有する化合物がSPRで高いレスポンスを示すことがわかりました。また#180、#339、2-ABのドッキングシミュレーション結果も2位のアミノ基が水素結合を形成する配向で結合することを支持しました。これらの結果から、2位のアミノ基は相互作用に重要な役割をしていますが、アポタンパク質の状態で、結合部位近傍に水分子が存在しているERK2では、2位のアミノ基の水素結合に起因する発熱はこの水分子との置換によって見かけ上打ち消され、#180、#339との相互作用はそれぞれの側鎖のファンデルワールス力によって発熱および結合親和性を稼いでいると考察しています。 「相互作用解析の王道」について「相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。
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