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Presented by Dr. Kouhei Tsumoto
東京大学大学院
医科学研究所
津本 浩平 先生

実践編-2:相互作用解析手法を用いた低分子スクリーニング その1(2)

目次

  1. はじめに:抗シガトキシン抗体
  2. 低分子スクリーニングと熱量測定:序論(当ページです)
  3. 実験方法
  4. ITC測定による特異的相互作用を形成する化合物の同定
  5. リガンドの構造的特徴
  6. まとめ

2. 低分子スクリーニングと熱量測定:序論

近年、低分子創薬、特に標的タンパク質の立体構造に基づいた薬物分子のデザインStructure-Based Drug Design (SBDD)やFragment-Based Drug Discovery (FBDD)において、相互作用における熱力学情報の重要性が再認識されつつあります。
示差走査型熱量測定(DSC)を用いた化合物のスクリーニングでは、親和性の有無を薬剤候補の存在下における標的タンパク質の変性温度(Tm値)のシフトを基準として判断する手法が用いられています。これにより、多くの擬陽性サンプルを区別することができます。
一方、等温滴定型熱量測定では、物質間の相互作用の熱力学的情報を測定ですべて見積もることができ、コンピューターによる計算では困難であるような真の変数も実際の測定系に反映され、相互作用の実際を明らかにすることができます。等温滴定型熱量測定(ITC)は、結合定数に加えて結合に伴う熱力学情報を得ることができる多角的な測定手法です。そのような特徴から、ITCは標的タンパク質に特異的に結合するリード化合物を容易に同定するためのスクリーニング手段として近年特に注目されるようになってきました。

低分子は、標的となるタンパク質の結合部位に存在する空間的に小さなポケットを精密に探索することができる優れた薬剤候補です。しかしながら、一般的に、低分子化合物と標的タンパク質との結合親和性は非常に弱く、通常の薬理学的スクリーニングでは正確に検出することができません。そのため、生物物理学的な観測手段が必要であり、特に物質同士の結合に伴う熱力学的な影響を観測することで特異的な相互作用を見つけ出す必要性があります。ITC測定を用いることで、一見弱い結合活性であっても、効率良く相互作用している小さな分子を見つけ出すことができるものと期待されます。また、リード化合物からの分子の最適化の過程においても、標的タンパク質と化合物の形状相補性の獲得、化合物の自由度や疎水性の改変等にタンパク質-低分子間相互作用の熱力学量に基づいた合理的な設計が有効であることが示されています。

前々回に述べたように、抗ciguatoxin抗体10C9は、可変領域におよそ400 A2の低分子を覆うことができる大きな抗原結合ポケットを有していました(図1)。また、抗原との相互作用ではエンタルピー有利な反応を示していましたし、特異的な相互作用が形成される際には発熱反応が起こることもわかりました。したがって、創薬ターゲットスクリーニングにおける熱力学の役割を考察する場として非常に有用であると考えられます。

A)CTX3C-ABCDEとB)10C9の結晶構造
図1 CTX3Cの部分構造と抗体10C9

そこで、今回は、この10C9に対して、発熱を伴って結合することが可能な化合物を低分子ライブラリーの中からITC測定を用いて選別し、結合に必要な化合物の構造的特徴について考察を行うことで、10C9IgGの抗原特異性の起源を探ることを試みた研究例を紹介します。

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相互作用解析の王道」について

相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。

連載記事一覧
タイトル 配信
ご挨拶 連載「相互作用解析の王道」を始めるにあたって 2009年8月
第1回 原理:其は王道を歩む基礎体力 2009年10月
第2回 実践編その1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例 2009年12月
第3回 対談:アフィニティーを測定する際の濃度測定はどうする? 2010年2月
第4回 実践編-2:相互作用解析手法を用いた低分子スクリーニング その1 2010年4月
第5回 実践編-3:核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析 2010年8月
第6回 概論:タンパク質/バイオ医薬品の品質評価における、SPR/カロリメトリーの有用性 2010年11月
第7回 抗体医薬開発の技術革新~物理化学、計算科学との融合~ 2011年5月
第8回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~相互作用の観点から~ 2011年8月
第9回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~タンパク質の構造安定性の観点から~ 2011年9月
第10回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(1) 2011年10月
第11回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(2) 2011年12月
参考 用語集  
〈応用編〉連載記事一覧
タイトル 配信
第1回 抗体医薬リードのカイネティクス評価手法の実例 2012年5月
第2回 細胞表面受容体の弱く速い認識を解析する 2012年7月
第3回 SPRを用いた分子間相互作用測定における、“低”固定化量の重要性 2012年8月
第4回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(1) 2012年9月
第5回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(2) 2012年10月
第6回 「ファージライブラリによるペプチドリガンドのデザインにおける相互作用解析」 2012年11月
第7回 SPRとITCの競合法を用いたフラグメント化合物のスクリーニングとキャラクタリゼーション 2012年12月
第8回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(3) 2013年2月
第9回 熱分析とタンパク質立体構造に基づくリガンド認識機構の解析 2013年3月
〈最終回〉
最終回 連載「相互作用解析の王道」を終えるにあたって ~3年間を振り返って、そしてこれから~ 2013年4月

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