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実践編-1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例(2)目次 2. 環状ポリエーテル化合物シガトキシン自然食中毒の一つとして知られるシガテラは、主に熱帯および亜熱帯海域のサンゴ礁周辺に生息する魚介類の摂食によって起こり、世界中で年間およそ50000人の罹患者がいるといわれています。主な症状は下痢、倦怠感、関節痛、痒みのほか、ドライアイスセンセーションと呼ばれる特有の神経系異常が現れ、回復までには数か月以上を要する場合もあります。近年では、温暖化とともに中毒発生海域が北上し、これまでは見られなかった本州各地でもシガテラが確認されるようになってきています。シガテラは、深刻な社会問題の一つですが、未だ有効な治療法や診断法、毒魚の検出法等は確立されていません。神経毒性の発現メカニズムを分子レベルで解明し、有効な予防・治療法の開発に繋げていくことは急務となっています。 このシガテラ中毒の原因物質は、渦鞭毛藻のGambierdiscus属が産生する環状ポリエーテル系毒素ciguatoxin(CTX)であることが近年同定されました。CTX類は、エーテル環が規則的にトランス縮合した環状ポリエーテルを基本骨格に持った梯子状の剛直な巨大分子です(Fig. 1)。水に難溶性であるCTXは食物と共に魚介類の生体中に取り込まれたまま蓄積し、生物濃縮されて人体まで到達します。CTXは、電位依存性のナトリウムチャネルに結合して持続的な脱分極を引き起こし、種々の神経系障害をもたらすと考えられています。その毒性は、シアン化化合物の2800倍、フグ毒として知られるテトロドトキシンの28倍であり、自然界に存在する毒素の中でも特に強力な毒性を持つといわれています。
2003年、大栗(現在北海道大学理学研究科、創成機構)らによって、このCTX類の一種であるCTX3Cに対する検出法が開発されました(1)。この系では、CTX3Cをそれぞれ左右から認識する2種類の抗CTX3C抗体10C9と3D11を用い、サンドイッチ型ELISA法によって検出限界5 nMの高感度検出を達成しています。10C9は、CTX3Cの断片であるABCDE環を抗原として得られたマウスモノクローナル抗体であり、ABCDE環とは解離定数(KD) 0.8 nM、全長のCTX3Cとは2.8 nMで結合することが分かっています。また、他のポリエーテル系毒素であるBrevetoxin A、B、Okadaic acid、Maitotoxinには交差反応性を示さず非常に高い特異性を持ちます。しかし、10C9によるCTX類の認識機構はもちろん、環状ポリエーテル化合物とタンパク質との相互作用に関する知見はほとんど得られていませんでした。 そこで、私たちは抗CTX3C抗体10C9とCTX3Cとの相互作用に焦点を当て、CTX3Cが持つ複数の多様なエーテル環構造をどのようにして抗体が認識し、特異性を創出しているのかを、結晶構造解析、熱力学、速度論、変異導入により解析しました。今回は結晶構造解析と熱力学解析の結果をご紹介します。 「相互作用解析の王道」について「相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。
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