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実践編-1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例(4)目次
4. 実験結果4-1. 抗シガトキシン抗体10C9FabのX線結晶構造解析抗CTX3C抗体10C9Fab、および抗原となるCTX3C-ABCD、ABCDEとの複合体のX線結晶構造解析を行ったところ、それぞれ分解能2.6、2.4、2.3Åで立体構造を明らかにすることができました。10C9Fabは、最大の特徴としてVHとVLの界面に大きな溝状の抗原結合ポケットを形成しており、CTX3C-ABCD、ABCDEはどちらもその抗原結合ポケットに対してA環を奥に向けた状態で縦に突き刺さるように結合することが明らかとなりました(Fig. 2)。このように抗体の可変領域の深部まで抗原が入り込む例はこれまでほとんど知られておらず、10C9Fabによるこれら環状ポリエーテル化合物への結合様式は非常に新規性が高いものです。
Fig. 3にCTX3C-ABCDEとの相互作用に直接関与するアミノ酸残基を模式図で示しました。
複合体形成には主に抗原抗体間の水素結合やCH-π相互作用を含めたファンデルワールス相互作用が寄与していると推測されます。CTX3C-ABCDとCTX3C-ABCDEでは抗原抗体間の相互作用に顕著な差は見られませんでした。しかしながら、10C9Fab・CTX3C-ABCDE複合体では、E環との間で水素結合を形成するH-Asn58の方向性が制御され、それに伴い抗体間に水素結合ネットワークが生じ、抗体の構造をより安定化させている可能性が示唆されました。また、L-Asn94とE環のファンデルワールス相互作用が顕著で、この相互作用の有無がABCD複合体とABCDE複合体の間で大きく異なっていました(Fig. 4)。
また、抗原結合前後の立体構造を比較すると、どちらの複合体でも抗原結合に伴って可変領域に抗原を中心としたわずかながらもはっきりとした回転運動を生じる可能性が示唆されました(Fig. 5)。
この運動性は特に10C9Fab・CTX3C-ABCD複合体で大きく、RMSDの値からも10C9Fab・CTX3C-ABCDEと比較して1.5倍程度の有意な差が生じていました。また、定常領域では10C9Fab・CTX3C-ABCD複合体で顕著な構造変化が確認できました。このことは、10C9Fabが抗原の長さに応じた誘導適合を生じ、その影響は可変領域のみならず定常領域にまで達していることを意味しています。 10C9Fab単独と10C9Fab・CTX3C-ABCD、ABCDEのそれぞれの複合体の温度因子を算出したところ、抗原結合に伴っていずれもCDRループの安定化が起きていました。しかし、CTX3C-ABCDとCTX3C-ABCDEでは定常領域の安定化に大きな違いがあり、CTX3C-ABCDEでは構造を安定化する一方、10C9Fab・CTX3C-ABCDでは逆に10C9Fab単独よりも揺らぎの大きな状態で存在することが明らかとなりました。 「相互作用解析の王道」について「相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。
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